第970話 【魔王城からみみみみ・その6】「みみっ。お電話いっぱい来るです!!」 ~戦局が変わる時にとても助かるみみみと鳴く優秀な乙女~

 こちらは魔王城。

 次元の歪みから見えていた呉の景色は巻き起こった粉塵で不鮮明に。


 視界が開けるとそこに巨大な浮島(もう浮いてねぇ)はなかった。


「みっ。行ってらっしゃいです!!」


 芽衣ちゃまが敬礼する。

 「みみっ。でも油断できないです。六駆師匠とみつ子大師匠は『ゲート』が使えるです。あとノアさんに取れ高稼ぐための手段として『ホール』で芽衣が取り寄せバッグされるパターンはアリアリのアリです。アリーヴェデルチです。みっ!!」と警戒は怠らない。


 色濃く漂うクライマックスの気配。

 チーム莉子のメンバーは戦場に立っていない限り、基本的に何かやらせる。


 現在のところ芽衣ちゃまは通信士と後方司令官を兼務しているが、戦場には出ていない。

 16歳に労基が即動きそうな激務を押し付けているが、ここは戦場ではない。



 「みっ。じゃあ危険が危ないです! み゛っ!!」と芽衣ちゃんは経験で知っている。



 ただ、今は自分のできるお仕事に全力で取り組むみみみと鳴く可愛い生き物。

 スマホが震えた。


「わゅらょひゅんゅば!! 『テレホン・サービスタイム』!!」


 サービスさんの『サービスタイム』がちょっとテレホーダイみたいな響きに進化。

 芽衣ちゃまテレホン特化型スキルとして構成術式を見直し、より鮮明なみみみボイスをお届けするべくグレードアップされたのである。


 通常のサービスタイムの3倍の煌気オーラを使用するが、それがどうした。

 ついに少しやつれて来たようにも見える、ラッキー・サービス氏。


「サービス殿!! 照り焼きがございます!! 栄養補給をどうぞ!!」

「ふんっ。うるさい常識人か。俺は練乳以外口にしない。どうしてそれを覚えない」


「そう申されると思いまして! 練乳で照り焼きソースをこしらえております!!」

「ふんっ。言っておくが、俺は練乳に対して不敬を働かんだけだ。ゆえに、その照り焼きとやらも食ってやる」


 電話に出る前に芽衣ちゃんがサービスさんを「みっ! めっ、です! サービスさん!! ご飯は大事です!! 好き嫌いはダメです!!」と躾ける。

 ニィっと顔を歪めたサービスさん。


「ふん。チュッチュチュッチュチュッチュ。……チュッチュ。……悪くない」

「ありがとうございます!! 嬉しいです!! 新しいものをお作りしますね!!」


 それを見ていたアリナさんが対応。



「……どうして照り焼きを食すのにチュッチュと音が出るのだ。まさか!? 妾がツッコミ役をさせられるのか!? 無理だ!! 荷が重すぎる!! 芽衣! 増援要請ならば妾を出せ!! ツッコミ役は旦那の仕事なのだ!! サービス、貴様!! チュッチュするでない! 耳障りであるぞ!! ……急には上手くできぬ!!」


 アリナさん、戦場希望届を提出する。



 そのお電話の相手は。


『久坂じゃわい』

「みっ!」


 もう芽衣ちゃまテレホン占有率高すぎ問題が発生している独占禁止法疑惑の久坂剣友監察官。

 現在、ストウェアの甲板にて救命活動中。


『こっちはのぉ。トラのを送ってくれたおかげでどうにかなっちょるんじゃが。その点に関しちゃ感謝なんじゃけどのぉ。トラの、死にそうなんじゃわ。これ、どうしたらええかのぉ? ワシ、治癒スキルとか回復スキルは心得こそあるけどのぉ。獣医さんじゃないんよのぉ』


 ダズモンガーくんの治療区分が人か獣かで悩んでいる旨の相談であった。

 増援要請ではなかったためアリナさんが意気消沈。


 代わってシミリート技師が意気揚々とやって来た。


「ほう。これはこれは。また面白いデータが採れたようなのだよ。芽衣殿。ダズは放っておいても30分もすれば起き上がるとお伝えいただけるかね。我々、魔族の獣人は体の構造が根本的に違う。300と数十年生きてまだ中年期なのだよ。ダズは魚が好物だから、その辺の魚でも与えれば元気になるのだよ」


 南極は大半が深海魚で沿岸魚はものすごく少ないのですが。

 ミンスティラリアから出た事のないシミリート技師なのでこれは仕方がない。


「みみっ。お伝えするです!! みーみーみーみーみーみー!!」


 ただいま芽衣ちゃまが可愛く鳴きながら伝言ゲームしております。

 しばらくみみみとお待ちください。


『ほうじゃったか。了解じゃ。ほいで、シミリートさんや。シャモジどうにかできるっちゅうんはほんまかいのぉ? これ、爆発するらしいんじゃが』


 シミリート技師が「くくっ。くくくくっ!」と大変愉快な気持ちを隠し切れない様子で、ニャンコスさんにとある人型の兵器を運ばせて来た。


「これを見てくれるかね。芽衣殿。プロトタイプアンドロイド7号。型式・みつコップBBAなのだがね。みつ子殿の『万物流転の構え』の吸収のみに特化した平和的な兵器なのだよ……恐らくなのだがね。そのシャモジは見たところスキル。つまりなのだよ。みつコップBBAの始動確認にもってこいではないかね!! これをそちらに送るとお伝え願うのだよ、芽衣殿」

