第1002話 【南極の空に乳が凪ぐ・その1】おっぱい大将軍、敵陣打ち破りていざ! 亡命!! ~千を超えても作風変わらず!!~

 南極海を漂う人工島。

 ストウェアの甲板では戦いを終えたメンバーが上空を見つめていた。


「わー。明らかに高度が下がって来てますねー。どうするんですかー。ライラさーん」

「あたし!? どうにかなったらいいね!?」


 ようやく復活した水着装備乙女コンビ。

 ナディア・ルクレールさんとライラ・メイフィールドさんが「どうするんですかー」「どうしようもなくない!?」と十四男ランドを指さして語り合う。


 もはやストウェアからは何もできない。

 川端一真監察官(所属先未定)率いる突入部隊が逝っちまった以上、グレートビッグボインバズーカをぶっ放す訳にもいかず、突入したのがきたねぇ野郎のみであれば大義のための小さな犠牲も致し方なしとぶっ放す手もあったが、仁香さんとリャンちゃんも乗り込んでいる性質上これはできない。


 南極から貴重な乙女がいなくなる。


 さらにストウェア残留組は浮島に増援として向かえる人員が少ない。


 ライラさんは草と芝生やす範囲攻撃が主体なので乱戦では邪魔になる。

 バンバンくんはトリッキーなタイプなので正攻法で戦う十四男ランドの乗員とは相性が悪く、甲板にぶっ刺さった杓文字の除去作業も兼務しているのでちょっと厳しい。


 ナディアさんはあんまりやる気がない。

 加えてストウェアは循環システムがまだ生きているので水着装備で問題ないが、十四男ランドは南極の上空なので普通に寒い。


 水着にコートを羽織ったりすると川端さんの士気が著しく低下するので得策ではない。

 裸エプロンに代表される「敢えて隠れているからこそ映えるおっぱい」の良さも川端さんは認めているが、彼自身は「おっぱいは素材のままが1番」という信念を魂に宿しており、他方でのおっぱいの嗜み方に苦言を呈するような無粋はしないがやっぱりナディアさんのおっぱい視認面積が減っていると「……そうか」とメンタルが落ち込む。


 今や川端さんはフランスでナディアさんとおっぱいロードを歩む事が戦いのモチベーションになっているからして、ちょっとでもおっぱいが陰るような事があると一瞬で水戸くん以下の戦力になる可能性もある不安定な男。



 水戸くん以下とか、事ここに及ぶともう目も当てられない。

 それはいけない。



「おーおー。どがいするんじゃ、こりゃ。ワシはこやつらの生命維持せんといけんしのぉ。ハゲ行かせるんじゃなかったかのぉ。あやつがおればなんぞ、時空を良い感じにナニしてどうにでもできたじゃろうに。誰じゃ、ハゲ行かせたのは。ワシは知らんけど」


 頼れる信頼と実績がある困った時の頼みの綱、久坂剣友じい様が回復役をさせられているため、逆神十四男の戦略はズバピタで当たっている。

 十四男・銃戦でも言及したが、久坂剣友を戦線離脱させた事は大局的に見ると南極海の戦い以上に大きい。


 慣れない救命活動で煌気オーラを消費中の久坂さんをバルリテロリにぶっこませる事ができなくなった。

 煌気オーラ回復ができる六駆くんは既に戦地へ赴いているし、和泉さんはランデブーでお疲れのご様子。

 四郎じいちゃんも同じくバルリテロリ宙域へ移動しており、逆神四郎印の煌気オーラ回復アイテムはティラミスで本部の施設ごと消し飛んだ。


 雨宮さんくらいしか現世で煌気オーラを回復できる者は残っておらず、上級監察官は先ほどから福田さんによる査問中。

 戦時下に自軍の指揮官を査問するのはどこの世界でも負けフラグだが「それはそれです。時間が経過してからの聴取では意味がありません」とオペレーターの長は言う。


 「場合によっては臨機応変に雨宮さんを戦地に送り込みます」とも言っているので、「えー。私もう無理だよー。動けなくてー」とエヴァちゃんとよし恵さんに守られているおじさんもしばらくは動きそうにない。


 そして諸君が忘れる度に何度でも言おう。



 この戦局は1分刻みで動いているので、が経過した後ではもう別のところで何かがアレしている。

 ベテラン探索員の諸君もバウアー捜査官でお馴染み、『24』くらいの緊迫感をもって挑んで頂きたい。



「まあ……。若いもんが上手いことやるじゃろ。やらんかったら……。芽衣ちゃんにまた電話するかいのぉ。ほれ、トラの。ナディアちゃんが魚くれたで。お主、魚食べたら元気になるんじゃろ? ちぃと手が足りんから、魚食うて救助側に来てくれぇ。ほれ、トラの。なんぞキモい深海魚じゃぞ。おーい。トラのー」


 ミンスティラリアがあるのでそこまで悲壮感もなかった。

 ダズモンガーくんの鼻先に魚を押し付けて久坂さんも空を見上げる。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 十四男ランドがゆっくりと地表に向かって降下中。

