第463話愛の結晶ですっ!

 日本での一般的価値観が未だ強いクロからすれば犬に似た姿、そして会話を出来る物を殺すという事に強い罪悪感を感じ、敵であるにも関わらず他に殺す以外の方法は無かったのかとタラレバを考えていた時ウィンディーネがススススと近寄って来ると賞賛の言葉を投げかけて来る。


「それでですねクロ様……あのですね……お願いがあるのですが……」


 普段はクールビューティーな雰囲気を出しているウィンディーネが今、甘えた声を出してまるでスーパーでお菓子をねだる時の娘の様な雰囲気を出して来る。


 そのギャップに思わず可愛いと思ってしまうのだがそこはグッと堪え、なんとか耐える。


「何だ? 俺が出来る範囲でなら、そのお願いを聞き入れるぞ?」

「そ、そうですかっ!? で、ではですね! アーシェ様と戦った時にメールではありますが「何でも一つ叶えてあげる」というのを今行使いたしますわっ!!」


 いつもなんだかんだで頑張ってくれているウィンディーネの為に願い事の一つや二つなど容易い事であると考え、ウィンディーネの願い事を出来る範囲で答えてやりたいという旨を伝えるとウィンディーネは顔をキラキラと輝かせながらズズいと迫って来る。


 その間ウィンディーネの胸の柔らかさを堪能する事は当然忘れない。


 と、共にウィンディーネがこれ程喜ぶ姿を見て流石にウィンディーネだけ願い事を聞き入れるのではなくセラやルシファーの願い事を聞き入れないとなと思う。


 しかしながら、ウィンディーネと交わしたあの約束もとい悪魔の取引を今ここで使われる事にある種の恐怖を感じるのもまた事実である。


 あの事実を俺の婚約者達ひいてはアーシェに知られる訳にはいかない。

そう、いかないのだ。


「で、では……クロ様との……クロ・フリート様と私ウィンディーネの血を受け継いだ子供を下さいましっ!!」

「………へ? こ、子供?」

「そうです! 二人の愛の結晶でもある子供ですっ!」

「ウィンディーネとお、俺の?」

「はいっ! 私とクロ様との間にです! 愛の結晶ですっ!!」


 ははは……何を言っているのかな? この娘は?


 これはあれかな? 一回だけと浮気を誘い、乗ってきたら今度はそれをネタに更に脅すという恐怖のわらしべ長者の方程式が今ここに完成されたという事であろうか?

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