「み゛っ。……芽衣、子供だから難しい事分からないです!! みーみーみーみーみーみー!!!」


 芽衣ちゃまがやけくそ気味に新しくこの世界ら顕現した大量破壊兵器か人道型支援兵器か、南雲特化型胃炎また責任押し付けられる兵器か、多分どれかが戦後に名付けられるであろうヤベーヤツを南極海の門に叩き込んだ。


 みつコップBBAは自律起動しないため、現地の者が操縦する事になる。

 なお、機械に1番明るかったワチエくんは逝きました。


 ストウェアは長き時を経て探索員の元へと戻るのか。

 南極海の藻屑となって海洋汚染に一役買った上で世界から叩かれるのか。


 分水嶺を迎えていた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 スマホを置くとまた震える。

 芽衣ちゃまテレホンはこの戦争で最も輝く通信網。


 テレホーダイなんぞ二十世紀の遺物、いくら進化したところで物の数にもなりません。



 みみみって鳴かねぇもん。



「みみっ! こちら魔王軍にいる木原芽衣Bランク探索員です! この戦いが終わったら昇進させられそうなのだけが不安です! みみっ!!」


 お相手は。


『あ。もしもし。エヴァンジェリンです。芽衣様、ご機嫌麗しゅうございます!』

「みみみっ! エヴァさんです!! ごきげんようです! みっ!!」


 お姫様とお嬢様学校の女子高生。

 ごきげんようが交差する。


『ええと、あ、いけない! あの、芽衣様? 先に伺いますね』

「……みみっ」



『お胸のお話はしても大丈夫でしょうか? 福田様が、胸の話をされる際は安全確認にご配慮ください。と申されますので!』

「み゛っ。……今は大丈夫です! けど、恒久的には大丈夫じゃないです!! 胸の話の時はサービスさんを経由して欲しいです! みみみみっ!!」


 サービスさんがおっぱい電話交換手に。



 それから「実は私、おブラのサイズが変わりまして! クララ様にご相談したいのですが!!」とエヴァちゃんが語り、芽衣ちゃんは「み゛っ。本当に色々とタイミングが最高で安全なみみみでみみっでした。みみっ」と安堵した。


「みっ! クララ先輩に今度スポーツブラのお店に連れて行ってもらえるように頼んでおくです!!」

『あ。ええと、ごめんなさい。できれば可愛らしい装飾などの付いたものが良いのですがー』


「みっ! じゃあクララ先輩は戦いについていけないです!!」

『そうなのですか!? でしたら、気心の知れた莉子様にお願いいたしましょう!!』



「芽衣が行くデス!!!!」


 みみみを忘れて、カタコトみたいになりながら、ノータイムで世界を1つ救った芽衣ちゃまであった。

 同時に滅びた現世が存在する世界線が生まれた。


 滅びの世界線はもう数えきれないくらい分岐しているので、リーディングシュタイナー持ちの探索員諸君はお気を付けください。

 多分精神がもちません。



『ありがとうございます! 芽衣様! あ、そうでした! すみません、私ったら自分の事ばかりお話してしまって! 同い年の方とお喋りするのが楽しくてつい……』

「みみぃ! 芽衣も楽しいです! 何かご用だったです?」


『本部に敵のお客様が5名ほど侵入されたとの報告をしてほしいと福田様に頼まれまして。今、私と福田様、それによし恵さま。そして、そして! 順平様!! 皆さんで敵拠点の制圧に向かっているところです! 現状増援はいらないとの事ですが、なにぶん重要施設が多いので、場合によっては情報の中継をお願いするかもしれません。とお伝えするように、順平様に頼まれました!! 困ってしまいます!! 福田様からは私が順平様と働けるように探索員の席を空けると言われてしまいましたし!!』

「み゛っ……。みーみー。みみっ。……了解したです!!」


 通信が終わり、芽衣ちゃまが「みみ、みみみっ」と頷いて情報をみみみ脳で処理。

 答えがいくつか転がり出て来た。


 虹色の球に入っているヤツから開けてみよう。

 恐らくSSR。


「みっ。よく分からないです! けど! 雨宮さんが埋まった外堀とかいうヤツの権利を福田さんに取られそうです!!」


 エヴァンジェリン姫を探索員協会に迎え入れて、「絶対に逃がしませんよ。雨宮順平上級監察官」と退役も亡命も是としない確固たる意志を芽衣ちゃまが受信。

 この調子だとよし恵さんにも何らかの打診をしている可能性がある。


 そうなると、雨宮さんは確実に逃げ場を失うという、全てのおじさんの中で最大のピンチが継続中かつ増大中。

 遊び人ムーブをキメ過ぎた分、反動が半端じゃない件。


 長く助走を取ったらすっげぇ遠くへ逝くってミスターチルドレンも言ってた。


 芽衣ちゃんは「みー。ミミさんが心配です」と妹の安否を憂慮する。

 そんな事を言われると我々は日本本部の様子を見に行くしかなくなってしまう。


 3視点で動いているバルリテロリ侵略戦争の最終局面。

 諸君、ついて来ているだろうか。


 ゴールはもうすぐである。


 なお、この「もうすぐ」はスクエニがよくやる大作RPGのプロモーションで「もうすぐ情報解禁!!」と宣伝する時の「もうすぐ」だと諸君にはご理解いただきたい。

 発売日は延期するのがデフォであり、これはスクウェアとエニックスが分離していた頃からどっちもやっていたので合体してやらない理由があるのか知りたいと付言しておく。


 と、ゲーム発売日延期学の権威ツーミー・ゲー氏が論文で語っていた。

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