 原因はハッキリしていた。


「おーっほっほ。皇国の危機を伝え聞きました。十四男様にご裁可を頂きましたよ。十四男ランドはこれより着陸し、この南極を占領します」


 シャモジ母さん、南極大陸の奪取を選択。

 十四男ランドをバルリテロリに戻す選択肢がない事を考えると悪手とまでは言わないが、良策とも言い難い判断であった。


「かっかっか! このおばちゃんも思い切った事するじゃあねぇの! 劣勢を隠す気もねえってか? するってえと、俺らを始末してから作業開始かい?」

「お喋りをしながら刀を振るうとはマナーがありませんね! うっかり舌を噛んで死になさい!!」


 杓文字と刀が鍔迫り合い、煌気オーラが迸る。

 辻堂甲陽、しっかりとお仕事中。


 指揮官適性がなさ過ぎただけで、役割と行動理念を与えられればちゃんとやる男。

 ピースに与したのも救助された恩返しだったため、今は家主で親友の久坂さんと久坂家のために戦う。


 ついでにこの男は無理やりだが初代上級監察官をさせられていた期間が割と長いので状況把握能力はしっかりと育っている。


「察するに……。ド派手に現世でドンパチやって? 本国に少しでも戦力が行かねえように足止めしようって寸法かい? おばちゃん、意外と芯のある忠臣じゃねえの!」

「あなたも見かけによらず物事の順序が見えておられますね! そこまで分かっていれば! まずお死になさい!! 『太った男の転移術ポートマンジャンプ』!!」


 シャモジ母さんは皇国のためならば手段を択ばず。

 自身も手段の1つとして割り切れる。

 敵から奪ったスキルも有用ならばガンガン使うし、そこにプライドなどは存在しない。


「おっとぉ!! 危ないねえ! 『断絶ブレイク』!! 悪いが俺にゃあ転移スキルなんぞ効かないぜ?」

「戯言を! 強制転移で南極に飛ばされて来た事も存じておりますが?」


「かぁー。痛いとこ突いて来やがらあ! おい! 幽星!! 何してやがんだい!? 早く降りて来いよ!!」


 辻堂さんが天井に向かって叫ぶ。

 そこには磔にされた姫島幽星がいた。



「くくくっ。この勝負、預ける!!」

「お前はそればっかりだな。吾輩なんか転移スキル取られたからもういつやられるかしか残ってないのに。姫島はまだ戦えるじゃん。イケよ。さっさと」


 ダンク・ポートマンもちゃんと磔にされていた。



 シャモジ母さんは杓文字でぶん殴りながら『太った男の転移術ポートマンジャンプ』で相手を天井に移動させて、そのまま煌気オーラで強引に拘束する戦法を取っていた。

 辻堂甲陽、姫島幽星、ダンク・ポートマン。

 この3名は今すぐ命を奪う必要性は薄く、無力化できれば時短を優先すべき。


「やっぱこれは言わねえとな!! ここを通りたきゃ、俺を倒してからにしねい!!」

「おーっほほ。死ねとは無礼!! 死ぬのはあなたです!!」


 介護ルームかんきょうの守りも大事ではあるが、喫緊の課題は取り逃がした川端一真率いる部隊に動力炉を破壊されるパターンだけを防ぐこと。

 既に介護ルームからはシャモジ母さんと十四男オリジナル以外の影は消えていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「後方から追手が来るな。しかし、我々は追い付かれるまで前進あるのみ。2人とも振り返るな!!」


 川端さんは仁香さんとリャンちゃんを連れて走っていた。

 動力炉の場所は分からないが、とにかく走っていた。


 恐らく、輝かしい未来に向かって。


「了! 川端さんはやっぱりすごく頼りになりますね! 仁香先輩!!」

「あ、うん。そう、だね。……川端さんからおっぱいの気配を感じる」


 付き従うはチャイナ服乙女たち。

 リャンちゃんは素直に川端さんを尊敬してその背中に頼りがいを感じ、仁香さんは溢れ出るおっぱいへの希望を「なんか嫌だな」とじっとりとした視線で追いかけながら、とにかく指揮官の指示に従って移動中。


「川端さん」

「なんだね、青山さん!」



「足が遅いです!!」

「…………私、そもそも機動力特化のタイプじゃないから」



 潜伏機動隊出身、おっぱい監察官室所属の仁香さん。

 現役で潜伏機動隊所属のリャンちゃん。


 後方勤務とか副司令官とかストウェアで流浪とか中途半端な仕事ばかりしていた川端さん。


 指揮官の足が1番遅いという部隊であってはならない事態が発生していた。


「困ります! ご指示頂けないと目標も判然としませんから! 前方の警戒は私が担当しましょうか!?」

「君は見る度に強くなり、頼りになるな。よほど副官が合っていたと見える。あ゛っ!? ごめんなさい!?」


「どうして謝られるんですか?」

「え゛。いや、目が怖いから。大丈夫だ! 私は青山さんを性的な目で見たりしない!!」


「それって私のおっぱいが中途半端だと仰りたいんですか?」

「……水戸くん。君のせいで前途ある若者がなんか曇っているぞ。ここで青山さんのおっぱいも魅力的だと言ったら私も君のいるところに堕ちる!! くそ! どうして死んでも邪魔をするんだ!! 水戸くん!!」


 水戸くん童貞クソ野郎と言う名の地雷が常に起動中の仁香さん。

 強くなるにつれて扱いにくくなる割と面倒な乙女に進化しつつあった。


「あ! 止まってください! 次の角の向こう! 何かいます!!」

「敵か。倒して進むぞ!! 立ち止まっている暇はない!!」


 仁香さんが「待ってください。ものすごく嫌な気配を感じます」と眉をひそめた。

 角の先には誰がいるのか。


 ナニ戸くんがいるのか。


 こればっかりは曲がってみないと分からない。

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