第542話 覚悟が確かに見えた
しかしそんな水樹など気付かないという風を装い一緒に帰るよう手を差し伸べ言葉をかけるが、その言葉を言い終える瞬間食い気味で水樹が言葉を発し、差し伸べた手は払いのけられてしまう。
その行動に洗脳の可能性も視野へと入れておき、面倒な事になったと心の中で愚痴る。
「何を見たと言うのかい?」
「……あなた達がここの住民、ボナ様を含めて本気で殺そうと攻撃をしている所を」
「しかし、手をかけようとした者達は皆魔族だ。 そこの目の前にいるボナとか言う娘含めて。 それが何か問題でもあると水樹君は言うのか?」
そして水樹は我々をまるで人殺しの様な目を向けて言い放つ。
魔族を殺そうとしただろう?と
あの水樹が魔族を庇い我々に敵意を向けるという事に洗脳の深さを感じ取る。
そしてそれは俺だけではなく当然仲間達も感じ取っており様々な呪いや封印などを解除するのを得意とする楠瀬綾が即座に反応し、水樹の洗脳を解除しようとする。
しかし当の水樹に全く変化は見られず、未だその目には敵意が篭っている。
「無駄ですよ、綾さん。私は洗脳など受けていないのですから。 自分の目で見て感じて今の自分がいるのです。 そして今、高島さんの姿を見て分かりました。 何故私が勇者というステータスがあるか、何故高島さんに英雄というステータスがあるのかを」
「ほう、それは興味深い事を言う。 その物言いはまるで勇者と英雄は似て非なる者であると言っているみたいではないか」
「はい、そう言っているのです。 そして私はそれに気付く事が出来ました。 気付いてしまったからこそ私は今高島さんの敵側として明確に居るのです」
俺の問いかけに、そうであると言い切る水樹。
その目には地球で見た頃には無かった覚悟が確かに見えた気がした。
今現在の水樹の状態が状態異常、いわゆる洗脳の類をかけられていない事が楠瀬のお陰で分かった以上、水樹を説得する事が非常に難しい事は理解出来た。
しかしながら今の水樹の感情は一時的なものであり魔族に囲まれた環境故の自己防衛に近いものであると思われる。
そう頭では理解出来てはいてもあの水樹の表情と目を見ると本当に理解出来ているのだろうかと思ってしまいそうになる。
「それで、どう違うというんだ?」
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