第32話 下の階層から妙な雰囲気を感じる 御滝ダンジョン第10層
第10層へ下りて来たチーム莉子。
ついに御滝ダンジョンの階層も2桁に突入。
第1層でウロウロしながら、莉子がツタに捕まったり、六駆がメタルゲルをお金にならない大量虐殺したり、あの頃が少し懐かしくなるくらいにはダンジョン深くまでやって来た。
「『
「うわぁぁん! だって、だってぇ! なんか急に素早いモンスターが増えたんだもん! こんなの1体でも大変なのに、2体相手にするのはわたしには無理ぃ!!」
莉子の言うように、この2階層くらいで、モンスターの強さが格段にアップしている。
六駆もその件については察知しているので、莉子の修行の際に事故が起きないよう、第10層に来てからはスキルでフォロー中。
「うりゃー! 『アイシクルサンダラアロー』!! あ、ダメだ、仕留めきれてない!」
「あ、大丈夫ですよ。『
『
ちなみに初登場の際の相手は父親である。
『
紙の矢だと甘く見る事なかれ。
六駆のレベルになると、軽く放つだけでもダンジョンの壁に鋭く深い穴ができる。
ちなみに紙が必要なので、
六駆は家からチラシを数枚持参している。
リサイクル意識の高いおっさんである。
「うへぇー。あたしの全力の弓スキルがドラッグストアのチラシに負けるのを見ると、六駆くんがヤバいのは分かるけど、なんか複雑だにゃー」
「クララ先輩のスキルもかなり練度が上がってますよ! 初めて見た時よりもずっと! どうですか? 何なら僕の修行を受けてみますか?」
「あ。大丈夫っす!」
「即答……。若い子に拒否られるのは心に刺さるなぁ」
六駆くん、すぐにフラれる。
莉子に対するスパルタモードを見ていたら、だいたいの人間は断るだろう。
一方、
「『
「おお! すごいじゃないか! 僕がよそ見している間に!!」
「ちょっとぉ!? 危ないからサポートしてくれるって話は!?」
「大丈夫! 僕は莉子の成長を信じていたからね! やれると信じていたよ! ええと、プリンアラモード?」
「ギランリザード!! おじさんの記憶力はどうなってるの!? まったくもぉー!!」
莉子は続けてモンスターに突撃していく。
ギランリザードと言えば、莉子が初めての『
体表からは絶えず毒が流れ出しており、物理攻撃はあまり効果がない代わりに、風スキルはバツグンにダメージを与える。
『
「それにしても、本当にモンスターが強くなりましたね。これって最深部が近かったりします?」
実は六駆くん、下の階層から妙な
通常、モンスターから
例外があるすれば、独自進化した新種のモンスターか、何者かの
いずれにしても、あまりいい気配ではない事は確か。
「やー。あたしも攻略完了したことはないからねー。聞いた話だと、ダンジョンによっては最深部への入口をボスが守ってたり、逆に最深部まで下りたのに何もないって事もあったりで、結局攻略し終えるまで分からないみたいなんだよにゃー」
「なるほど。何もないパターンだった場合は、腹立ちまぎれにダンジョン崩壊させても良いですか?」
「一応年長者って
とりあえず、何かがいるのは六駆が察知している。
問題はそれが何なのか、六駆をもってしても分からない点である。
彼は長年の経験から、次の階層に下りる前には相応の準備をしようと考える。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「はぁ、はぁ、ふぃー。3体も倒したよ! どうだぁ!!」
「うんうん。『
第10層もだいたい回り尽くして、いくつかのイドクロアも入手した。
最近六駆がイドクロアに目を輝かせる機会が減って来たのは、彼が「どうもダンジョンの終わりが近そうだな」と感じている事が大きな要因となっている。
なにせ、攻略すれば2千万円。
3人で割っても、1人600万オーバーの大金。
まだ隠居生活資金としては足りないが、当分の間は牛丼を特盛で、さらにトッピングにチーズと温泉卵を付けられるくらいのセレブになれる。
「『
六駆は『
これにより、半径10メートルほどの安全地帯を確保することに成功。
六駆は次の階層に向けて準備を整えるべく、莉子とクララの回復を優先した。
「それじゃあ、失礼しますからね。言っとくけど、このスキルで分かるのは体の情報であって、スリーサイズとかそういうのは分からないからね? 本当だからね? ガチのマジだよ?」
「うーん。この最初に身の潔白を証明しようとする辺りに、そこはかとないおじさん臭がするにゃー」
「ですよねー。電車で両手挙げて乗ってるおじさんみがある!」
年頃の女子の言葉に傷つきながら、六駆は『
莉子はやはりスキルの連発で
「クララ先輩はいつもの『
「ぶぅー。またおじさんの
「言い方! 僕だって好きでやってるんじゃないんだよ!?」
「分かってるけどぉ。ねね、食べたら煌気が回復するみたいなアイテム作れないの!?」
「ふむ」と六駆は少し考えてから答える。
「じいちゃんなら作れるかもだね。僕はスキル使うのが専門で、ものづくりは素人も同然だからなぁ」
「喋りながら普通に太ももにナイフ刺さないでよぉ! でも、そっか。今度おじいちゃんに頼んでみよっと!!」
「じいちゃん、莉子のお願いなら普通に聞くからなぁ。また家計が……」
こうして盤石の準備を整え、第11層へと下りるチーム莉子。
六駆の予感が杞憂であれば良いのだが、残念ながら彼の経験則が間違えるはずもない。
激闘の予感が3人に迫っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます