共通ルート05
「せっかくなんだし、村の皆に挨拶していったら良いのに」
「はい?」
なんで?
「あ、泊ってく? 私たち歓迎するよ♪」
「いやだからオレは......」
少女は何を言ってるんだ。
そんなに簡単に、よそ者を受け入れられるはずがないのに。
ましてや、オレなんかを......。
「そうだ、これから村で歓迎会しよーよ! 皆で食べ物を持ち寄って、一緒にゲームとかで遊ぼっ!」
「ちょっ、ちょっと待てよ! オレは無理やり連れてこられただけで、長居するつもりはない」
こういう時にきちんと否定しておかないと、後々厄介なことになるから。
そう、仕方ないんだ。
「......だから早くその
だけど......少し言いすぎただろうか。
一抹の不安が心の中で燻ぶった。
オレは別に、少女が嫌いなわけでも、傷つけたいわけでもない。
むしろ、逆なのに。
なのに、どうしていいか分からない。
人と関わる方法が分からない。
「だったらなおさら、村に来ればいいのに」
「......へ?」
「大丈夫、皆優しいよ♪」
少女は優しく微笑んでいた。
「ちょっと待て。今の、聞こえてたのか?」
「ううん聞こえてないよ」
嘘つけ。
「ひゅーひゅーひゅー♪」
「なんだそれは」
とりあえず、少女は口笛を吹くのが下手だということは分かった。
そして、嘘をつくのが下手だということも。
「とーにーかーく! 私まだキミのこと何も知らないんだから帰らないでよね! 私は色々教えてあげたのにさ」
「いや教えてあげたって......」
別に大したことは知らない。
少女は村の住人で、名前はそら。
そして、この神社で巫女をしている。
これだけだ。
たったこれだけしか、少女の事を知らない。
......だったら、それで良いじゃないか。
お互い何も知らないまま、一切関わらないままで。
決して交わることのない、ねじれの関係でいれば良い。
だってオレと少女は、根本的に違うのだから......。
「そうだ!!」
「わっ!?」
オレは驚いて飛びのき、そしてその結果、御神木に思いきり肩をぶつけた。
つくづくついてない。
肩をさすりながらオレは少女に聞いた。
「いってぇー......。どうしたんだよ、急に大きな声出して」
「えへへへへへ♪」
少女は、
なんだかすごく......イヤーな笑い方だ。
「......何を企んでるんだ?」
そう聞いたものの、不思議と悪意や敵意は感じられなかった。
例えるなら、何か面白いことを思いついた時のいたずらっ子ような感じ。
それでもやっぱり、それは巫女の姿とまるで合っていなかった。
その
「まだ私、名前教えてもらってない」
「は、はぁ?」
何を言い出すのかと思えば、そんなことか。
全然大したことじゃ......。
「だから、キミのこと色々教えてもらうまで、この装置は返してあげない♪」
「は!?」
前言撤回。めちゃくちゃ大したことだった。
「じょ、冗談だろ? オレはそれが無いと帰れないんだって......」
「ぐへへへへっ♪」
あ、なんかやばそう。
皆は、人の笑い声に「gu」の発音が入ったら気を付けようね。
なんて啓蒙活動をしている場合ではなかったな。
とにかく、アマノハゴロモを人質ならぬ
「ねぇ教えてキミの名前~♪」
だから仕方なく、本当に仕方なく名前だけ名乗ることにした。
「......オレの名前は、
が、慣れないことはするものではないと。
オレはこの時、生まれて初めて思い知った。
「よろしくね! ビンチョウ マグロくん♪」
誰が魚介類だ。
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