異世界転生6周した僕にダンジョン攻略は生ぬるい ~異世界で千のスキルをマスターした男、もう疲れたので現代でお金貯めて隠居したい~
第441話 【五楼隊その2】休憩と「あの痴れ者を私が助けないといかんのか?」 ルブリアダンジョン第8層
第441話 【五楼隊その2】休憩と「あの痴れ者を私が助けないといかんのか?」 ルブリアダンジョン第8層
五楼隊のダンジョン攻略スピードは順調に加速していた。
第7層を難なく突破し、第8層へと向かう道中である。
「よし。一度ここで休憩を取ることにする。まずまずなペースで進んでいるから、焦る事もない。久坂監察官室で考案された【
逆神四郎の作った【
これまで探索員たちが使用していた『収集箱』と比較しても、内部で保存できる量。そして保存される状態。いずれも段違いのスペックとなっており、「これだけでも四郎殿を登用した価値はある」と監察官の間でも大好評である。
「くぁぁー! ダンジョンで弁当食えるとか、感動なんでよろしくぅ!!」
「珍しく屋払さんと意見が合ってしまいました。よろしく。これまでは固形食でしたもんね。カロリーメイトみたいな。水も限られていたので、口の中がパサパサになるんですよね……」
彼らの【
「和泉さん、こっちにプリンあったんでぇ! こっちにゃ水ようかんもありますぜ! これなら旦那も食べやすいし、糖分補給もできるんでよろしくぅ!」
「これは……。何と言うお心遣い。感謝しまごふっ。屋払さんにはもちろん、これを用意して下さった五楼さんにはお礼を重ねても足りなげふっ」
「部隊長として、隊員に何を食わせるか管理するのも大切な任務のひとつだ。気にする必要はない。それでも気にすると言うのならば、働きで応えてくれ」
五楼らしい、ぶっきらぼうだが優しさに溢れたセリフだった。
3人は「さすが人の上に立つ人は違うなぁ」と尊敬を深めたと言う。
ところで、またしても数が足りない事に諸君はお気づきか。
屋払、青山の両Aランク探索員は食事に夢中でまだ事実を把握していない。
和泉正春Sランク探索員は察しているが「言っても詮無きことです」と隊長を慮っている。
五楼京華上級監察官はもう何も見えないし聞こえないを貫いていた。
だが、悲しい知らせと言うものはこちらの都合を考えてはくれないのが世の常。
日引春香オペレーターが申し訳なさそうに告げる。
『……あの。五楼さん。ご報告が』
「ああ。分かっている。私が希望した肉をビーフ、ポーク、チキンの3種類も用意してくれた事には礼を言わねばならんな」
『あ、いえ。はい。それはみんなに伝えておきます』
「やはり、肉を食わねば力が出んからな。四郎殿のおかげで最前線の食事事情が大きく改善される。まったく、逆神家にしておくのは惜しい御仁だ」
『五楼さん。逆神大吾さんから救援要請が届いているのですが』
「おい。日引。私はそんな報告を受けると言ったか? そう言えば1つ前の階層から見かけんとは思っていたが。……なるほど! 死んだか!?」
五楼は「救援要請も虚しく逆神大吾氏が殉職されました」と日引が伝えて来る事を望んだ。
探索員のトップとして多くの責任と義務を負う彼女の、ほんのささやかな願いである。
『ええと。……端的に報告します。大吾さんがハッスルして大きな
「そうか。そのまま食われたら良いのに」
腹ごしらえを済ませた屋払が覚悟をキメて意見具申する。
「隊長! 大吾さん放置しといたら、最悪アトミルカに気付かれるかもしれねぇんで! よろしくぅ!!」
「屋払……。貴様はつまらん正論を吐くな……。そうか、私にあの痴れ者を救えと言うのか」
せっかくの食事休憩から一転、ストレスフルな現場へと急ぐ五楼隊。
そこでは、凄惨な状況が彼女たちを待ち受けていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「お、おおー! 京華ちゃん! 助かったぜぇ! いやー! いきなりこの木に化けてやがったモンスターに掴まっちまってよぉ! おまけに
諸君は今ではダンジョンで無双している小坂莉子が、初めての探索でツタに絡まり可愛らしい悲鳴を上げた事を覚えておいでだろうか。
あの時とまったく同じシチュエーションが展開されようとしていた。
些細な違いは、可憐な女子高生が汚い中年男性になっている事だけである。
木の巨大モンスターの名前はドレインプラント。
獲物から
「んぁぁぁい! また
五楼は眉間にしわを寄せて、後ろで待機している隊員たちに尋ねた。
「貴様らに問いたい。この場で私があの痴れ者を助けない選択を取るのは問題か?」
「えっ? いやー。多分、問題だと思うんでぇ、よろしくぅ?」
「そうか。では、助けるために放ったスキルがうっかり要救助者に当たった場合はどうだ? これは事故だな? 責任は私が取ろう。事故の責任を」
「あの、私が対応しましょうか?」
「よせ! 青山! あの痴れ者を甘く見るな!! 貴様はまだ若い!! 若い女を見たら見境のない男だぞ、あれは!!」
「は、はいぃ!? なんだかよく分かりませんけど、お心遣い恐縮ですっ!!」
大吾の垂れ流している
まず、五楼は屋払と青山に周囲のモンスターの掃討を命じる。
「了解なんでぇ! よろしくぅ!!」
「了! 屋払さんはあまり動かないで! 和泉さん、ご飯食べたばかりですから!!」
「ご、ごふっ。何から何まで、申し訳ないげふっ」
彼らは背中を預けるに充分足る隊員であると、五楼はここまでの道のりで理解していた。
「京華ちゅわぁぁぁん!! オレ、そろそろ気持ち悪くなってきた! ずっと頭を下に向けてるからさ!! 助けてぇー!」
「……くっ! この私が、ここまで追い詰められるとは!!」
上級監察官・五楼京華にこれほど苦悶の表情をさせる手合いがいるとは、やはり世界はまだまだ広い。
だが、決断の時はすぐにやって来た。
「ちょ、京華ちゃん!? ほら、昔はオレが助けてあげたじゃん! 覚えてる? 異世界で水浴びしてたところをさ! モンスターに襲われてぇ! オレが華麗に参上したヤツ! いやぁ、あの時の京華ちゃんのサービスシーンは今でもオレの心のフォルダに」
「黙れぇぇぇ!!
「あれ、なんかオレごと狙ってない? ああ、変化球だ! なんだなんだここから曲がるんだおぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
『
その威力は絶大で、記録によると異世界の極めて硬い未知の鉱物系モンスターを粉々にした事もあるらしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「いやー! 助かったわー!! めんご、めんご!! ちょっと油断しちゃった! てへぺろ!!」
「……回復して差し上げようと思ったのですが。既にほとんどダメージが残っていない。さすがは逆神くんのお父上でげふっ」
五楼は和泉を「無意味な
パーティーの回復役に「回復すんな!」と一喝する姿は、常識だけでは生きていけない探索員の本質を語っているようにも見えたと言う。
実際は、ただ嫌悪感が全力疾走しただけなので、諸君のお察しの通りである。
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