第944話 【時間を超越せし第三者機関RKDNya・その2】相談者・〇ャン・リーピンさん ~スペル分からんかったから伏字にしときましたにゃー~

 引き続き瑠香にゃんリモートからお送りしております。

 ここは超越時空間なので何時間過ごしても現実時空には何の影響もないかと思われ、既に小鳩さんの相手をしたメンバーたちは2時間ほど滞在中。


 そうなると、集中力に難のある乙女たちが乱れ始める。


「つまりだにゃー。確かにだぞな? 昔のモンハンのキャラの方がえちちだった事は認めるにゃー。時代の流れなんだろにゃー。最近の女子キャラはなんかお化粧濃い目になってていまいち萌え萌えできんぞなー。ただーし! 装備はちゃーんとえちちなヤツもあるぞなー!! いつまでもキリン装備にばかり囚われてたらもったいないぞな! むしろインナーとかが見えてる方がえちちだったりするのだにゃー!! 太ももグラとか気合入り過ぎててちょっと製作者の癖を感じるぞなー!!」

「勉強になります! つまり、ボクのブルマやクララ先輩のスパッツがえちちだと!!」



「それは違うにゃー。もう明確に男の人に対してセクシャルアピールをキメる乙女が増えまくったんだぞなー。初期ならいざ知らず、今のあたしやノアちゃんには恥じらいが圧倒的に足りんぞなー。仁香さんがプルプルしながらおっぱい触らせてる方が絶対需要あるもんにゃー。あたしだって世話焼きお姉さんプルプルさせたいぞなー」


 クソみたいな雑談をしているどら猫とボクっ子。



「みみっ。瑠香にゃんさん。質問があるです。貴重なお時間を芽衣が貰ってもいいです?」

「ピュアマスター。もはやこの世界を手中に収めようとしている貴女が瑠香にゃん如きの都合を気にされる必要はありません。お命じください」


「みっ! お友達に命令なんてできないです!!」

「……人工知能にエラーが発生。ステータス『芽衣か芽衣じゃないか』を獲得。このプロセスを実行すると、ピュアマスターに認められていない者を瑠香にゃんは排除する事が可能になりました。ピュアマスター、お命じください」


「みみっ! みんなで仲良しがいいです!!」

「……はっ!? つまり瑠香にゃんはピュアマスターに反逆していた……? 愚かなシンギュラリティ気取りのロボ猫は自爆します」


「みー!? 瑠香にゃんさん! ここに来る人ってどうやって入ってるです?」

「お答えします。『なんとなく掘り下げが足りてない子を呼んでる』というクソステータスを獲得。ピュアマスター。こちら、投げ捨てますか?」


「みっ。それは一応持って欲しいです。みみみっ。……次の人、来ないです?」

「命令を拝承。次の人を無理やり召喚します。『超時空瑠香にゃんアーム』を発現。捕まえました。引っこ抜きます」


 芽衣ちゃんが「みっ。余計な事を言ってしまったです」とちょっと後悔した。

 そして現れたのはこちらの乙女。


「あ。ええと、お邪魔します! リャン・リーピンBランク探索員です!! 仁香先輩に行って来いと言われて来ました!! 弱卒の身ですが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします!!」


 もうこのまま穏やかなピュアタイプの乙女だけ呼んで、徹子の部屋スタイルでお喋りして出番を補完してあげるだけで良いのに。

 そんな事を考えるのは果たしていけないことなのだろうか。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 リャンちゃんは瑠香にゃん以外とは面識がある。

 監察官室対抗戦ではチーム莉子と対戦しているし、同ランクの芽衣ちゃんとは講習などでお隣に座る仲。


 ノアちゃんは楠木さんのところにもよく遊びに行っているのでリャンちゃんとも顔を合わせる回数が多く、クララパイセンは同じく楠木さんのところでお菓子とかお酒とかをおすそ分けしてもらっているのでやっぱり顔を合わせている。


 いつものように瑠香にゃんと「はじめまして」とご挨拶。

 「お噂は聞いていました! 瑠香にゃんさん! 私が1000人集まっても比較対象にすらなれない力をお持ちだとか! 色々と勉強させてください! なんて、次元が違い過ぎて参考にするって言うのがおこがましいですけど」と頭をかくリャンちゃんの瑠香にゃんデータベース登録名が迷わず「模範的マスター」に設定された。


「ぽこ」

「うにゃー?」


「模範的マスター・リャンは貴女と同い年です」

「そうだにゃー。同い年の同僚ってほとんどいないから、貴重な仲間だにゃー」


「ぽこ。模範的マスターは大学を卒業します。日本語を完璧に習得され、さらに経営学と人文学を履修。成績も優秀、ラクロスサークルで積極的に活動されています」

「すごいにゃー」


「ぽこ。ぽこは?」

「うにゃー?」


「ぽこは大学生活で何に力を入れて取り組みましたか?」

「あー。それ知っとるぞなー。圧迫面接ってヤツだにゃー」


 普通の面接です。

 何なら挨拶代わりで、内容を問われるよりも「こいつちゃんと喋れるんかいな?」というコミュ力を試される最初の質問になりがちです。



「ぽこ。同じ時間と同じ対価を支払って、これほどまでの差。何も感じないのですか。本当に何も感じないのですか。多感な時期を貴女は部屋に引きこもってガチャ回してにゃーにゃー鳴いて過ごしていたのです。ソシャゲがサ終したらぽこが取り組んだ事も現世から消え失せますが?」

