第493話 【最終決戦その2】逆神六駆VSバニング・ミンガイル ~男たちのラストバトル~

 逆神六駆が構えた瞬間、バニング・ミンガイルが動く。

 じっくりと腰を据えた戦い方が基本のバニングにしては珍しいが、それは六駆を相手にする以上奇策も必要だと言うある意味では敬意の表われでもあった。


「行くぞ!! 『エアラリス・無尽斧インフィニオル』!!」


 具現化した『魔斧ベルテ』を絶え間なく投げつける事で、まずは六駆の足を封じる。

 バニングは逆神流の『四重クワドラ』を既にカルケルで見ており、そのステージのスキルを使われると確実に対応は後手に回り勝敗が一気につきかねない事も熟知していた。


「うわっ! すっごい量の斧ですねぇ!! これは避けてばかりだとジリ貧だ!!」

「ふっ。そう易々と避けられては、賢しげにスキルとして使っている私の立つ瀬がない。……さあ! 量はさらに増えるぞ!!」


 六駆は両腕に均等な量の煌気を込めて、飛び交う『魔斧ベルテ』に真っ向勝負を挑む。


「ふぅぅぅぅんっ!! 『豪拳連撃連射祭ハードヒットパレード』!!」

「やはりそう来るか!! だが、ここまでは想定内!! 私も自分の武器を囮に使わせられるとは思わなんだよ! 『シュテルン・ファオスト』!!」


 カルケルにて阿久津浄汰の『結晶外殻シルヴィスミガリア』を一撃で砕いた、バニングの体術。

 彼の強みの1つは武器を手放しても戦えること。

 ちなみに逆神六駆にも同じことが言える。これは強者の嗜みである。


「痛いっ! 油断しました! さすがにバニングさんのレベルになると、防御にも集中しないと厳しいですね! ふぅぅぅぅんっ!! 『鋼泥外殻グラニットミガリア』!!!」

「……ふっ。相変わらず、常軌を逸した柔軟性だな。……なんだその『外殻ミガリア』は。今思い付いたとでも言いたそうだが」


「はい! さっき、ちょっとしたアクシデントで装備が砕けたので!! 僕も鎧が欲しいなって!! ただ、これは構築化が難しいですねー。燃費も悪いし。いやー! 阿久津さんはすごいや!」



 ちなみに、ちょっとしたアクシデントとは莉子さんの照れ隠しパンチである。



 見よう見真似で『外殻ミガリア』を作り出した六駆くん。

 ただし、『結晶外殻シルヴィスミガリア』や『雷身外殻ケラヴノスミガリア』のように特殊な効果は付与しておらず、あくまでも身を守るための具現化スキル。


「そのように防御を固められるともはや小細工は通用せんな。……ぬぅぅぅおぁ!! 私もリミッターを1段階ほど解除させてもらおう!! っつぁ!! 『一陣の拳ブラストナックル』!!」


 それは雨宮戦で見せたバニングのフィニッシュブロー。

 風属性で速度を格段に上げたのち、爆発属性の拳を相手に叩き込む。


 触れれば爆ぜる必殺の拳。

 さらに、今回は過去に類のない煌気オーラを纏っていた。


「これはまずい!! しかも早い!! これじゃ、出せる盾も限られますね!! ないよりはマシ!!『空盾エアバックル二重ダブル』!! ……あ! ダメだ!!」


 バニングの『一陣の拳ブラストナックル』がせっかく作ったばかりだった六駆の『鋼泥外殻グラニットミガリア』を粉砕した。

 下級スキルではあるものの、六駆の出した盾を貫いてなお勢いは衰えず。

 バニングの周りでは煌気オーラがバチバチと稲光のように輝いている。


「……くぅ!! さすがに年には勝てんな。昔はもっと簡単に煌気オーラ放出のリミットを超えていたものだが」

「僕がせっかく考えた新スキルを一瞬で壊してよく言いますよ。器用な人ですねー。バニングさん。何ですか、それ。威力倍増のスキルですか?」


「ふっ。これは単純に限界を超えた煌気オーラを体から出しているだけだ。……そうだな。逆神。お前の使う『二重ダブル』と同じようなもの、と言えば伝わるか?」

「あっ! とってもよく分かります! すごいなぁ! うちの逆神流は元からそういう作りなんですけど。普通の煌気オーラ構築術式でそんな無茶したら、かなり辛いでしょ?」


 バニングは額の汗を拭ってから「ふっ」といつものように笑う。


「これが恐らく、私にとって生涯最期の戦いだ。ならば、辛いだのきついだのと言ってもおられまい。最期にお前のような猛者を選べたことは、神にでも感謝しよう。肝心な時にはどんなに祈っても何もせんヤツだが……。たまには粋な事もする!!」


