第703話 【追跡チーム・その7】『苺光閃』VS『乳光閃』 ~Q・なんでそんな名前を付けたんですか? A・お答えできかねます~

 美少女ミミミミξ型は煌気オーラ制御が可能らしく、「みみみみみみみみっ」と可愛く鳴いているだけでほとんど何も感知されない。

 オリジナルの芽衣ちゃんも煌気オーラ制御やコントロールには非凡なものを持っていたので、これは完成度の高さがうかがえる。


 なにせ、ペヒペヒエスが心血を注いだコピー戦士の2体がこの子たち。

 そのために号泣アァァァΛ型はただの量産型爆撃機になり、豊満ムチムチΘ型は主にストウェアでおっぱい男爵率いる野郎たちを虜にしてから「うん。この子ら人格与えたら逆効果やな。いらんわ。引っこ抜いたろ」と、物言わぬおっぱいに。


 二枚目ハンサムβ型に関してはちょっと頑張ったが、時間が足りずに不完全なまま。

 ロブ・ヘムリッツ調律人バランサーによりアレな仕上がりへ。

 脳筋ゴリラシリーズは数こそ作ったが、半分の作業をヘムリッツに任せ、γ型とΩ型はワンオフ機のためサッと炒める感じで完成。


 それ以外の時間は全て、ξ型とπ型に費やしてきたペヒやん。

 特にξ型は「いやー。もう、むっちゃ可愛い! 戦わせたくないんやけど!!」と大層なお気に入り具合で、兵装にも時間をかけ、装備にはもっと時間をかけた。


 企業がガチで作ったソシャゲの人気ヒロインの等身大フィギュアみたいな完成度のξ型。

 フリル付けまくった衣装はもはや芸術。


 同時進行で貧鬼姫ドンマイπ型の製造にも着手した。

 彼女はカルケル局地戦で「いやー! この子はええで! ものっすごい逸材やん!!」とこれまた惚れ込んだ。


 見た目も可愛らしく、煌気オーラ総量も抜きん出ており、なんか暴走気味なのも科学屋の心を刺激したらしい。

 そして、ウキウキで研究を始めてからわずか1週間でプロトタイプ1号が完成。

 ペヒやんは言った。


「あかん。この子、煌気オーラをお漏らししっぱなしやんか。どうやっても制御できへん。脳筋ゴリラの方がマシまである。しかも、カルケルで見た時はちっこくて可愛いお嬢ちゃんやん! って思ったんやけどさ。……なんか、ね? ボブカットって、いや、好きやで? おばちゃん。……やっぱもうちょい身長欲しない? 活発な感じはええんやけどさ、この子ちっこいし。ちょっと刈り上げたらリヴァイ兵長やんけ。あとなー。あの時さ、おばちゃんこの子と接近戦しとらへんやん? でさ、データを形に起こして見て気付いたんやけどな? ……おっぱい、無いやん。小さいとか貧しいとかやなくて、無やん? ええ……。万が一の可能性も考えて、股間までチェックしたで? なんなら付いとった方が良かったわ。こんな気の毒なコピー戦士、おばちゃん産み出さなあかんの?」



 そこまでだ、玉ねぎ。

 これ以上はいけない。回想のセリフが終わったらダンジョン消し飛んでる。



 色々と思うところがあったらしく、以降ペヒペヒエスはπ型の改良を続けた。

 ビジュアル面に極振りして。


 髪をロングヘアーにして、ちょっとウェーブをかけたらしっとり系美少女に変身。

 ここまでは簡単だった。

 莉子ちゃんは元から愛らしい顔立ちをしており、普段の髪型でも充分に美少女の部類に入るので、ボブだのロングだのは玉ねぎの趣味。誰がコボちゃんやねん。


 5日かけて、人工の胸部装甲を作り上げた。

 最初はEランクにしたのだが、「……なんやろ、この罪悪感」と呟いた玉ねぎはそれを破棄する。


 D、Cと下げていくも、まったくしっくりこない。

 Bで「おっ!」と一瞬表情が明るくなるものの、「いや、違うわ」と科学屋から美容整形外科医になったペヒペヒエスは首を振る。


 結局Aランクの胸部装甲を取り付けたところ「ええやん!!」と納得。

 その直後、玉ねぎに電流走る。



「えっ。せやったら、オリジナルの子。サイズどないなってん? これ、Aやで? あ。……もうこんなんさ、泣いてまうやん?」


 ヤメてください。死んでしまいます。



 なお、完成した肉体が隣のカプセルにお行儀よく入っているξ型と比べてあまりにも貧相、失礼、質素だったため、真っ赤な競泳水着を纏わせた。

 もうヤケクソだった玉ねぎ。


 ヘムリッツとポッサムに任せていた人格を入れてみると「ガルルルルル……」と一瞬で暴走したので、「はい。完成やな。ラッキーちゃんに報告しといて。ガチの最強できたでって」と清々しい表情でカプセルに叩き込んだ。


 そんなπ型が、お目覚めである。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 莉子ちゃんが驚く前に、近くで構えていた3人がすぐ脳内で感想を共有する。


