第548話 程のいい人質
「では、次はわたくし達の最大火力をお見舞いしてあげますわよっ!」
「クロ様の敵は私達の敵でもあるんです。 だから恨まないで下さいね」
彼女達がそう言うと今まで彼女達を守る様に囲っていた板が宙に浮かび上がったかと思った瞬間、次にわたくし達を囲むとご丁寧に恐らく同じ素材で出来ているであろうと蓋までされる。
閉じ込められた。
そう思ったものの若干違和感を拭う事ができない。
彼女達は先程何と言ったのか。
「ま、まさかっ!?」
「正解ですわ。 閉ざされた空間でわたくし達の最大火力の技をプレゼントしてあげますわよ」
声のする方へ目を向けると見たことない、しかし馴染みのある様な物が一板から突き出している事が目に入る。
その形は銃型の武器、それの先端の様に思えた。
そしてそれは当たりであろう。
逃げ場はない。
そしてこれから起こるであろう事は想像を絶するであろう。その衝撃の逃げ場もない為かなりの圧力が襲う事も想定される。
「綾、今までありがとうございました。 色々ありましたし悔いがない人生と言えば嘘になりますが、最後は貴女と一緒に行けるのならそれも悪くございませんわね」
「ハイエルとハイダークエルフの私達が共に旅し、一緒に最後を迎える……奇妙な関係もこれで最後ですぅ」
そして次の瞬間にはわたくし達の記憶は飛んだ。
「いつまで寝てますのっ!? いい加減起きなさいなっ!!」
「い、痛いですわっ!! 起きますからいちいち頬を叩かないで下さいましっ………い、生きてますわ」
「そのようですねぇー」
「本当は殺しておきたかったくらいですがお姉ちゃんに感謝する事ですわ。貴女達のライフがゼロになった瞬間に体力の一割を回復させる魔術をかけておいたんですの。そのまま目覚めなければ良かったですのに」
生きていた。
手足は縛られ、魔術は何らかの方法で封じられており抵抗どころか身動きすら厳しい。
そして状況としてはわたくし達は捕虜、又は程のいい人質とされるであろう。
それでも、生きていた喜びを噛みしめ、涙が視線と頬を伝って行くのであった。
◆
「チッ、水樹のヤロウいちいちメンドクセェ事をしやがって。 どうやって高島さん達と合流すりゃぁいいんだよったく」
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