第301話 超巨大モンスターとの戦い
「どうしたにゃー? 芽衣ちゃん、ずっと壁見てるぞな?」
「……みみっ。もしもの話をしてもいいです?」
この世界で「もしかしたら」が「もしかしない」確率は限りなく低い。
「芽衣。遠慮することはないんだよ。戦場では年齢や階級なんてものよりも1人の気付きの方が重要な事も多いんだ!」
「あははっ! 六駆くんが大人みたいなこと言ってるー! もぉー!」
芽衣は楽しそうにしている六駆と莉子に向かって事実を伝えることにした。
「……みみっ。勘違いじゃなかったら、この階層はすっごく大きな蛇が周りを囲んでいると思うです。あれ、多分壁じゃなくて蛇の胴体です。鱗が付いてるです」
「南雲さん! 緊急事態です!! 蛇が出ました!! 『
最強の男にも苦手なものはある。
逆神六駆はにょろにょろした生き物が嫌いだった。
いわゆる「生理的に受け付けない」というヤツらしく、彼は異世界転生
どうしても戦わなければならない場合は、全力をもって一瞬で仕留める。
『なに、どういうことなの!?』
「芽衣に言われて気付きました! でっかい蛇がダンジョンに巣食ってます! 帰っても良いですか!?」
『へ、蛇!? 状況をもう少し詳しく説明してくれる!?』
「僕ね、蛇はダメなんですよ! だから、もう帰って良いですね!?」
『ごめん、逆神くん! 小坂くんに代わって!!』
「分かりました! 帰って良いんですね!?」
南雲は莉子から事情を聴いた。
まさか、シャンパンパイソンと遭遇するとは、あまりにも想定外の事態である。
これはアトミルカもバカではなかったと言う事であり、南雲は頭を抱える。
重要な拠点へ続くダンジョンなのに、見張りの1人もいないのはおかしいと訝しむべきであった。
アトミルカは、このシャンパンパイソンを天然の守護神として利用していたのだ。
超巨大大蛇。シャンパンパイソン。
国際探索員協会が年末に発表している「このモンスターがヤバい」ランキングの常連であり、討伐難易度は堂々のSを誇る。
名前の由来はシャンパンの栓を飛ばすように巨大な毒の牙を噴射する事から。
性格は極めて獰猛。さらに知能も高い。
一度獲物を見つけると、胃の中にそれを入れるまで執拗に攻撃を繰り返す。
『よし、気付かれないように下の階層へ抜けるんだ!』
「ダメですにゃー。よーく見たら、下の階層への道が途中から胃の内視鏡カメラの画像みたいになってますにゃー。これ、蛇さんのお腹の中に続いてますぞなー」
「ひぃぃぃっ! ヤメてください、クララ先輩! 喩えがグロいんですよ!!」
「……六駆さんが怯えていると、なんだかこっちは冷静になりますわね」
クララの見立ては正しく、シャンパンパイソンは既にチーム莉子を得物として認定して、美味しく頂く準備も完了していた。
「みみっ。莉子さん、どうするです?」
「んー。六駆くんの『
「ぼ、僕は無理だよ!? 蛇の鱗って認識しちゃってから、鳥肌がヤバいんだ!! もう、隅っこに逃げたいのに四方を蛇に囲まれてるんでしょ!? ストレスで死んじゃう!!」
かつて、これほどまでに逆神六駆が役に立たなくなったことがあっただろうか。
セルフ戦力外になった最強の男。
ならば立ち上がるのは乙女たちである。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「えっとぉ……。逆神流のスキルだけで戦うとなると、わたしのスキル全部と芽衣ちゃんの『
莉子さん、注射を嫌がる幼稚園児みたいにしゃがみ込んで動かなくなった六駆おじさんの代わりに作戦を立てる。
「六駆くん、大丈夫だにゃー。莉子ちゃんが何とかしてくれるにゃー。ちなみにあたしはスキル使えないから、六駆くんと一緒に震えとくにゃー。ぶるぶる」
戦力外が2人に増えた。
「みみっ! 莉子さん、莉子さん。あの入口に擬態してる口から、
「わわっ、本当だ! てぇぇいっ! 『
「かしこまりですわ! 『
シャンパンパイソンの牙の噴射は並の探索員の防御スキルなど貫通する。
だが、莉子と小鳩の連携は崩せない。
「図鑑に載ってた通りだね! シャンパンパイソンは体が大きすぎるから、攻撃方法が限られてるんだよ! 具体的には、牙を飛ばすか毒液を吐くかだね。あとは、捕食体勢になると動かなくなるはずだから、逆に攻撃のチャンス!」
莉子ペディアさんは絶好調。
豊富な知識を元にどんどん解決策に近づいて行く。
対して、最強の男は。
「…………………………」
せめて何か言え。
「よぉし! 決めたよ! 芽衣ちゃん、ドッペルゲンガーを何体か出して
莉子の立てた作戦はこうである。
まず、餌の代わりに芽衣の
シャンパンパイソンからすれば、ご飯食べる口になっているところに
そののち小鳩の『
人間ドックでバリウム飲んだ人みたいになるのは必然。
これは大変苦しい。
作戦の肝は「どうやったら穏便にシャンパンパイソンにお引き取り頂けるか」である。
この大蛇を倒してしまえば、異変はアトミルカに伝わる可能性が高い。
ならば、自然な感じに帰ってもらうのが1番良い。
「さぁ! 頑張ろー!!」
という訳で、作戦決行の時。
まずは芽衣が先陣を切る。
「みみみっ! 『
「キシェアァァァァアァァッ!!」
急に異物を口にぶち込まれた大蛇、堪らず悲鳴をあげる。
が、それを許さないのが小鳩さん。
「静かになさってくださいませ! 『
あとは、刺激を与えてチーム莉子を諦めてもらうだけ。
「やぁぁぁっ! 『
「キシェアァッ! シャァァァァッ!!」
小坂莉子、師匠ばりの逆神流アレンジスキルを繰り出す。
もはや免許皆伝待ったなしであった。
乙女たちの活躍により、モンスター界の重鎮を引上げさせることに成功。
アトミルカにも気付かれない手際は見事の一言であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「六駆くん! 終わったよー!」
「り、莉子ぉ! 僕は、僕ぁ!! ダンジョンがこんなに怖いと思ったのは初めてだよ!!」
六駆おじさん、女子高生の胸に飛び込む。
下手をすると事案だが、そこに膨らみがなかったので恐らくセーフ案件。
「いやー。恐ろしい相手だったにゃー。チームの団結による勝利だにゃー」
「みみっ。さすがクララ先輩です。自分も参加していた体でいく、その姿勢は尊敬です」
サーベイランスが心配そうに飛んでくる。
『さすがだな、小坂くん! 私が口を挟む隙すらない、完璧な立ち回りだった!』
「南雲さん、よろしくって?」
『どうした、塚地くん』
「莉子さん、聞いておられませんわよ? 六駆さんとじゃれておられますわ」
『ああ……。そうか……』
「六駆さんが回復したらまた来てくださいまし」
小鳩の塩対応で、南雲修一はなんだか心がモニョっとしたと言う。
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