 バニングは再び煌気オーラを拳に集中させ、限界ギリギリの出力を始める。

 爆ぜる煌気オーラの閃光はさらに勢いを増すが、まるで消える寸前の線香花火を見ているようだと六駆は思った。


「……ならば、僕も全力でそれにお応えしましょう!! あなたの矜持に敬意を表して!! そしてぇ! あなたの首にかかった懸賞金に思いをはせて!!」


 せっかく良い感じに盛り上がっているのだから、おっさん余計な事を言うな。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 旦那の激戦を見守る小坂莉子。

 本当ならば『苺光閃いちごこうせん』で援護をしたいところなのだが、彼女にも「男同士の戦い」に割って入る事の無粋さは理解できた。


 ならば、胸の前で手を組んで旦那の無事を祈るのが乙女の仕事なのかもしれない。



 胸の前で手を組んでいるのに胸の形状になんら変化がないのは何故か。



 と、ここで心と体と胸部を微動だにさせない莉子さんの元へ、アリナ・クロイツェルが降下して来た。

 莉子は念のため身構える。


 なにせ、彼女はアトミルカナンバー1。

 敵の頭目であり、長年にわたり何千、何万の探索員が姿を追い続けても影すら見せなかった犯罪組織のボス。


 だが、アリナは「そう身構えるでない」と口にしたのち、交戦の意がない事を両手を挙げてプラプラさせることで示して見せた。


「あなたが1番さん……!! 思ってたよりずっと若い!! あと可愛い!!」

「ふふ。そなたもかなり可愛らしいぞ。小柄で愛玩動物のようである」


 莉子さん、アリナの視線が自分の胸に向けられている事に気付く。

 威嚇する猫のようにキッと睨みつけたのち、声を荒げる。



「なんですかぁぁ!! ちょっと胸が大きいからって!! 言っておきますけどぉ、胸の大きさが戦力の違いじゃないんですからねぇ!!」

「あ、ああ。いや、分かっておるが。と言うか、別にそなたのバストについて何かを語った覚えもないのだが?」



 莉子さん、ついに1番相手に因縁をつけ始める。

 ここに来て、逆神六駆に流れる血脈をほとんど自分のものにしつつある彼の愛弟子兼嫁。


「妾はただ、惚れた者の戦いを見物するには同じ境遇の者がいた方が愉快だと思っただけよ。そなたの想い人もなかなかやるな」

「えっ!? あのぉ……。バニングさんってあなたよりも相当年上ですよね? ……あっ!! パパ活ってヤツですか!?」


 莉子さん。

 どうしてクライマックスになった途端に六駆みたいな事を言い出すのか。


 カップルは別に同じ思考回路を持つ必要はないのだが。

 何なら、価値観は違っていた方がお互いの刺激になるまである。


「なるほど。そなたの度胸と落ち着き方に興味があったのだが。知れたぞ。想い人に対する絶対的な信頼。そして、自身の力にも同じだけの信頼を持っておるな」

「な、なんですか、もぉ!! ちょっといい人みたいにしたって騙されませんよ!? 六駆くんを褒めてくれるとか、いい人のランクがローマ教皇レベルですけどぉ! えへへへへ! カッコいいですよねぇ! 戦う男の人って!!」


 アリナは莉子に「確かに。そなたの言う通りだ」と同意したのち、煌気オーラ渦巻く戦場を指さした。


「えっ!? あなたってローマ教皇してた事があるんですかぁ!?」

「……いや。妾が同意したのはそこではない。戦う男の魅力についてだ」


 アリナは咳ばらいをして続ける。


「見るが良い。そろそろ決着の時のようだ」

「頑張れー!! 六駆くん!! 7万ドルだよぉ!!」


 アリナの指摘通り、逆神六駆とバニング・ミンガイルの戦いは次の一撃で決着となるだろう。

 お互い、出し惜しみなしの真っ向勝負。


 どんな結果が出ようとも、そこに悔いなどあろうはずもない。


「わたし! 探索員辞めたらグアムとかプーケットとか行ってみたい!! 水着買うから!! 六駆くんにだけ見せるようのヤツだよぉ!! ちょっとセクシーなのとかもいいかなぁ!! えへへへへへへっ!!」

「まこと、今の世には面白き者が多くいるな」


 シリアスブレイカーに目覚めてしまった恋愛脳の莉子さん。

 念のため繰り返すが、今はクラスマックスの真っただ中である。

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