第743話 【ストウェアだけ違う敵・その1】姫島幽星、結局お前はなんなんだよ、定期 ~答え合わせ編~

 こちらは移動要塞・ストウェア。

 ピースが総力戦で探索員協会に挑み、敗れ去ったタイミングで彼らは大西洋を航行していた。


「これチャンスだろ!! デトモルト奪おうぜ!!」

「それな! 最上位調律人バランサーの反応が全部消えてんだし、マジでイケるんじゃん?」


 ダンク・ポートマンとライラ・メイフィールドの能天気コンビがはしゃいでいた。

 なお、ピースが事実上の壊滅をしたため、階級は必要に応じてしか登場しなくなりました。


 面倒くさいからではありません。


「どうしますー? 川端さーん。わたしは全然行かなくていいですけどー。こっちで日光浴してましょー? デトモルトなんてなーんにもないとこですよー?」

「ナディア! あんたは素で34だからいいかもだけどな!! あたしら、若返ってんだよ!! デトモルトの技術がないと、遠くない未来に急速な加齢で……どうなんの?」


「ウェーイ! ライラさん、私がお答えしてもウィーですかー?」

「バンバン知ってんの!? 教えてっ!!」



「急速な加齢が訪れて、それに肉体が耐え切れず9割以上の者は絶命するとのことです。お悔みうぇーい。綺麗なお花、摘んできまウェーイ」


 割と笑えない状況であった。



 若返りの処置はペヒペヒエスの固有技術ではなく、デトモルト人であれば基本的に扱えるため、とりあえずかの異世界に行きさえすればどうにかなる。

 大半のデトモルト人は活動意欲がないため三顧の礼にも応じてくれないだろうが、まだピースの構成員の多くはデトモルトに留まっている。

 技術職や研究職の者に頼む、何なら脅せば問題なく事は済むだろう。


「川端ぁー!! お願いだってぇー! デトモルト侵略しよー? ねぇー!! あたし、ババアになると思ってへこんでたけどー!! 死ぬとは思わんじゃんかー!! おっぱい触ってていいからぁー!!」


 なお、ストウェアは既にピースから離れ、探索員協会には雨宮上級監察官による隠ぺいで正しく認識されていないグレーな存在。

 少数精鋭だが有する武力は一国の探索員協会にも匹敵するため、もはや独立国家と呼んでも良い。


 そんなストウェアを統べるのが、ピースとの最終決戦で呼ばれずに「おや。私はこの先、どうなるんだ」と不安に駆り立てられる度に、ナディアさんかライラさんのおっぱいを見て気を鎮めている男。



 川端一真提督である。



「侵略……。いや、ライラさんやダンクくんの身の上を知っている以上、できる限りは善処したいが。もはや我々は運命共同体。全員が帰る場所を失った仲間。仲間が死ぬのを見過ごせるほど、私は冷酷にできてはいない」

「川端ぁー!! おっぱい揉んでいいからぁー!! 好きなだけぇー!!」


「さすがたぜ、川端……! 侍だな!! よし、侵略しよう!!」

「待てと言うのに。私の立場で侵略を容認することはできない。なにか別の妙案があれば良いのだが」


「もー。いいじゃないですかー。ライラさんもメタボさんも、寿命を迎えたと思いましょー? だって、2周目の人生な訳じゃないですかー。それをさらに延命するとか、人として、生物として、これは冒涜ですよー」

「ナディアー! あんたぁ!! 本音を言ってみろー!!」



「面倒くさいので、川端さんをおっぱいで誘惑してー。このままのんびりクルージングしながら年を取っていきたいでーす」

「くっ……!! ナディアさん……!! 私と共に、年老いてくれるのか!? おっぱいが垂れないようにするリンパマッサージならば、私にも心得がある!!」


 効果はバツグンだ。

 このままだと、若返り組の上位調律人バランサーが死にます。



「くくくっ。話は聞かせてもらった」

「呼んでない。失せろ、変態。雷門さんのコピーと遊んでいろ」


 姫島幽星、いつも通り意味深に登場。

 そういえばこいつ、結局何もしてないじゃないか。


「まあ聞け。某、実は身分を謀っておった」

「知っている。変態だ。仮によりコアな変態だったとしても、私の評価は変わらんから、安心して我が道を行け。そして帰ってくるな」


「くくっ。川端。ナディアの下着ならば、いつでも盗む用意があるぞ」

「それは脅しなのか。買収なのか。どっちにも効果があるからヤメろ。話だけ聞いてやる。お前のために一部屋改造して、寄港した先で女性用下着をわざわざワチエくんに買いに行かせているだろうが。疑似下着泥棒で満足しろ。見ろ、ワチエくんの表情を。虚無に満ちている」


