第533話 普段はクールビューティー
◆
「なあサラ」
「何ですか? クロ」
「一応皆んなには今日一日俺は仕事として学園に出向く訳であってここが故郷であるサラ達には実家に戻り久し振りの家族団らんを過ごして来る様に言ったんだが?」
「ええ、言いましたけど?」
ここベルトホルンに来る際実家がある者は実家へ、無いものは俺の元以外で自由行動を支持していた筈なのだが全員が解散した後何食わぬ顔でサラが俺の左隣へピトとくっ付き腕を絡めてくる。
その事を指摘すると「何か問題でも?」とコテンとあざとく上目遣いながら首をコテンと傾げて来やがるではないか。
普段はクールビューティーなサラにされると思わず可愛いと思ってしまうのだがそこはぐっと気持ちを抑える。
「ですからクロの言いつけをしっかりと守る為に母親に会いに来ているのではないですか。あぁ、大好きなお母様に早く会いたいなー」
「最後物凄い棒読みだったぞ……ったく、親を出されたら断れないだろ」
サラは大袈裟に母親に早く会いたいと言うわりにその言葉は大根もびっくりする程の棒読みであった。
そんなサラを見て以前サラとその母親であるアンナの関係は思春期を拗らせてしまった娘とその母親と言った関係であったと思うがその事については聞かない方が無難であろう。
しかしながら、この学園だけは前世の記憶に似た風景である為ついつい向こうの世界の事を思い出してしまう。
それにより懐かしさと共に罪悪感が胸を締め付けてくる。
しかしこの感情は決して慣れてはいけない感情であり慣れたくないとも思っている。
「俺が背負うべき罪なのだろうな」
「……前の奥さんと子供の事を考えてた? 忘れられない事も分かるし、忘れて欲しくないとも思ってる。だから……」
そんな感傷に浸っているとサラにはお見通しだったらしく心配そうな顔をして話しかけてくる。
しかしその表情は真剣な表情へと変わりクロを射抜く。
その真剣さに緊張してしまう程である。
「だから、アナタとの赤ちゃんが欲しい。前の奥さんと娘さんの代わりと言う訳じゃないけど、その、あの、な、なんて言ったらいいか分からないのだけれど………」
「ありがとな。お前の言いたい事は何となく分かるよ。でも、お前との間に子供を作る時はお前の事だけを考えて作りたいと思っている。幸せな家庭を作ろう」
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