第148話 魅惑のゴールデンメタルゲル登場 有栖ダンジョン第5層
有栖ダンジョンの攻略は順調。
チーム莉子は第5層までやって来ていた。
道中、モンスターと遭遇するも、誰が相手をするかで取り合いをするほどにパーティーの士気は高い。
その中でも際立つのが、新スキルを得た芽衣である。
「『
彼女は近づかなくても近接戦ができると言う、自分の夢と理想が詰まったスキル、『
「スキルはメンタル勝負」が六駆の信条であるが、それは芽衣にも如実に現れている。
回避スキルの亜種である『
自分が安全マージンを確保しての戦闘とは、これほどまでに面白いのか。
それに気付いた木原芽衣、覚醒の時を迎える。
「はっはっは! 芽衣は飛ばし過ぎないようにね!
「みみっ! なくなったら六駆師匠に補給してもらうです!!」
「にゃははー。南雲さんにヤメろって言われたのにー。悪い子だにゃー」
「でも、協会から支給された
探索員協会公式の
その名も
名前がアレなのは、発案者が木原監察官だからである。
モンスターの核から
だが、探索員からの評判はすこぶる悪い。
何故か。
フレーバーが「生姜焼き味」と「味噌カツ味」しかないためである。
そもそも、探索員は「
「Cランク以下は深追いをしない」とも付記されており、
つまり、協会本部も
「はいはい、じゃあ芽衣、刺すよー」
「みみっ! お願いするです!!」
で、結局はこうなる。
今日も元気に『
そんなサポートに徹している六駆くんの目の色が変わる瞬間がやって来る。
どこのダンジョンにも親戚がいる、あいつが登場するからだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「はっ!? はっ、はっ、はっ!! りりりり、莉子! あ、あれ! あれ!!」
UFOでも見つけたのだろうか。
違う。六駆にとってもっと価値のあるものである。
彼の視線の先には、金色に輝くメタルゲルの姿があった。
「わぁ! 初めて見たよぉ! ゴールデンメタルゲル! やっぱり出るところには出るんだねぇ! ひゃわっ!? な、なに!? 六駆くん!?」
莉子の両肩を乱暴に掴んで、その身を引き寄せる六駆。
落ち着け。見た目は高校生だから俺様キャラで通せばイケるかもしれないが、中身はおじ様キャラなので、下手をすると事案である。
「も、もぉ! 六駆くんってば……! わたしだって、覚悟はしてたけどぉ……!」
莉子さん。お願いだからこれ以上の深い沼に自分から埋まらないで欲しい。
六駆はすぐに「違うよ! あの金色のメタルゲル! お高いんでしょう!?」と本題を切り出す。
莉子は自分が勘違いをしていた事に気付き「もぉぉ!」と怒りに任せて莉子パンチ。
何故かダメージを負う六駆おじさん。
律義に待っていてくれるゴールデンメタルゲル。
「たまにはあたしが説明するにゃー。ゴールデンメタルゲルは、メタルゲルの色違いなんだけど、実はメタルゲルよりも価値は低いんだよねー。金色だから高い! って勘違いする人もいるらしいけど、あの金色は体内に雷を蓄えてるからなんだにゃー」
「なんだ。じゃあ、高くないんですか。ガッカリだな」
「みみっ! 芽衣の記憶によると、外皮1キロで10万円くらいだったと思うです!!」
「みんな、下がっていて! ここは僕が引き受ける!!」
「清々しいほどにお金への欲求が素直だにゃー」
六駆のメタルゲル狩りの歴史は、彼の探索員の歴史と言っても過言ではない。
御滝ダンジョンでは、初対面のメタルゲルを大量に誘爆させて死にたくなった。
さらにその後、同ダンジョンで見事に外皮をゲットした。
日須美ダンジョンではメタルヒトモドキの事を「デカいメタルゲルやで!!」と勘違いした挙句、弄ばれたとか因縁付けてボコボコにした時もあった。
今回、ゴールデンメタルゲルとの遭遇戦。
彼は戦闘において、同じ過ちは犯さない男である。
「炎の系統はまずい。帯電してるなら、誘爆の可能性が高いな。ならば、凍らせるか。しかし、冷凍したら品質が落ちると言う事も考えられる。お刺身だってそうじゃないか。物理で仕留める手もあるが、力加減が分からない。……そうか、外皮さえ無事ならば問題ないのか。それなら、圧し潰すのが最善策か? よし、そうしよう」
ブツブツと独り言で戦闘プランを組み立てる六駆。
その姿は、まだ使命に燃えていた異世界転生
一方、乙女たちは。
「ふぅーん。六駆くん、お金が相手になるとそんなに色々考えるんだぁ。へぇー」
「六駆くんは出会った時からまったくブレずにすごいと思うにゃー」
「師匠の戦いをこの目に焼き付けるです! みみっ!!」
なんだか落ち着いていた。
もう六駆が何をしても驚かない様子で、彼女たちも初々しさを失くしてしまった。
「よっしゃあ! 綺麗に潰れろよぉ! 『
それ、ルベルバック戦争で阿久津にトドメ刺した大技じゃないか。
どうやら、六駆の中での強敵ランキングで阿久津浄汰とゴールデンメタルゲルが非常に近いところにいる模様。
恐らく、どっちも金色に光るからだと思われる。
ズズズズとダンジョンの床が陥没していく。
ゴールデンメタルゲルもさすがの耐久力を見せるが、終わりのない暴力的な重力には勝てず、少しずつ楕円形のフォルムが崩れていく。
さらに
完全にゴールデンメタルゲルは潰れてしまい、綺麗に外皮だけが残った。
そこに嬉しそうに駆け寄る六駆。
金色のそれを持ち上げて「やったぁぁぁぁ!!」と、ダンジョン攻略を完遂させたような勢いで叫ぶ。
厳密には、六駆おじさんはダンジョン攻略完遂しても別に叫ばないのだが、そこはまあ細かい事を言いっこなしな
ゴールデンメタルゲルの外皮をいそいそと自分の採取箱に収納して、ホックホクな六駆おじさん。
乙女たちのところへ戻ると、「いやぁ、厳しい戦いだったよ!!」と感想を述べる。
「良かったね。大好きなお金が手に入ってさっ! 六駆くんなんて知らない!!」
「どうしたの、莉子? 可愛い顔を膨らませて! それも可愛いよ!!」
膨れっ面なのに頬を染める莉子さん。
おっさんの安いお世辞にまで乗ってしまうそのチョロさ。
将来が非常に心配である。
一方で、莉子のハートを揺らした六駆であるが、先ほどのスキルでダンジョンそのものも揺らしていた。
思わぬところから反撃を喰らう事になるのだが、それはもう少し先の事である。
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