第505話 【逆神家その6】アトミルカの残存メンバー、お引越し!! ~ハロー! ミンスティラリア!!~

 六駆はスッキリした顔で言った。


「さーて! じゃあ、残った仕事を片付けようか! じいちゃんとばあちゃんはさ、ヴァルガラに住んでる人たちのためにこの世界を回復させて、家とか自然とか再構築してくれる? バニングさんたちいなくなるわけだから、モンスター対策もしてあげようよ!!」


 逆神家、さらに仕事をする。

 もはやできない事は何もないと思われ、それは恐らくこの世の真理である。


「ほっほっほ。ワシの構築スキルの出番かの! ワシじゃて、まだ役に立てるところを見せにゃならんからの!!」

「お父さんが家を建てるなら、あたしゃ火山を静めたり、割れた大地を戻したりしようかいねぇ! ああ、それからさっき消してしもうた山も直さんとねぇ!! なっはっは!」


 ヴァルガラ修復班に逆神老夫婦。

 そこに久坂剣友監察官と55番も合流する。


「ワシにも手伝わせちゃあもらえませんかいのぉ! 四郎さんほどではないけどのぉ、構築スキルも使えるけぇ! お邪魔にゃならんと思いますわ!」

「確かにそうかもしれん!! 私は3人の補佐を務めよう!! 雑用を何でも指示してくれ!!」


 老兵たちがゆっくりとヴァルガラの地に散っていく。

 5時間もすれば元通りどころか、前よりも快適になっているだろう。


 その間に、バニングとザールはシェルターに避難させていたヴァルガラの住人に事情を可能な範囲で説明した。

 彼らはバニングたちとの別れを惜しみ、涙する者も多くいたと言う。


 だが、最終的にはこれまで世話になって来たこの世界の英雄の門出を祝福する。


 アトミルカの本拠地として使用していた施設を住人に譲渡する事となり、8番バッツ・ホワン・ロイが代表者数名に利用方法の説明をすべく奥地へと歩いて行った。


「お袋はさ、雨宮さんたちの煌気オーラを回復してあげてくれる? 特に雨宮さん。なんか煌気オーラ供給器官を損傷してるっぽいから」

「あらあらー。それは大変ですねー。分かりましたー。煌気オーラを増幅させるのなら任せてくださいねー」


 逆神アナスタシアは異能である煌気オーラの増幅を応用して、煌気オーラの回復行為ができる。

 消耗が激しく、全員が煌気オーラ枯渇状態となっていた雨宮隊の処置を任された。


「六駆ぅ! オレは!?」

「うん。親父はね、もうパチンコ屋に戻って良いよ」


「よしきた! 任せとけ!! 3万勝ってるからな!! 夕方にゃ、2倍になってるぜ!! 今晩は焼肉か寿司か!! 楽しみにしてろよー!!」


 逆神大吾。

 全裸のまま現世へと門をくぐって帰って行った。


 「あのまま捕まれば良いのに」とは、六駆くんの呟きである。


 バニングとザールが住人たちとの別れを済ませて来たのを確認した六駆は、例によって地面から門を生やす。


 アリナとガールズトークに勤しんでいた莉子さんが「あっ! 準備できたみたいですよ!!」と言って、呪いから解放された乙女の手を引く。

 煌気オーラが無尽蔵に放出されていた頃には他人の手を握るのにも気を遣っていたアリナ。


 自然と笑みがこぼれて来たと言う。


「それじゃ、ミンスティラリアに行きましょうか! みんな気のいい人たちですから! すぐに馴染めますよ!! バニングさんとアリナさん! ザールさんも手が空いたなら一緒にどうぞ!! バッツさんは後で拾います! 莉子、先に行ってファニちゃんに説明しといてくれる?」

「はぁーい! 任せといてっ!! ……あっ! 今のやり取り、なんか新婚夫婦っぽい!! えへへへへへへへへっ」


 照れ煌気オーラ放出おもらししながら莉子が先んじて門の中へと消えて行った。

 多分、ダズモンガーが大慌てで謁見の間に走っている頃だろう。


 それから30分ほどして、荷物を纏めたアトミルカ組を連れて六駆も門をくぐる。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 ミンスティラリア魔王城では。


「おお! 六駆殿! 待っておったのじゃ!! 莉子から話は聞いておるのじゃぞ!!」

「どうもー! ファニちゃん、久しぶり! ダズモンガーくんは?」


「ダズモンガーなら、客人をもてなすと言って、グアル草のスープを作りに厨房へ行ったのじゃ!!」



 客人にいきなりグアルボンの糞から生える草食わせるつもりなのが虎の武人クッキングタイガー



 バニングたちも門をくぐって、謁見の間に。

 まず、バニングとザールが跪いた。


「お初にお目にかかる。この世界の王よ。私はバニング・ミンガイル。この度は、寛大なるご配慮に甘んじる事をお許しいただきたい」

「お、おお。なんか六駆殿の知り合いにしては、むちゃくちゃ礼儀正しいのじゃ。話は全て莉子より聞いておる。我がミンスティラリアは移民を歓迎するのじゃ。と言っても、魔族ばかりの世界なのじゃ。お主たちが住み良いと感じてくれると良いのじゃが」


 ファニコラ大魔王様、見た目も中身も幼女だが年齢は100歳オーバー。

 さすがの懐の深さを見せつける。


「妾はアリナ・クロイツェル。訳あってこれまで他者を避けておった。上手くできるか分からぬが、魔王殿とも友誼を築けたらと思っておる。どうぞよしなに」

「ぬははっ! 妾と自称が同じなのじゃ! アリナ! 是非とも妾の友となって欲しいのじゃ! ミンスティラリアは男女比に偏りがあるため、女子が増えるのは嬉しいのじゃ!!」


 どうやら、ファーストインプレッションはお互いに良好な模様。

 この場を莉子に任せて、六駆はこの世界の科学屋にコンタクトを取ることにした。


「くくっ。英雄殿。これはまた、面白い人材を……。凄まじい煌気オーラではないかね。煌気オーラ研究はサンプルが少ないためあまり進んでいなかったが。これはこれは。色々と捗りそうだ」

「シミリートさん! とりあえず、4人ほど移住させるので! 家建ててもらえます? 人間と魔族って生活習慣違いますから! 僕も昔は馴染むまで苦労したもんなぁ!!」


「くくっ。拝承した。では、希望を伺おう」

「おっ! さっすが! 仕事が速いんだから!! えーと。じゃあ、ザールさん!! ちょっとこっちに来て、シミリートさんと設計図作ってもらえます? 多分、2日くらいで家ができると思うので! ああ、シミリートさん! トイレにウォシュレットはマストですからね!!」


 シミリートは「承知したのだよ」と答える。

 そこにザール・スプリングが頭を下げてやって来た。


「これからお世話になります! シミリート様!!」

「様はよしてくれないかね。私はただの科学者だ。敬われるような事はしていないのだよ。ただ、諸君らの快適な生活は私が責任をもって請け負うゆえ、安心されよ」


「はっ! 感謝いたします!!」

「くくっ。まったく実直な若者なのだよ。ダズのヤツに紹介すれば、魔王軍の要職をすぐに用意してしまいそうだ。まあ、こちらに来たまえよ」


 ザールは敬愛する師であるバニングと、その師が愛するアリナのためならば何でもできると確信している。

 そんな彼にも幸せが訪れる事を願わずにはいられない。


 そののち、六駆がバッツをヴァルガラから回収してきて、移民予定の4人をコンプリートした。


「じゃあ、バニングさん! 僕、とりあえず帰りますから! しばらくはちょくちょく顔出しますんで、何かあれば言ってください! 用事があれば、シミリートさんに頼めば南雲さん辺りに連絡が行くと思うので!! お気軽にどうぞ!! さあ、莉子! 帰ろうか!!」

「あ、はーい!」


 軽い感じで転移していく高校生カップル。

 バニングとアリナは深々と頭を下げた。


 彼らはもう感謝の言葉を並べない。

 代わりに、肩を寄せ合って恩人たちを見送った。


「逆神。時間ができたら、一度酒でも飲もう。ああ、いや。お前は一応未成年だったか」

「お茶会ならいつでもお付き合いしますよ! 今度は仲間も連れて来ます! これも何かの縁ですから! 今後も仲良くしましょうね!! ではではー!!」


 門の向こうに消えて行った2人を見届けて、アリナが言った。


「……妾の人生にも、こんな展開が待っておったとは。六駆と莉子は、もしかすると天の使いかもしれぬな」

「はい。私たちが彼らと会えた。それだけでも、長らくの時を費やしてきた価値はありましょう。……さあ、アリナ様。明日は何をしましょうか。明後日は。来週、来月、来年。予定はいくらでも立てられますぞ」


 そう言って、バニングは穏やかに微笑んだ。

 表情からは歴戦の雄の猛々しさは消えており、ただ大切なパートナーを慈しむ一人の男の顔になっていたと言う。

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