第563話 【人工島ストウェア・その5】再戦!! 『OPPAI』帰りの監察官トリオVS特盛ピースお姉さんコンビ

 人工島・ストウェアを制圧したピース上位調律人バランサーのお姉さんたち。

 だが、こちらも順風満帆ではない。


「ぐあああ!! 司令官室!! 開かない!! なんでぇ!? 1日以上頑張ってるのに!!」

「バカですねー。ライラさん。3回やって開かなきゃ100回やっても開かないって言ってるのにー」


 せっかくゲットした最新鋭の軍事拠点。

 いざ動かそうと思ったところ、司令官室はもちろん、動力室にも入れない。


 おっぱい男爵が暗躍した結果であった。


 川端一真監察官が、凄まじく久しぶりに仕事人らしい仕事を果たしている事実。

 失陥の直前に重要な部屋の制御を生態認証でロックして回っており、これを解除するには2日ほど何もせずに待つか、川端監察官を確保して手のひらと眼球奪い取るかしか方法がない。


 が、ライラさんは「どうにかしたら動くはず!!」と遮二無二になってロックをいじりまくった結果、直近の操作が約7分前。

 生態認証によるロックは操作を失敗するたびにリセットされるので、今から47時間と53分ほど待たなければいけない。


 ライラ・メイフィールドさんは中身52歳。

 おわかりいただけただろうか。



 つまり、そう言う事である。



「ぐううううっ。あたしが悪いの? ねぇ。ナディアぁ? だったら止めてよ?」

「止めましたよねー? その露出がヤバい水着型装備も。年甲斐もなく痛いですーって。ストウェアについても。これ認証ロックかけられてるっぽいからヤメましょーって。なんですか? 言うこと聞かなかった挙句、若い子に責任転嫁ですか? あー。嫌だ嫌だ。年は取りたくないですねー」



 ライラさん、涙目になる。

 それどころか、普通に泣いている。


 彼女の中身はおばはんだが、外側は23歳で声もキャピキャピしている。

 スタイルは極めて良く胸部装甲も豊かで、クララパイセンに迫るほどである。

 感情表現も豊かであり、何ならちょいちょい暴走する。


 現在、ライラ部隊は構成員を募集しております。

 ですが、注意事項として1点だけ。


 中身はおばはんです。


 そんな訳で繰り返しになるが、ストウェアを動かすためにはこれから2日待つか、川端監察官をゲットするしかないのである。


「ライラ様。ナディア様。索敵網に侵入者です」

「え゛っ!? もしかして!!」


「よかったですねー。ライラさん。他の上位調律人に横取りされずに済むかもですよー。愛しのダンディな川端監察官が戻って来てくれましたー」

「マジかぁ!! キタコレぇ!! 川端!! あたし好きになりそう!!」


「ただねー。オマケ付いてますよー」

「水戸とか言う坊やだろ? それはあんたにあげる!!」


「いえー。あれ、上級監察官ですね。雨宮順平さん。ピースのブラックリストに載ってる人ですよー。あーあー。どうするのかなー。強いですよー?」

「マジで? 帰ってもらえないかな?」


 ストウェア駐在監察官トリオ。

 自分の家を取り戻すために参上する。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ライラ部隊の構成員が既に3人を取り囲んでおり、戦端が開かれていた。


「あららー! ちょっと! 水戸くん! 川端さん!! なんですか、この部隊!! 女の子多くないですか!? あらららー!!」


 上級監察官のご慧眼通り、ライラ部隊は女子が多い。

 割とみんな若返っているため、元の年齢を聞くと雨宮上級監察官がしょんぼりするものの、見た目は若い女の子がたくさんいる。


「つぁぁぁぁぁ!! 『粘着糸ネット』!!」

「あー!! ズルい!! 男爵ぅ!! それ逆神流のスキルじゃないですか!! しかも良い感じに妄想捗るヤツぅ!! いつ覚えたんですか!? ベトベトした糸発射するヤツぅ!!」