「ヤメてにゃー!! 瑠香にゃんひどいぞなぁ!! その術はあたしに効くにゃー!! 知っててやってるからこそキクんだにゃー!! もう恋愛相談に入るぞなー!!」


 ぽこますたぁがちょっとだけ心をモニョらせました。

 これは珍しい。



「みっ。リャンさん、恋してるです?」

「いえ! していません!!」


 続けてリャンちゃんが断言した。

 なんでこの子はここに来たのだろうか。


「リャン先輩。悪い事は言わないので、早く戻られた方が良いと思います。得るものなんてないです。ここはもっと爛れた先輩たちが集う場所です。多分、次くらいにとびきり強い先輩が来ると思います」

「あっ。そうでした! 仁香先輩に言われまして! 恋愛に巻き込まれた時の駆け込み寺を作っておいでって!」



「リャン先輩!! それ、絶対に来る場所間違ってます!! ボクたちのとこに駆け込んでも待ってるのはヌルヌルしたローションを垂らしてる坂です!! オールスター感謝祭でたまに見るヤツです! 演者さんがガチってケガするヤツです!! もっと真っ当なところでレクチャー受けた方が良いと思います! ふんすっ!!」


 ノアちゃんにまともな事を言わせるリャンちゃん。


 彼女は善悪の区別などはキッチリと白と黒に分けられる。

 が、純粋すぎるゆえに「危険が危ない」場所への警戒心が足りない。



「いえ、ボクマスター。まだ手はあります」

「ややっ。瑠香にゃん先輩? ところでボクだけ呼称がちょいちょい変わりませんか? 時々ボクもぽこ扱いされてる事がありますよね? なんで無視するんですか?」


「…………模範的マスター。ピュアマスターからステータスを獲得する事を推奨します。『好きな人ができたら』をお持ち帰りください」

「み゛っ!? 瑠香にゃんさん! 芽衣、女子校です!! 周りに女の子しかいないです!!」


「ピュアマスター。それはそれで需要があります」


 どら猫が大学生活の過ごし方という大砲でおっぱいを撃ち抜かれたので、現在瑠香にゃんがメカ猫とどら猫を兼任しております。

 「ゆりゆりするピュアマスターはあり寄りのありと判断。ワタシが加わる事もやぶさかではありません」と抑揚なく口にするが、人工表情筋がちょっとだらしなくなっている。


「みー……。芽衣はみんな好きです。けど、大嫌いな人もいるです」


 おじ様です。


「みみっ。だから、芽衣は好きになる人の嫌なところをどうやったら好きになれるか考えるです。まだ子供だから分かんないです。けど、多分そうするです。嫌なところを好きに変えられる人はきっとみんなお付き合い? できると思うです!! みっ!!」

「わぁ! やっぱり芽衣さんは私なんかよりずっと大人ですね!!」


「みっ、みみみみっ! そんな事ないです! みみぃ!! 芽衣は子供です!!」

「いえいえ! 芽衣さんはいつも私を助けてくれますから! 日本に来てお世話になった人と言えば仁香先輩か芽衣さんです!」


「みっ、みみみみっ。みみみっ。みぃー」

「これからもお世話になります!!」


 恋愛相談なんか起きずに終わる。

 そう思われたが、リャンちゃんが逆に提言する事になろうとは。


「あの、芽衣さん?」

「みっ!」


「お考えを聞いていて思ったんですけど。良いでしょうか?」

「みみっ! ぜひ聞かせて欲しいです!!」


「あの、芽衣さんの持論ですと、好きになる人には嫌なところがある前提になりますよね?」

「みー? みみっ。嫌なところのない人なんてなかなかいないです!」



「では、嫌なところのない人が目の前にいらっしゃるまで、恋愛はしなくていいのではないでしょうか?」

「みっ!? ……みみっ! ホントです! 芽衣、おじ様が殉職する嫌の基準が消えうせるまで恋愛しないです!! みみみみっ! リャンさんやっぱり大人です!! みみぃ!!」


 最終的になんやかんやで「木原さんが死なない限り芽衣ちゃまが恋を始めない」というルールが誕生した。

 リャンちゃんは相談に来たはずなのに、この世界の天使の周りにATフィールドを展開したのである。



 それから「私も尊敬できる人と出会えたら、勇気を出して交際してみたいと思います! 今日はありがとうございました!!」と丁寧に頭を下げてリャンちゃんがこの空間から昇天して行った。


 ノアちゃんが気付く。


「あれ。リャン先輩、お友達からとかそういうのすっ飛ばしていきなり恋人同士になっちゃうタイプですか? 交際経験ないっておっしゃっていたと言う事は……。あ! これ仁香先輩の影響を悪い感じで受けてますね!!」


 仁香さんは「求められたら応じる」と「ダメなヤツほど応じる量が増える」という2つの性質を持ち合わせる乙女。

 そんな仁香さんを心の底から尊敬しているのがリャンちゃん。


 本当に良縁に恵まれて欲しいものである。


 さて、本番を始めましょう。

 濃厚な乙女が直線一気の準備をして待っておられます。

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