第223話 2回戦の種目発表 その名はガチバトル!
監察官室対抗戦の1回戦から3日が経ち、チーム莉子は南雲監察官室に集結していた。
「いやー。もう今日が待ち遠しくって仕方がありませんでしたよ! だって、南雲さんってば前日までは学校に行くようにとか言うんですもん! 僕はビックリしちゃいましたよ! 南雲さんが悪魔のように見えました! あははは!!」
悪魔に悪魔呼ばわりされる南雲。
一方、元祖悪魔の六駆くんは元気そうである。
「もぉぉ。六駆くんってば、昨日からその話ばっかりだよぉ。みんな聞いてくれますか? 六駆くんったら、夜中の2時に電話して来たんですよぉ? 明日楽しみだねって。もぉぉー」
迷惑そうな話なのに、どうして莉子さんの顔は嬉しそうなのか。
「にゃっはっはー。面倒事と見せかけてリア充をアピールする高度な技術だにゃー」
椎名クララ。
彼女はリア充の生態に詳しい。
大学生活でしっかりと学んでいるらしい。
そんな彼女は商学部。
「あの、南雲さん? 勘違いだったら失礼いたしますわ。なんだかお痩せになられまして? よろしかったらこちら、お食べになられると良いですわ。カフェインタブレットですの」
男嫌いの小鳩に心配される南雲。
「みみっ……。昨日、おじ様から連絡が来たです……。今、異世界にいるとか言ってたです……。どうしてそれを芽衣に伝えて来るのか意味不明です。みみっ……」
そして戦意喪失した状態でやって来た芽衣。
チーム莉子は今日も平常運転である。
「まあ、みんな。コーヒーでも飲みたまえ。塚地くん、差し入れありがとう。カフェインって良いよね。なんだか嫌な事を忘れられると言うかね」
「ヤメてくださいよ、南雲さん。カフェインを麻薬みたいに言うの。はい、みなさん。パンケーキっすよー。自分のスイーツ製造機・弐拾五号で作ってみたっす!」
「山根くん。ついにコーヒーを捨てたな?」
「嫌だなぁ。別に元からコーヒーに全てを捧げてなんかないっすよ」
山根のスイーツ製造機の進化は止まらない。
ついにパンケーキを焼く機能を実装して、そこにこれまで培ってきた生クリーム、ソフトクリーム、コーヒーゼリーおよびババロアをトッピングできる。
なお、スイーツ製造機には大量のイドクロアが投入されている。
「まあ、コーヒーブレイクでもしながら、明日の種目の発表を待とうじゃないか。出来る事ならば、もう野球拳とか、叩いてかぶってじゃんけんぽんにならないかね。……それでも逆神くんがむちゃくちゃやりそうな気がするが。……山根くん、コーヒーちょうだい。この塚地くんがくれたタブレットも溶かして淹れてね」
「了解っす。ふんふふーん。はい、南雲さん。ところで、描いた夢は叶わないことの方が多いって言う歌い出しのステキな曲があるんすけど、知ってます?」
「知ってるよ! 平井堅のナンバーだろ!? なんで今、わざわざその歌詞なの!?」
「いやー。南雲さんが打ちひしがれる時にBGMとして流そうかなって思いまして!」
南雲監察官室は今日もアットホームな職場。
なお、現在南雲監察官によって求人広告が出されております。
「監察官をちゃんとリスペクトしてくれて、我流のスキル使わない人なら経歴不問」との事ですので、皆様奮ってご応募ください。
ピンポンパンポーンと、館内放送が流れる。
メンバーは「ついに来たか」と身構えた。
『
「すみません、山根さん! パンケーキのおかわりもらえます!?」
「おおい! なんでこのタイミングで喋るの、逆神くん!!」
『……となります。参加するパーティーの健闘をお祈りいたします。以上です』
肝心な部分を全て聞き漏らした南雲監察官室の一同である。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「もぉぉ! 六駆くん! ダメでしょ、人が大事なお話してる時に大声出したら!」
「……はい。ごめんなさい。パンケーキが美味しくて、つい」
「パンケーキなら、わたしの家に来てくれたらいくらでも焼いてあげるよぉ!」
「えっ!? 本当に!? 生クリームも付いてくる!?」
「生クリームもジャムもフルーツだって載せてあげるっ!!」
「う、うひょー! じゃあ、この戦いが終わったら莉子の家に直帰するよ!!」
お説教される小学生の体で始まったかと思えば、最終的にはバカップルの体で着陸する莉子と六駆のお話。
いつも通りの風景にほっこりするクララと芽衣。
「わたくし、このチームに出向して来て良かったですわ。自分の価値観がどんどん変わっていきますもの。お排泄物のようにダメな男が、お排泄物的に強くて、やっぱりお排泄物ですの。この世の不条理がよく分かりますわね」
小鳩も順応が進んでいるようで何より。
「ただいまっす。聞いて来たっすよー」
「おお! 山根くん、ご苦労だった!!」
日引春香さんと同期の山根健斗くん。
コネを最大限に生かして五楼上級監察官室へと侵入し、「さっきの放送の確認なんすけどね。うちの南雲さんが念のためにって言うもので」と頭脳プレーで内容を聞き出していた。
その辺を歩いている人に聞けば良いじゃないかとお思いの諸君には、説明不足をまずお詫びしたい。
先ほどの館内放送は、2回戦に出場する4つの監察官室にのみ流されたものである。
「なんで南雲さんまで同時に喋るんすかねー。逆神くんが前半を潰して、南雲さんが後半を潰してりゃ、世話ないっすよー」
「本当にすまないと思っている! 君は実に有能な助手だよ!!」
山根健斗Aランク探索員なしでは、南雲監察官室が機能しない説。
割と的外れではないところが切ない。
「んじゃ、発表するっすよー。2回戦の種目はですね。ガチバトルっす! 両監察官室から代表者を決めて、3対3のスキル有り、武器有りのガチンコバトルっす!」
「なんだ! じゃあ2回戦も余裕じゃないですか! またお金が増えるんですね!!」
「終わった……! ガチバトルって……!! ガチれないじゃないか、うちの子たち!!」
今日は良い感じにリアクションがシンクロしている六駆と南雲。
ただし、抱いた感想は真逆である。
「どうしたんですか、南雲さん!」
「どうしたもこうしたもないよ、逆神くん!! うちの子たちの中で、逆神流使いは3人! 代表者も3人! メンバーは5人!! 計算してみなさいよ!!」
「…………。…………はい!」
「ああ、くそぅ! 計算できてない顔じゃないか!! 椎名くんと塚地くんしか協会本部に登録されているスキルオンリーで戦える子がいないんだよ!!」
南雲の言い分はこうである。
「ガチバトルと言う事は、おのずとスキルに注目が集まる。注目されたらまずいじゃないか、逆神流は。数万人に注目されたら粗探ししなくても色々と出ちゃうよ」と、彼はコーヒーを飲みながら叫んだ。
「なんだ、そんな事ですか! 大丈夫ですよ、南雲さん!」
「さ、逆神くん!? そうか、棄権してくれるか!? 1回戦勝った事だし、久坂さんにも怒られない戦績残したしね! うん、この辺りが引き際だよね!!」
「バレないように、上手くやります! 大丈夫です、僕を信じて下さい!!」
「やーまーねぇー! 平井堅のノンフィクション流してぇ! 今すぐに!!」
こののち、チーム莉子は作戦会議に移った。
南雲はコーヒーをがぶ飲みしながら、カフェインタブレットをバリバリ噛んでいる。
そんな彼の元へ思いもよらぬ来訪者がやって来るのは、1時間先のお話。
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