「ふふふっ。南雲さんの結婚式の際に。逆神くんに20万円差し出したら教えてくれました!!」

「えー!! 良いなぁ!! 男爵! もっと使って、使ってぇ!! そっちの端から順に使ってぇ!!」



 逆神流がイギリスの海上でも猛威を振るう。

 こんな事をするから、ピースに名指しで狙われるのである。


「うわっ!! なんだこいつら!! うちの隊員が……!! 全然やられてない!! なんで拘束もされてないの!? 意味が分かんない!!」


 ライラ隊の構成員は全員『粘着糸ネット』を引っ掛けられているが、それ以上は特に何もされていない。

 日本の産んだ仕事人。川端男爵を舐めないで頂こうか。


 「おっぱいに苦しい思いをさせるくらいなら、私が業火に焼かれよう!!」のキャッチフレーズでお馴染みである。

 なお、これは本年の月刊探索員お正月特大号にて監察官の特集をした際、川端監察官が自分で考えた煽り文字である。



 その結果、川端一真の特集ページ自体がなかった事にされた。



 なお、浮いたページは「新春グラビア! 探索員人気ランキング男女! 上位5名の初詣コーデ!!」に割り当てられ、チーム莉子からは芽衣ちゃんが選出。

 莉子ちゃんファンの諸君、お気づきだろうか。


 彼女は直近のランキングで4位だったのに、何故かページがなかった。

 一説には取材時の言動に問題があったとも、正月時点では余裕の圏外だったとも言われているが、真相は不明。

 川端監察官と共にお蔵入りしたのが、うちのメインヒロイン。


「出たな。ステキな敵幹部たち!! 一言伝えておく!! この川端一真! おっぱいに苦しい思いをさせるくらいならば、私が業火に焼かれる所存!!」


 何も懲りていない男爵はこの局面でも堂々とヤベーキャッチフレーズを出していく。

 隣では指笛を吹いている雨宮上級監察官。


「な、なんか意味が分からないけどさ。これはチャンスじゃないかい? ねぇ、ナディア? あっ。えっ? ちょ、なんであたしに手刀向けてんの?」

「いやー。ライラさんの水着ズタズタにしたら、川端監察官釣れそうだなーって」


 実際、ほぼ確実に釣れるのが厄介である。


 そんなナディア・ルクレールに向けて鞭が伸びた。

 使い手はもちろん、水戸信介監察官。


「おー。水戸くんだ。なんか吹っ切れたー?」

「ええ。たった半日と少しですが、トレーニングを積んできました。もはや、ルクレール監察官! あなたを討つことに迷いはありません!!」


「あー。これは水戸くん、ガチのマジですなー。ライラさん。わたし、こっちで彼の相手しますんでー。あとよろしくですー」

「え゛!? 川端だけならともかく!! 雨宮もいるんだけど!?」


 ナディアは水戸監察官の伸ばしたムチムチ鞭を強引に引っ張り、甲板の端へと彼を吹き飛ばした。

 それを予期していたのか、水戸監察官は美しい受け身を取る。



◆◇◆◇◆◇◆◇



「久しぶりだね。水戸くんとこうやって手合わせするのさー。合同訓練以来だよねー?」

「はい。あなたには、若輩者としてたくさんお世話になりました。自分は甘い!! よく分かっています!! 戦場では情に流されてはいけないと分かっているのに!!」


 煌気オーラを手のひらに溜めながら、ナディアが答える。


「良いんじゃない? 戦うスタンスなんて人それぞれでしょー? 自分を大事にしようよー。わたし、こんな適当にしててもどうにか再就職できたしさー」

「ルクレール監察官。あなたは自分の5歩先を常に行く人だった! 追いついたと思えば周回遅れ!! あなたほど優秀な女性を自分は知りません!!」


 ナディアは溜めた煌気オーラを放出する。


「褒めても手加減してあげないよー? とあー!! 『粘土軟体電気エレクトリカルスライム』!!」

「そうやって、多種類の属性を操り、見た事のないスキルを使いこなす!! 『一直線から右曲がりストレートターン』!!」


 電気を帯びたスライムが大量に具現化され、それを弾き飛ばす水戸監察官。

 続けて追撃を試みる。


「でぇぇぇい!! 『お昼にする花火は見えないインビジブルスパイク』!!」

「ほわっ! いたたー。かすっちゃったー。すごいねー。本当にクールになってる! どうしたの?」


 水戸監察官は俯きながら地獄の特訓を思い出す。

 彼は叫んだ。



「自分は!! 雑念がスキルに混ざる度にキャシーさんかジェシーさんかジェニファーさんのおっぱいを触らなければならないと言う! 艱難辛苦を9時間ぶっ通しでこなしました!! もはや、おっぱいを見たら戦闘意欲が湧くように精神を改造済みなのです!! 情に流される前にこっちが優先されるので、非情になれます!!」

「わー。大変だー。それってさ、わたしを倒した後に戻れるのー? 水戸くん、結婚願望あったでしょー? 夜の営みの時とか、大丈夫かなー?」



 水戸監察官は振り返らない。

 そして先を覗く事もない。

 今はただ、この一戦に賭けている。


 「おっぱい見たら戦いたくなる」とか、間違いなく今後の監察官としての職務に支障しか起きないだろうが、それを考えたら負けである。


 雨宮順平の特訓を受ける前に気付くべきであった。


 多分勝っても負けても当分戦線離脱する、水戸くんの孤独な戦いは続く。

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