第440話 【南雲隊その1】クリスタルメタルゲルと出会ってしまった逆神六駆 コラヌダンジョン第5層

 コラヌダンジョンを進むのは、南雲修一監察官とチーム莉子の南雲隊。

 極めて強いモンスターが徘徊していると言う事もあり、第1層から激闘の連続であった。


 現在、第4層まで進んでおり、眼前にはまた新しいタイプのモンスターが行く手を阻んでいる。


「おー! こんなヤツ、いたよ! 昔転生した先の異世界に! これ、炎とか氷とかが意志を宿してるタイプのモンスターだ! ねぇ、莉子さんや?」

「そだよ! こっちの炎の子がダストフレイム。そっちの冷気の子はゴリブリザード! どっちも珍しいモンスターなんだよぉー!!」


 コラヌダンジョンのモンスターは『モンスター百選』に載っているレベルがわんさか群れている。

 元周回者リピーターの六駆くんと歩く大百科な莉子さん以外の者にとっては、初見の相手も多い。


 そんな絶好の修行シチュエーションを逃す逆神六駆ではなかった。


「じゃあ、芽衣とクララ先輩! 頑張ってみましょうか!!」


「うにゃー。また六駆くんにしごかれるぞなー。あたし逆神流じゃないのににゃー!!」

「みみっ! クララ先輩、諦めるです! 六駆師匠は既にチーム莉子を1つの個体として見ているのです!! みみみっ!!」


 炎と氷のモンスターの相手に乙女たちをあてがう六駆おじさん。

 ちなみに、小鳩と南雲は既にしごかれた後である。


「はぁ、ふぅ……。ろ、六駆さん……いくら煌気オーラの回復ができるからって、作戦行動中に修行を取り入れるのはどうかと思いますわよ!?」

「いや、本当にね。まさか私まで巻き込まれるとは思わなかったよ。しかもこれだけ強力なモンスターとの連戦が続くと、進行速度が心配になるな」


 南雲の考えは杞憂である。

 何なら、4部隊の中で最も走っているのが南雲隊。


 理由は単純だった。



 六駆のスパルタ修行のせいで、常に全力で戦うメンバーたち。

 ならば、強敵が相手でも自然と歩みは速くなる。



「はい! クララ先輩! ちゃんと属性攻撃で芽衣をサポートしてあげないと! 相手に実体がないんですから! クララ先輩が目標を拘束しないと芽衣は攻撃できませんよ!!」


「うーにゃー!! 『グラビティアロー・群れ雀パッセロ』!! ……あっ。全然効いてないぞなー」

「みみみっ! 『発破紅蓮拳ダイナマイトレッド』!! みみっ!? こっちも効かないです!!」


「そりゃそうだよ! この手合いはどこかにある核を破壊するか、もの凄い強力なエネルギーで消滅させるかがベターだからね! 重力属性は足止めにはなるけど、ミスチョイスですねー! 芽衣は力任せになりすぎ! 物理で攻めるなら狙いを付けないと!!」


 既にAランクでも上位の実力を持つ椎名クララと、Bランクながらそれに準ずる木原芽衣。

 彼女たちが苦戦するのだから、コラヌダンジョンは強敵であった。


「はいはい! 敵さんは待ってくれませんよ! 次の手を考えなく……っちゃ……」

「ほえ? どうしたの? 六駆くん?」


「り、莉子さんや! あそこにいる、キラキラしたメタルゲルちゃんはもしかして?」

「わぁー! クリスタルメタルゲルだよぉ! 初めて見たー!! メタルゲル種の中でも最上位に君臨する、すごい子なんだよ!!」


 逆神六駆の目の色が変わった。

 すぐに対応するのは監察官きっての知恵者。


「さ、逆神くん! 今はイドクロア狩りをしている余裕ないからね!? クリスタルメタルゲルの外皮は200万くらいだけど、君は今回の作戦の基本報酬が2000万円なんだから!! ダメだよ、寄り道は!!」