「ウェーイ! 川端さんがドイヒーなお遣いさせるからでウェーイ!!」

「僕は何をしているんだろう。女子調律人バランサーにはついに会えず、仕事も失い。童貞のまま。ミノタウロス♀と結婚していた方が良かったのかもしれないな……はははっ」


 全員が甲板に集まったので、姫島は語り始めた。


「姫島家は、代々受け継ぐ使命と共にある。それは、現世と異世界の調停役だ」

「黙れ。そんな大役を担うヤツが変態であって堪るか」


「くくっ。変態は当代だけよ。趣味嗜好まで受け継ぐ義務はない。川端。貴殿の先祖は皆、おっぱいをこよなく愛する者たちだったか?」

「……こいつ!! ぬけぬけと!! 確かに! 私の母は貧の者だった!!」


 姫島幽星、またなんか言い出した。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ウォーロストにて潜伏していたところ、1つの強大な異世界が侵攻してくる気配を察知したと姫島は続けた。

 アトミルカ、ピースと所属を変えてきたのも、探索員協会以外の強力な組織に加わることで有事に対応するためだったと彼は言う。


「その時が来た。動くぞ、バルリテロリが」

「よし。ナディアさんとライラさんは部屋に鍵をかけて来てくれ。こいつ、適当なこと言って下着盗むぞ」


 だが、川端男爵とナディアさん、そしてライラさんもその異世界には聞き覚えがあった。


「それってあれですかー? 結構前に大規模な侵攻を仕掛けてきたって言うヤツー。うちの協会の上級監察官のおばあちゃんがよく話してくれたなー」


 フランス探索員協会のミリエメ・クレルドー上級監察官である。

 ナディアさんを次期上級監察官に推薦しようとしてたら出勤拒否し始めて、気付いたらいなくなってたせいで、御年79歳で未だ現役。


 ナディアさん、おばあちゃん泣いてますよ。


「あたし、現場に駆り出されたわー。多国籍軍とか編成してさー。あの時は日本がヤバかったねー。久坂剣友と辻堂甲陽の両看板。まさに無双って感じだった!」

「私も当然知っている。辻堂上級監察官はその侵攻の際に殉職された。だが、多くの犠牲の上で完全に撃退したはずだ」


 その人は次元の狭間に刺さってただけで、今も生きてます。


「くくっ。それは先遣隊だ。本隊が侵攻して来るぞ。ダンジョンの異界の門を利用してな。かの国は現世に激しい憎悪を抱いている。もう100年前になるか」

「いい加減妄言をヤメろ。雷門さんのコピーが寂しそうにウロウロしてるだろうが」



「逆神家だ。姫島の歴史書には、逆神家の男。逆神喜三太きさんたがバルリテロリに単身で侵略戦争を仕掛けたと記されている」

「おい。本当にヤメろ。逆神くんのとこの名前が出てくると、一気に信ぴょう性が増してくる」


 お待たせしました。六駆くんの先先先祖。逆神家三代目です。

 先に申しておきますと、大吾タイプです。



 ストウェアの煌気オーラ感知センサーがアラートを鳴らし始めた。

 最近、普通にストウェアのシステムに詳しくなったワチエくんがコントロールルームへと走る。


 続けて、艦内放送で状況を端的に伝えた。


『……壊れてなければの前提ですけど。表示されている事態を端的に読み上げます。ストウェアの上空700メートルに巨大な転移穴が出現。煌気オーラ反応、5000おっぱいクラスの個体が……3つ。質量から人型と想定されますが、人間じゃないって出てます。僕にはサッパリなので、モニター見つめておきます。何かあれば追加で報告します』



 5000おっぱいって何ですか。



「おいおい! そりゃセンサーの故障だぜ! 5000おっぱいって言えば、川端がマックスおっぱいフォームになった時と同等じゃねぇか! 吾輩が3人いてやっとだぜ?」

「ダンクくん。そのナッパとかドドリアが言うフラグ感しかないセリフは口にしないで欲しかった……!! そういうことを言うと、実現するのがこの世界なんだ!!」


 ストウェアでは煌気オーラの指数を「おっぱい」にしたようです。

 独立国家化、捗っていますね。

 川端提督。


「わー。なんか来ますよー。ちょー速いですねー。どうしましょー。わたし水着ですしー。ライラさんなんか常に水着ですしー。川端さんとバンバンくんも水着じゃないですかー」


 だったら総員ほとんど水着じゃないですか。

 水着で新たな敵っぽい勢力の話をしていたんですか。


「くくっ。某らがあれを食い止めねば、ピースと探索員協会がやりあった今、現世を獲られるぞ。いかがする、川端」

「いきなり攻撃はできん。相手と対話が可能な場合も想定すべきだ。……本当に来たな。すごく長い角が生えている。姫島、お前、急に真実を語るな。私は今この瞬間まで嘘だと思っていたのに」


 青い角の生えた男が3人。

 ストウェアの上空、視認可能な範囲まで降下。


 続けて、無言で砲撃を二射。


「あー。……わたしのビーチチェアーが。川端さん。もう一緒に日光浴できませんねー」

「貴様ぁぁぁぁ!! 許さん!! つぁぁぁぁ!! 『双円集気弾そうえんしゅうきだん天空乳房うちあげちぶさ』!!!」


 なんか始まりました。

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