第541話 敵意のような感情

 それと同時に我々が五百名ものハイダークエルフまたはダークエルフの女性達に囲まれている事に気付く。


 一体いつの間にと考えてしまう。


 そもそも彼女達が現れた瞬間魔術の余波すら感じなかったのだ。


 その者達の額には全て隷属の証である印が印されている事から考えたくもないが全員魔族側の奴隷であると考えるのが妥当であろう。


 彼女達を奴隷から救ってやりたいという思いもあるが、彼女達には悪いがここは自分と部下の生存が第一として考える。


「ご苦労様です。では、この娘を安全な場所に連れて行って下さい」

「かしこまりました。 残った者達はどうしましょうか? この族を縛り上げましょうか?」

「その必要はありません。 残った者達は夜に備えて毛布や食事の手配、また避難民の誘導などを行なって下さい」

「かしこまりました。 クロ・フリート様の名に誓って」


 そしてまたダークエルフ達はボナから的確な指示を受けて魔術反応すら感じない未知の方法でこの場から一斉に消え去って行く。


「では、我が主人であるクロ・フリート様が支配する国の民達の避難が終わったという事ですので……これで心置きなく戦えますね」


 そういうとボナから発せられる空気が一気にち冷たくなり俺の感が彼女を危険であると警告を激しく鳴らし出す。


 しかし、単純計算で此方は自分含め六名であり向こうはたったの二名であるため有利である──などという実戦経験の浅い魔術師の様なうわ言を言うつもりは無いのだが、それでも俺には頼もしい仲間が五名もいるのである。


「ですが、ここで戦いこの美しい街を破壊されては元も子もありませんから存分に戦える場所へ移動すると致しましょう。 ではミズキ、頼みましたよ」


 そしてボナはここでは無い別の場所へ移動するように言うとミズキという者を呼ぶ。


 すると一体どこからどういう方法で現れたのか先程のダークエルフ同様に水樹が我々の前に現れて来た。


「「水樹っ!!」」


 その懐かしい姿を見て皆一斉にに水樹へと声をかける。


 しかし当の水樹からは再会を喜ぶなどといった感情は感じず、逆に薄っすらと敵意の様な感情を感じ取れて来る。


「お久しぶりです、高島さん……それにみんなも」

「あぁ、久しぶりだな。 みんなでお前を迎えに来た。 一緒に帰ろう」

「私は見てました」

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