「南雲さん……。その発言はお排泄物ですわ。六駆さんにわざわざイドクロアの価値を教えて差し上げるなんて……」



「……確かにそうかもしれん」

「ヤメてもらえますこと? うちの55番さんの口癖で誤魔化そうとするの」



 時すでに遅し。


 六駆は「どけぇ!!」とクララと芽衣を苦しめていたモンスターを拳で消滅させる。

 正しい対処とは何だったのかと聞きたくなるほどのパワープレイ。


「う、うひょー!! 逃げ足が速いなぁ!! ぐへへっ! 絶対に僕からは逃げきれないって言うのに!! お待ちなさいよ! どこまでも追いかけるよ! ぐへへへっ!!!」


 逆神六駆、戦線離脱する。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 気が付くとそこは第5層。

 六駆は『粘着糸ネット』で上手くクリスタルメタルゲルを捕獲して、ひとしきり頬ずりしたところで自分の現在地が分からなくなっている事に気付いた。


「……困ったなぁ。みんな、どこに行ったんだろう」



 どこかに行ったのはお前である。



「ピキー! ピキー!!」

「あらやだ! クリスタルメタルゲルちゃんが可愛く鳴いてる!! ……今楽にしてあげるからね!!」


 それがどんなに可愛らしい姿をしたモンスターでも、日本円に換算した時点で六駆の目には札束にしか映らない。

 既にご存じだっただろうか。これは失礼。


 その後、普通に煌気オーラを纏わせた手刀でクリスタルメタルゲルを貫き、外皮を剥ぎ取ると彼はちゃんと冷静さを取り戻した。


「もう、本当に困るな! 作戦行動中に部隊のエースアタッカーが離脱するとか! やったらダメな事のトップ3に入るよ! まったくもう! ……やっちった!」


 やらかした事を客観的に見た上で、特に反省することもなく「過ぎたものは仕方がないな!!」とセルフジャッジをキメる。

 これは、おっさんが持つ108ある必殺技の1つである。


「サーベイランスもついて来てないもんなぁ。念話をするにも、階層まで離れていると僕の煌気感知力じゃ上手くいかないだろうし。何より疲れるし! よし、しばらく待ってダメなら、あの手で行こう!!」


 おじさんの「しばらく」待つはだいたい5分である。

 ただし、自分で使うときの「ちょっと」遅れるはミニマムが30分になる。


 という訳で、5分経ったのであの手で行きます。


「ふぅぅぅぅんっ!! 『天井壁破壊拳ムシャクシャシテヤッタ』!!! むむ、意外と硬いな!! ならばぁ! 『二重ダブル』だぁぁぁ!!!」


 コラヌダンジョンは徘徊するモンスターたちが踏み固めているため、床や天井が通常のダンジョンとは段違いの強度を誇る。



 まあ、普通に六駆が穴を空けたのでその話はもう良いだろう。



 それからしばらくすると、莉子が空いた穴から降って来た。

 きっちり5分でやって来た辺りに、莉子さんの「おっさん有識者」としての稀有な才能を見た。


「もぉぉ! 六駆くん! ダメだよぉ! ダンジョン壊しちゃ!」

「良かった! 莉子に会えたらもう安心だ!!」



「えっ!? もぉぉぉ! 今回だけ、特別だからねっ!!」

「ははっ! 莉子は優しいなぁ!!」



 勝手に特例措置を認めたバカップルであった。



◆◇◆◇◆◇◆◇



 その後、南雲たちも第5層に降りてきて南雲隊は再集結する。

 苦言を呈する部隊長であるが、彼は逆神六駆と書いて「暖簾に腕押し」と読める事を知っている。


 「まあ、良いよ。逆神くんのことだから、色々と計算してやったんでしょ」と、割とすぐ叱責するのを諦めた南雲。

 「へへっ。さーせん!」と謝っているようで煽っているような顔の六駆を見て、「あ。この子、やっぱり大吾さんの息子だよ」と痛感したと言う。


「山根くんからの通信で、どうも我々の部隊は少し突出しているらしい。ここで休憩して、他の部隊と足並みを揃えよう。山根くん、いい塩梅になったら教えてね」

『うーっす。それまではクソみたいなコーヒーでも飲んでてくださいっす!』


「そうだな。みんな、コーヒーを淹れよう。……ねえ、山根くんさ?」

『修一! お母さんた』



 南雲は凄まじい速度でサーベイランスの通信を叩き切った。



 コラヌダンジョンの攻略は順調そのもの。

 他の3部隊も今のところ大きな問題は起きていない。


 どの部隊に大きな問題が起きるのだろうか。

 多分、流れ的にそろそろそんな時分である。

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