第969話 【六駆と南雲のワクワク異空間飛行・その2】「もう飛びますかね!?」「飛ばないよ? カウントダウン、あと3分あるから」 ~じゃあ飛びません。と、油断していたら飛びます。~

 孫六ランドでは乗員が装備の確認をしていた。


「南雲さん、どこから白衣出したんですか?」

「私、ルベルバック出張から本部に戻れずだったでしょ? ノアくんが謎の穴でミンスティラリアから持って来てくれたの。シミリートさんが昔ね、研究用に渡した装備を改良してくれてて。あの人はすごいねぇ。うちの監察官室に呼べないかな」


 南雲さん、見慣れた白衣姿に戻る。

 この新白衣は優れものであり、耐属性攻撃、耐物理攻撃の両方に対応している上、古龍チャオった時にも破れておじさんアンラッキースケベをキメる事がない伸縮性も保持している。


 サイヤ人の戦闘服が大猿になってもポロリしないのと同じ原理です。


 ついでにスカレグラーナにてトリオ・ザ・ドラゴンが復活した際には冥竜人ナポルジュロ氏から闇の炎に抱かれる新スキルを習得、幻竜人ジェロード親方からはナグモ専用装備・大太刀ジキラントを譲り受けている。

 「日頃から手慰みに鍛えておるゆえ」とホマッハ族とジェロード親方の中ではジキラントはビジネスホテルの朝ごはんに毎回出て来るプレーンオムレツみたいな立ち位置になっていたらしい。


 南雲さん、1度も本部に戻っていないにも関わらず万全の装備を完了させる。


「そろそろ飛びますかね!?」

「カウントダウンが出てるじゃない。あと4分。あ。3分になった。……逆神くん? 叩いても早く飛ばないからね? 逆神くん? ねぇ? 逆神くん!!」



「ふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅん!!!」

「君ぃ! 理性取り戻したでしょ!? その上でやってるとしたらもう完全にサイコパス確定だよ!! 現世のブランクじゃなくて生来のヤツた、それぇ!!」


 楽しそうな六駆と南雲のおじさんコンビ。



 その少し後ろでは「ふっ。そういえば一度も装備に触れてもらった事がなかったな」と、実は銀色の混じったシンプルなプレートを装備しているバニングさんが「まあ装備など身を守ってくれれば何でも構わん」と3杯目のコーヒーに手を伸ばす。

 コーヒーを嗜み始めると不幸とも友好関係が深まりますのでご注意ください。


「いいなー!! クララ先輩!! 可愛い! ルベルバックってそんな可愛い装備になったんですか!? いいな、いいなー!! チアって可愛いですよねー!!」

「にゃはー。じゃあ莉子ちゃんにあげるぞなー! とか言ったらサイズ感で死ぬのが分かってるから黙っとるのだにゃー」


 チア猫になったクララパイセンが初期ロットプラス3キロになった莉子ちゃんと一緒にガールズトーク中。


「莉子ちゃんの装備はアレだにゃー? 六駆くんの作ってくれた、お2人初めての共同作業だぞなー。もうそのまま走り抜けるのがメインヒロインで六駆くんのお嫁さんのお勤めだ……に゛ゃ゛ぁ゛……。言い過ぎたぞな。……にゃー? いつもなら、ボウンッてなって、バォォンってなって、アレがナニするのに?」

「もぉぉぉぉ! クララ先輩!! 照れますよぉ!! 幸せ太りしちゃいそうですよぉ!!」


 莉子ちゃん、生まれて初めてのガチ煌気オーラ枯渇から回復したてなのでお漏らしする煌気オーラが足りず。

 これまで各地でお漏らしする度に南雲さんが和菓子店のクーポンを貯め続けていた謝罪行脚案件が発動しないほど、今の彼女はか弱い。


「にゃん……だと……。莉子ちゃんがちゃんと女の子しとるぞな……。女子型決戦兵器じゃなくなっとるぞな……」

「えへへへへへへへへへへへへ!! 見てください、見てください! わたしのお尻!! さっきね、六駆くんが言ってくれたんです! 今の莉子のお尻が僕は大好きだからね。絶対にその形と大きさをキープして欲しいな。って!! 真剣な顔で!! もぉぉぉ! 男の子ってエッチだよぉ!!」


「うにゃー。六駆くんはやっぱり世界を救う男だったのだにゃー。……莉子ちゃん、莉子ちゃん?」

「なれふすか? モグモグ。あ、クララ先輩も食べまふ? モグモグ……」



「南雲さーん。莉子ちゃんがタルタルソースたっぷりかかったカキフライをすごいペースで食べとるぞなー!! 早く出してくださいにゃー!! に゛ゃ゛ぁ゛ー!! そこにケチャップかけ始めたぞな、この子ー!! どこから出したんだにゃー!!」


 急いでください。

 もう莉子ちゃんがムチるのは耐えられません。



「ボクマスター。ご質問よろしいでしょうか」

「ほほう! ボクを話し相手にご指名とは! 瑠香にゃん先輩は実にお目が高い!!」


「貴女の浴衣装備が新しくなっています。瑠香にゃんの推察ですと、『ホール』による産地直送仕入が行われたと考えられます」

「そうですとも! サービス先輩に頼んで、管をボクの部屋へ伸ばして引っ掛かってた予備のヤツを取って来てもらって穴ちゃんにダンクシュート、どどんっ! です!!」


「……瑠香にゃん推理、完了。つまりボクマスター。いつでも浴衣ブルマというニッチな格好から元に戻る事は可能だったと瑠香にゃんは断定します。……ステータス『こいつ予備もプリンセスマスターに奪われるの理解して敢えてスルーしたな』を獲得」

