第465話

 しかしウィンディーネの放った魔術はそれが握っている真っ赤に輝く大剣に防がれ地面を濡らすだけに終わる。


 それは言いたいことを言うとクロの元へ駆けていく。


 そしてそれを追いかけようとした時ウィンディーネの前に一人の男性が現れ道を塞ぐ。


「……退きなさい」

「どかないよ。だって今回の俺の仕事は君の足止め。倒す事は厳しくても足止めくらいなら出来るからね」



◇◆◆◇



「痛っ……」


 あの一瞬、クロが油断したその時を狙いすましたかの様な一撃。


 その一撃はクロの防御系オートスキル三枚を容易く突き破り、更に無視できないダメージまで負わせていた。


「化け物かよ……ったく」


「化物だなんて随分と物言いじゃないか、ダーリン」

「誰がダーリンだ誰が」


 悪態をつきながらもクロは脇腹から来る激痛に顔を歪ませながら立ち上がる。


 この痛みは間違いなく肋骨が折れているだろう。


 その痛みにより顔には脂汗が滲み、呼吸音にも雑音ば混じる。


 はっきり言って立つだけでも、いや呼吸すら激痛が走りどうにかなりそうである。

 

 アニメや漫画で「肋骨の一本か二本は持ってかれたか」と言う主人公達はホントに肋骨折れてんのかね。


 痛すぎてやばいんだが。


 しかしその痛みも装備を魔王然としたフル装備に変更すると元から装備についているオートスキルであるリジェネにより徐々に和らいでいく。


「では伴侶などはどうだ? まあ、アタイに勝てたらだけどね。その呼び名は」

「初対面でいきなり横腹に蹴りを入れてくる奴を誰が娶るものか」

「ほう? この身体を好きにできるのだぞ?」

「………」


 どうだと言わんばかりに身体を見せつけ「んん? どうだい?」と問うて来る彼女は確かに魅力的であり思はずゴクリと唾を飲んでしまう。


 それを肯定と受け取ったとか「なら始めようか」と嬉しそうに口を歪め舌なめずりをする彼女。


 その容姿はオレンジ色に輝く長髪を見せつけるかの如くなびかせ、彼女が息をする度に胸に実った果実は揺れる。


 足は長く身長はクロより少し高いくらいか? しかし高すぎるわけでも無くそれが上手い具合に彼女の魅力を高めている。


 そしてそれらを見せつけるような生地の少ない、しかしいやらしくない程度の服を身に纏いそれはまるで一つの完成形であるかのようである。


 しかし彼女の頭には二本の真っ赤な角、背中には真っ赤な翼、尻には真っ赤な鱗がつややかな光を輝かせながらゆらりゆらりと左右に揺れていた。

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