第19話 初めの一歩
翌日になってもキルロさんは目覚めませんでした。左肩は動かせないように石膏でガチガチに固めています。起きたらびっくりしそうですね。
点滴を交換していると、キルロさんの足元で丸くなっていたキノが頭をもたげ、大きなあくびを見せました。
「キノ、おはよう。ごはん食べる?」
何だかまだ寝むそう。
それでも、私が病室を出るとキノも一緒について来ました。
食堂でキノの食べられそうな物を身繕い、一緒に食べていきます。
食欲旺盛って感じ。
元気なるのは食べて寝るが基本。これなら安心ですね。
◇◇◇◇
「エレナー! ちょっと来てー!」
「はーい」
キノと一緒に雑用をこなしているとハルさんに呼ばれました。
ハルさんの呼ぶ方へと小走りで向かいます。小
「ハルさん、足は大丈夫なのですか?」
「これでしょう、大袈裟なのよ。大丈夫、大丈夫。外すとモモにねぇ⋯⋯ほら⋯⋯」
「フフフ。怒られる?」
「それよ、それ」
ハルさんが少し大仰に顔をしかめて、私は笑ってしまいました。ハルさんが元気だと確認出来た嬉しさもあります。ハルさんが扉を開け中へ、私も中へ進むとキノもそれに続きました。
扉の中はとても広い空間が広がっています。天井はそこまで高くはないけど、病室を何部屋も潰して
一番大きな
「たくさんいますねぇ⋯⋯喧嘩しないのですか?」
「大怪我するような喧嘩は大丈夫。たまに小さな傷を作っている仔がいるけど、まぁ、ちょっとやんちゃってくらいかな。種類ごとに自然と縄張りが出来ているから、そこを邪魔しない限りは怒る仔はいないわよ」
「この仔達の中でルールが出来ているのですね」
「そうそう、そんな感じ。ほら、
「みんな賢いですね」
「そう、人間なんかよりよっぽど賢いわよ」
ハルさんがいたずらっぽく笑って見せました。ハルさんの
「凄いですね、なんかみんな満足しているみたい。人工的に作った所なのに」
「それはアウロのおかげね。アウロが調べて考えて実行して、また考えて。どうすればストレスフリーになるのか思考錯誤してこの形になったのよ。まぁ、また何か気が付けば改善するんじゃない。それはそうと、エレナは初めに言った言葉覚えている?」
「初めですか?」
「そう。ここで何をしたいって聞いたでしょう」
「あ、はい。覚えています。みんなと友達になりたいって⋯⋯」
「ちゃんと覚えているわね」
「はい」
改めて言われて少し気恥ずかしさを覚えてしまいますが、その思いに変わりはありません。
「それじゃ、エレナ。まずはこの部屋の仔と友達になって頂戴。私もこの足だとたいした事できないし、そろそろいいでしょう。ここを担当してちょうだい。分からない事はどんどん周りの人間に聞きなさい。些細な変化にも目を配りなさい。みんなに仲良くして貰って、いろいろ学びなさい。しばらくは私と一緒に世話をしましょう。ビシバシ指示をだすから、エレナ頑張ってね」
「は、はい、頑張ります!」
「フフフ、そんなに固くならずリラックスしていきましょう。まずは掃除。人と同じ、不衛生が病気を蔓延させてしまう原因になるのでしっかりね。まずは上。オルンモンキーの寝床からやりましょうか。そこのクローゼットに掃除道具が一式入っているわ」
クローゼットを開けると大小の
「まずは、はたきと小さい箒とちりとり。ベルトに差して⋯⋯そう。それじゃあ、上から掃除開始ね。必ず声掛けてから始めるのよ」
「わかりました。ちょっとゴメンね。綺麗にするからどいてくれる」
二本の尾を持つオルンモンキーの小さな顔が怪訝な表情を向けて来ました。頭の先や手足の先だけ黒くて体は鮮やかな黄色を見せています。30Mc程しかない小さな体は愛らしく、群れで生活を行う習性だそうです。一見臆病そうに見えて好奇心旺盛。大きな目をくりくりと私に向けて来ました。
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