「ゔあ゛。そのステータスください。ボクが処理します」


「瑠香にゃんの指揮権はぽこにあります。そして瑠香にゃんへの命令権はグランドマスターに。ボクマスターにはありません。この件はグランドマスターにご報告させて頂きます」


 ノアちゃんが『ホール』を発現して「サービス先輩!! 例の物を取ってくーださい!!」と叫ぶと、にゅっと管が伸びて来た。

 その先端にはネコ耳がうねうねと蠢く。


「ぼ、ボクマスター。脅威判定がマックスを突破。瑠香にゃんは交渉に応じる用意があります。落ち着いて、冷静に、その危険物を床に置くことを求めます」


 ネコ耳を掲げてノアちゃんが大きな独り言を口にした。


「うああー!! なんということでしょう!! シミリート先輩が作ってた瑠香にゃん先輩専用のネコ耳が届きましたー!!」


 どら猫の目が光る。


「ステータス『おいバカやめろ』を獲得。行使します。おいバカやめろ!!」

「にゃはー!! 来たぞなー!! これで瑠香にゃんが真の瑠香にゃんに進化するぞなー!!」


「ぽこ! 下がれ、ぽこ!! ワタシには瑠香にゃん砲を発射する用意があります。一人称のワタシも獲得。調子は良好。追い風を感じます。この勢いならやれる」



「えー!! なにそれ!! 瑠香にゃんちゃん、可愛い! 絶対似合うよぉー! 付けて、付けて! 付けてからね、にゃんって言ってポーズ取って欲しいなー!!」

「プリンセスマスター……だと……。瑠香にゃんは敗北を確信。ネコ耳を装着します。プリンセスマスターには逆らえません。世界を脅威に晒すのは瑠香にゃん三原則に反するからです。瑠香にゃんですにゃん。ステータス『おのれ、ぽことぽこ』を獲得。そのうち使います」



 クララパイセンに指揮権を再奪取されて、元から逆らえない莉子ちゃんが同乗している孫六ランド。

 瑠香にゃんは「グランドマスターから『父としての魅力』を感知しました」と、パニックの末に莉子ちゃん遺伝子の影響か、六駆くんに父性を感じ始めた。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 コントロールパネル横には逆神老夫婦とライアン・ゲイブラム氏。

 入念な打ち合わせが続いていた。


 ライアンさんの顔つきは真剣そのもの。


「これが日本猫……!! 雑種という括りに縛られぬ多様性……!! よろしいのですか、アドミラルみつ子!! こ、こ、この数をミンスティラリアに……!?」

「久恵さんと話ついちょるからねぇ! この辺、海が多いけぇね。昔から野良の子がようけおるんよ。みんなで世話しよる地域猫なんじゃけどねぇ。時々捨てに来る人がおるから全員去勢してあげられんのよ。ちょっとずつ増えよるけど、まあ可愛いけぇねぇ。なにより猫ちゃんに罪はないけぇ。ライアンさんみたいに丁寧に面倒みてくれる人がおるなら、猫ちゃんらも喜ぶいね!」


 猫譲渡のお話を眉間にしわを寄せて、ピース時代のどの作戦に赴く際よりも鬼気迫る形相で聞いているライアンさん。


「この丸い顔……。茶トラ!? キジトラ!! サバトラまで!? はぁぁぁ!? み、三毛猫……だと……。こちら、私が可愛がってもよろしいのですか!?」

「今のとこ5匹くらいかねぇ言うて相談しちょったんじゃけど。多かったかねぇ?」


 ライアンさんが敬礼して言った。



「このライアン・ゲイブラム。デトモルトに技術協力を申し出てて永遠に近い命を得てでもこの子たちを守り抜くこと、誓いましょう!!」


 1周回ってライアンさんが不死を求め始めた。



 そのままコントロールパネルを「ふぅぅぅぅぅん!!」と殴り散らかしている六駆くんの元へ歩いて行くと「逆神師範。ここは私に任せて頂きたい」と再度敬礼する。


「どうにかできるんですか? ライアンさん」

「はっ。先ほどから分析スキルで解析しておりました。もう発進してよろしいですか?」


「もちろん! あ、南雲さん!! お金に近づけるらしいです!!」

「え゛っ。あの、ライアンさん? どうなされるおつもりですか?」


 パネルをカタカタやり始めたライアンさんがターンとキメてから、良い顔で振り向いた。


「はっ! たった今終わりました! これより指定されているポイントへ発進いたします。当然、罠があるでしょう。ゆえに、速度を2倍に設定しました。煌気オーラ構築物ならば燃料があれば問題ないかと。ふふふっ。こちらをご覧ください」


 なんか見たことある練乳チューブが出て来る。


「これはサービス殿から預かっている『煉煌気パーガトリー』入りの練乳。これで煌気オーラを暴走させて過剰な推進力を得ます」

「なるほど。結構なお考えですが、リスクも大きいですね。慎重に考えましょう」


「南雲監察官」

「えっ? あ、はい」



「もう終わったと申し上げましたが。ご安心を。『煉煌気パーガトリー』は3つあります。皆さま、揺れにご注意を!! いざ! わんにゃん帝国の旗印のために!!」

「薄々感じてたけど逆神くんの弟子になってるね!? 逆神くん! 君ぃ! 君の弟子扱いだと責任全部私のとこに来るんだよ!? 裁判前の重要容疑者だって言ったじゃん! ねぇ!?」



 バルリテロリの思惑通りに事は運ばず。

 逆神流門弟になったばかりのライアンさん、早速良くないムーブを習得する。


 行ってらっしゃい、逆神六駆と愉快な仲間たち。

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