第166話 逆神六駆VSマグマアニマルズ
マグマアニマルの集合体。
面倒なのでマグマアニマルズ。
手加減しているとは言え、六駆のスキルに耐えるとは。
そこで最強の男は考える。
「南雲さん。聞こえてます?」
サーベイランスは依然として稼働良好。
六駆の音声もしっかり拾って、すぐに彼の近くへと飛んでいく。
『もちろんだとも。どうした。君の事だから、もう既に新しい打開策を思い付いているんだろう?』
「いえね、それなんですけど。『
『うん。どうした』
「ほら、食器乾燥機から出したばかりのまだ熱いグラスにですよ。氷とコーラぶち込んだら割れた事がこの間あってですね。ダンジョンってそんなに頑丈にできてるのかなって!」
六駆おじさんらしからぬ、保守的な意見だった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
モニターの向こうの南雲は、論理的に考えた。
既に有栖ダンジョンは逆神六駆の良くないハッスルで内壁、建物で言うところの大黒柱にひびが入っているような状態である。
ダンジョン単位で熱収縮の計算などした事はなかったが、彼はそこはかとなく嫌な予感が親し気に手を振りながら近づいてくる幻影を見た。
「山根くん!」
「もう計算終わりました! 言っちゃいますけど、コーヒーを口に含まなくても?」
「その前振りがもう既にアレなんだよ! 早く言いなさいよ!!」
「南雲さん。自分だっていつもいつもあなたを困らせる回答ばかりする訳じゃないんですよ?」
山根はにっこりと微笑んで、答えた。
「96パーセントの確率で、ダンジョンが崩壊します! 4パーセントに賭けましょう!!」
「くそっ! ちょっと期待した自分が憎い! そんな博打ができるかい!! 100回やったら、96回ダンジョンが崩壊するんだぞ!?」
ダンジョンが崩壊するなんて、前代未聞の不祥事である。
もう廃坑にするダンジョンならいざ知らず、これからその先の異世界の調査に行こうと言う入口を叩き潰すとどうなるか。
久坂監察官にものすごく顔を合わせづらくなる。
それどころか、【
ウォーリーは見つからなくとも、南雲は見つかる。
とは言え、有栖ダンジョンの状況もひっ迫している。
マグマアニマルが本気を出した際に、その場の温度が何度になるのか。
予測がつかない以上、預かっている莉子たち、将来有望な探索員たちを危険にさらす訳にはいかない。
六駆はどうせ無傷で残るだろうから、いっその事、彼以外を一度ダンジョンの外へと【
どうやら南雲の中で逆神六駆はかろうじて人の仲間だったらしい。
色々と思考を巡らせているが、妙案は浮かばない。
こんな時は独りで考えていても埒が明かないことを、彼は長年の研究生活で知っていた。
やはり、状況を共有している者と直に話し合うのが良いだろう。
現場の悪魔さんにお返しします。
◆◇◆◇◆◇◆◇
有栖ダンジョン第19層の温度は、いよいよ100℃を超えようとしていた。
さすがの六駆も、ちょっと蒸し暑くなってきた。
そんなところに、サーベイランスがやって来る。
『逆神くん。非常に申し訳なく情けない話なのだが、こちらでは現状打てる手がない。致し方ないので、一度地上に戻ってくれるか? そこで対応策を協議しよう。君は平気でも、小坂くんたち3人はこの状況が続くとまずいだろう?』
南雲らしい意見だなと六駆は感じた。
その上で、彼は返事をする。
「ええー。また第1層から攻略するんですか!? そんな面倒なことできませんよ!!」
駄々をこねる高校生かな?
そうか、お前は高校生だった。
『そうは言うが、君ぃ! そっちの温度知ってる!? もうほぼ100℃なんだぞ!!』
「南雲さん。僕にいい考えがあります」
南雲は察した。
「これは絶対に頭のおかしい事を言い出す前兆だ」と。
そしてさすがは監察官の中でも知恵者として名高い男なだけのことはある。
大正解だった。
「木原監察官はこのマグマアニマルですっけ? 倒したことがあるんですよね?」
『うん。そうだな。と言うか、木原監察官しか倒したことのない、現世に出たての新種モンスターだからね』
「僕、これから空間転移スキルを試してみようと思うんですよ」
『うん? うん。なんだか話が飛んだな。そして君は相変わらずすごいな。そんな事できるの?』
「多分可能です。疲れますけど。それで、ですよ。御滝ダンジョンってやたらと頑丈に出来てましたよね? 僕、全力でスキル撃っても崩壊しませんでしたし」
『うん? うん。また話が脱線してないか? まあ、御滝ダンジョンはまだ不明な点が多いものの、強度に優れてかなり頑丈に出来ているのは間違いないと思うが』
「でしたら、僕がこのマグマアニマルの群れをですね、御滝ダンジョンのリコスパイダーが巣を作ってた広い第3層に転移させますから」
『うん?』
「そこにですね、木原監察官に【
『うん? うん?』
「後の事は木原監察官にお任せするって言うのはどうですか?」
『君は本当にむちゃくちゃな作戦を立てるな! 頭の中どうなってんの!? でも、その作戦なら割と全部が上手くいきそう!! ホントに君は怖いな!』
結局、南雲は代替案を提示する事ができずに、時間的余裕もないため六駆の超展開理論に反論できなかった。
「じゃあ、転移させまーす!」
『うわぁ。私が木原監察官にお願いしに行くの? もうすっごい嫌だ。あ、おい! 山根くん! やーまーねぇー!! なに勝手に内線繋いでるんだ!? ヤメろ! バカ!!』
どうやら、協会本部の方でどうにかなりそうだと判断した六駆。
彼は戦闘が好きだ。
だが、仲間の身に危険が迫るリスクを背負ってまで戦おうとは思わない。
あと、楽してお金が手に入れば、なおのこと戦おうとは思わない。
「
六駆の作り出した
対象が1か所に固まったままだった点が、今度は六駆に味方をした。
地面に巨大な口が出現して、マグマアニマルたちを残さず飲み込んでいく。
行き先はもちろん、先ほど話していた御滝ダンジョン第3層。
「ああー。これは疲れるなぁー。普段使わない系統のスキルって、どうしてこうも怠いんだろう。もうヤメようかなぁ」
マグマアニマルが8割くらい次元の狭間に埋まっているのに、そんなタイミングでヤメようとするな。
六駆もさすがに弁えていたらしく、少しだけ汗をかきながらも、無事に強制転移スキルを成功させた。
こうなると、後は大人たちの出番である。
お疲れ様、男子高校生。
ご愁傷様、南雲監察官。
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