第549話 英雄だよ英雄

 そう言いながら東は自分に襲いかかって来る魔獣達を次々と蹴散らしながら歩いて行く。


 向かうは目の前に見える異世界とは到底思えない和風の建物である。


「ビンゴッ! おかしいと思ってたんだぜ。 何しろ異世界に和風の建物があるなんざあまりにも怪し過ぎるってもんだぜ。 ちゃっちゃと倒して少し面倒だがアイツらと合流すっか」

「まさか、貴方は仲間と合流出来るとでも思っているのですか?」

「あ? 死にてぇのか?」


 その建物に入ると先程の魔族が姿を現し思わず笑みが出てしまう。


 更にその後ろにはメイドらしき者達が何十人といるのが見える。


 と、いうことはコイツらは間違いなくこの魔族の仲間であろう。


「後ろの奴らはお前の仲間か?」

「そうですが、それが何か?」

「いや、魔族の仲間なら殺されても文句は言えねぇなぁと思ってな」


 久し振りに人間を、それも何十人も殺せる。


 そう思っただけでイキそうになる。


「殺すのですか?」

「あぁ、殺すさ。 そうだな……ただ殺すのも勿体無いから追いかけまして恐怖に染まった所で捕まえ、手足を折った後に切り飛ばして四肢をもいだ後に死なないように底レベルの回復魔術を使用し、犯してから殺す……想像しただけでヤバイな」

「クズですね」

「あ? 英雄だよ英雄。 ヒーロー。 殺す過程や殺す人種なんて関係ない。 ただ殺してもいい奴を殺せば殺す程俺は英雄になんだよ」


 魔族の女が殺気を飛ばして来るが、殺気を飛ばして来れば来る程ソイツが絶望に染まる時を想像し興奮してしまう。


「じゃあ、鬼ごっこの始まりだ。 簡単に捕まったら面白くねぇからな。 せいぜい足掻けよ」


 そう言うと俺は圧縮した火球を十個作り出すと魔族の女に向けて放つ。


 しかし、その十個の火球は魔族の女に当たる前に、何も無かったかの様に当たる瞬間消失した。


「これではタバコの火種にもなりませんね」

「き、貴様ぁッ!! この俺を馬鹿にしやがってっ! じっくりと時間をかけて殺してやろうと思っていたがやめだっ! 今ここで死ねっ!」


 コイツはこの俺の魔術を馬鹿にしやがった。


 その代償はその命で償うべきであろう。


 そして俺は右腕に炎をやどして爆炎の相手の顔面を全力で殴る。


「………あ?」


 しかし確実に相手の顔面を捉えたにも関わらず俺の右腕には来るはずの衝撃はこず、ズシャリと何かが落ちる音が代わりに響く。

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