第512話それは無い


 彼は魔力量こそ凄まじいがそれに色をつけ様々に変化させる事が出来なかった。


 故に彼はその魔力を放出しその衝撃を利用した攻撃方法を考え付き今に至る。


 更に彼を彼足らしめるものはその無色、純粋なる魔力である。


 色さえつけば敵対色で抵抗、炎ならば水で対抗出来るのだが色が無いためそれが出来ない。


 生まれてこのかた色をつける事が出来なかった彼だからこそ手にした純粋無垢な魔力による暴力であろう。


 その他にもそう言った化け物と呼べるもの達が押し寄せる魔獣の氾濫を食い止めているにも関わらず、以前状況は平行線を辿っていた。


「これを頼む」

「………」


 そんな状況に嫌な予感がした俺は影を呼び寄せると一つのメモを渡し、影は何事も無かったかの如く音も無く掻き消えて行く。




◇◆◆◇



 あれから三日が経った。


 しかしながら魔獣の数は減りこそすれその分強力な魔獣が出現し始めている。


 ここまでの大氾濫は過去六五年前の旧イベンツルク大氾濫以来であろう。


 旧イベンツルクはその役四日間もの間氾濫が収まらず、結果国そのものが無くなり、無事であった街や村は近隣諸国に吸収されていった。


 その時の大氾濫と比べ今回の反乱はそれと同等、むしろ現在出現してくる魔獣の種類及び強さから考えると規模こそ狭いが災害レベルでいえば超えているといわれてもおかしくないレベルである。


 それだけにブラッド・デイモンの計画性と十年二十年レベルではなくそれこそ数百年も前からの計画であることが伺える。


 それでも我が王国が何とか持ちこたえているのは自分含めた七色のおかげであろう。


 今回ばかりは赤に感謝してやらんこともないと思う。


 毛ほどではあるが。


「ま、魔力がやばいわ」

「泣き言言っても何も変わらんぞ。むしろ精神的にキツくなるだけだ」

「コンラッドがキスしてくれると魔力が全回復すると思うんだけど」

「それは無い」


 それでも三日間もの間戦いっぱなしであるためいくら七色といえど疲れが蓄積してきているのが見るからに分る。


 それでもステファにーのようにまだ冗談が言える元気があるのだからまだ大丈夫であると信じたい。


「冗談じゃないんだけど。 間違いなく全回復する。 私の疲労した心と体も全回復しちゃうレベル」

「むしろ思い残す事がなくなり死ぬんじゃないのか?」

「コンラッドとセックスするまで死んでも死にきれないけど今ここで赤のお前は殺して欠番にしてあげる」

「相変わらず仲がいいなお前ら」

「は? 何言ってんの唐変木」

「さすが青だぜっ! 前からお前は見る目あると思っていたんだよっ!」

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