第505話奪うという行為


 その者が基本的に犯罪者になるのだが中には卵は割りたいから割るがその先どうなるか見据える事が出来るからこそ床を拭く者、あらかじめ割って良い物を選ぶ者、又は割って良い時に割るものが出てくる。


 前者は簡単に罪を裁く事が出来るが後者は証拠を見つけなければそれが出来ない、又は裁く事すらできない。


 そしてこのドルク・ルドルフは裁く事が出来ない部類であった。


 実に胸糞悪い話である。


 しかも犯罪者奴隷という所も粗末に終えない。


「しかし、生き辛くなったな。 一体どうしたっていきなり正義の味方になったって言うんだ?あの王様はよ」

「生きやすくなったの間違いでは無いのか」

「はっはっは、相変わらずおかしな事を言うやつだぜっ! 考えても見ろ。今のままじゃ良い子ちゃんを演じなきゃ即豚箱行きだ。それにそのうち奴隷制度も廃止されるんじゃねーのか?」

「何が言いたい? 犯罪者に厳しいのなら良い事では無いか」

「分かってねーな。 完璧な人間なんてこの世には存在しない。 みんな何かしら一度は悪い事をする生き物なんだよ」


 ドルク・ルドルフの言葉にコンラッドは言い返す事が出来ない。


 正しいき行いをしろ、悪い事はやってはいけないと小さき頃から親が子に口酸っぱく教えるのは、人間正しき行いよりも悪い行いの方をやってしまう生き物だと言う事の裏返しでもあろう。


 特に「奪う」という行いは誰しも一度はやった事はあるだろう。


 罪になる様な事はしなくとも兄弟や親、親類から大小価値種類関係無く何かしら一回は何かを奪うという行為を行った事があるはずである。


 それは親の居ぬ間に勝手に卵を焼いて食べたという行為かもしれない。


 それは親の居ぬ間に夏、勝手に氷の魔石を使い冷気をやしなった行為かも知れない。


 この奪うと言う悪事が恐ろしいのは何の努力も対価も払わず簡単にあらゆる物が手に入る事である。


 そしてその行為は小さき子供でも簡単にあらゆる物が手に入るからこそ敷居は低く中毒性は高い。


 故に小さき子供が最初に覚える悪事とも言えよう。


 そしてそれは子供故に感情のまま善悪関係なしでしている事が多く、故にドルク・ルドルフの言葉は大きい。


「そうだな……だからこそブラッド・デイモン様は罪を明確に区別し、その罪の重さにより細かく細分化を図るそうだ」

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