「あ。こちらの莉子さん。……偽装されてますわね」

「この莉子ちゃん、痩せてる。腰回りとか、お尻とかも今と比べると。あと胸が」

「これはとても良いものです! 興奮します!!」


 だいたい一致していたので、アイコンタクトすら必要としなかった。

 直後、起動したπ型が頭のおかしい煌気オーラ爆発バーストを起こしたので絶望感がやって来て、もう些細な間違い探しとかどうでも良くなったのだ。


「ふぇぇぇ。わたし、自分となんて戦えないよぉ!!」


 チームの仲間を見る莉子ちゃん。

 3人の乙女が目を逸らす速度は、参考記録だが音速を超えていた。


「……ガルルルルル。……莉子?」

「ほらぁ! わたしの声だもん!! こんな風に唸ったことないけど!!」


 なんとπ型、喋ります。


「……ワタシのオリジナル。小坂莉子。データ分析。……敵性、0と判断」

「ふぇ?」


 急に穏やかな表情になったπ型。

 これには後方に下がっていたライアンも驚く。


「おい。どうなっている。π型の煌気オーラが完全に消失したぞ!?」

「アイヤー。ライアン様。治癒に全力注いでほしいアルよー」


 なお、ライアンはピエトロの治療中。

 こんなアルアル煽って来る部下でも戦力は戦力であり、不確定要素の大きな作戦行動中であれば無駄死にさせる訳にはいかない。


「……指揮官。π型より報告があります」

「よ、よし。なんだ」



「……オリジナル、小坂莉子のサーチ完了。明らかにワタシよりも劣っています。煌気オーラは元より、肉体数値。特に胸部……ぷっ……」


 π型が嘲笑した瞬間に、ブチッと音が聞こえた。



「ガルルルルル!!」


 紛らわしいのでヤメてください。

 脳筋ゴリラΩ型と木原ゴリオリジナルで書き分けに困ったばかりなんです。


「仁香さん! ノアさん!! こちらに!! わたくし、全力で防壁を展開しますわ!! お早く!! 命にかかわりますわよ!! ……ダンジョンが持ちこたえてくれれば、ですけれど」


 チーム莉子の苦労人と言えば、上官なら南雲。

 メンバーなら小鳩。

 これはもう日本本部の常識である。


 苦労を重ねた分だけ極めた貴重な経験値が重なり、小鳩さんの危機管理能力は六駆くんのそれを余裕で超えるレベルに到達していた。


「わ、わたしの顔した、わたしがぁ!! なんかひどいこと言いました!! ねぇ、みんな聞いてた!? 同じ体だよねっ!?」


「こ、小鳩ちゃん!? なんて答えたらいいの!?」

「……その答え、わたくしもまだたどり着いていませんわ」

「ボク、ハンターハンターで読みました! こういう時は沈黙です!! ふんすっ!!」


 答える代わりに、小鳩さんが『銀華ぎんか』を大展開。

 『二百五十六枚咲きシルバースパーキング純銀皇膜カイザーシルト』を構築。


 久坂さんが考案して京華さんと修行をした、塚地小鳩お姉さんが誇る防御の極大スキルである。

 まさか味方に使うシーンが初使用になるとは。


「……オリジナル。……ぷっ。……お悔やみ申し上げぷっ」

「ちょ、ちょっとほっそりしてるからってぇ!! それ、ズルしたでしょ!! わたしもやるもん!! 身体測定の時!! ウエスト測る時ぃ!! キューってお腹引っ込めるもん!!」


「……オリジナル。哀れ。そこもだけど、そこじゃない」

「な、なぁぁぁ!! じゃあ、どこが違うのぉ!? もうわたしだよ! 鏡に映ったわたしぃ!! これがアレだもん! 3Dプリンターとか言うヤツでしょ!?」


「……現実を教えましょう。オリジナル。あなたの胸囲は?」

「ふぇ!? ……えと。きゅ、90くらいだったかな? 多分、うん、そんな感じー」


 仁香さんが呟く。


「あ。莉子ちゃん……。見栄の張り方を知らないんだ……。莉子ちゃんのサイズで90だと、もうそれってドラム缶みたいな」

「おヤメくださいましぃぃ!! わたくしの盾が消し飛びますわよぉぉ!!」


 フレンドリーファイアを回避しても、無慈悲な同人格が眼前でにこりと微笑み残酷なシンフォニーを奏でた。



「……ワタシの胸囲は70です。オリジナル」

「……えっ? ……嘘。……嘘だよ。……だって、わたし。……ふぇ?」


 味方はもちろん、ライアンも、ピエトロも、誰も口を開かない。



 堰を切るように、莉子ちゃんが煌気オーラ爆発バーストを始めた。

 π型は「……哀れなオリジナルです」と言うなり、煌気オーラ爆発バーストで応じる。


 御滝ダンジョンの耐震性に全てを賭けるしかない状況ができあがっていた。


「ふぇぇぇぇっ! こんなの詐欺だよぉ! やぁぁぁぁぁぁ!! 『苺光閃いちごこうせん』!!!」

「出力、想定内。オリジナル、あなたは理性を取り戻し過ぎました。『乳光閃ちちこうせん』!!」


 苺色の狂閃と、ミルク色の滅閃が第9層の中央で衝突した。

 完全に拮抗した出力。


 そう思われたのも束の間、ミルク色がゆっくりと苺色を押し始める。


「ふぇ!?」

「……これが胸部せんりょくの差です。オリジナル。あなたのおかげで、ワタシは暴走を抑え、完全体になる事ができた。もう用はありません。さようなら、貧乳。いえ、無乳」


 ミルク色の滅閃が莉子ちゃんに迫る。

 だが、π型は少しばかり煽り過ぎた。


 再度響く、ブチッと言う音。

 終わりが始まるのだろうか。

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