第385話たかが骨如き
「ミカエル……そこの骸骨に攻撃しなさい」
スーワラ聖教国側の湧き上がる歓声とは対照的に、召喚した天使に攻撃を宣言したコーネリアは苦虫を噛み潰したかの様な表情をしていた。
その最大の原因はコーネリアが召喚魔術を使いたくなかった理由に繋がり、その理由とは召喚した天使は指示を出さなければ動かないと言う点である。
自らが敬愛してやまない者をまるで丁稚の様に扱う事にコーネリアは不快感かつ罪悪感に襲われ、それら感情を全て怒りに変え天使を召喚しなければならない状況にしたクロに全て向ける。
「たかが骨如きでこの私に牙を剥いた事を後悔させてやる」
そしてコーネリアの指示通りクロが召喚した彷徨う骸骨を破壊した大天使ミカエルはそのままコーネリアの元に戻り、破壊された彷徨う骸骨はクロにより何事も無かったかの様に再生する。
その光景にコーネリアは苛立ちを隠す素振りも見せず舌打ちを打つ。
天使による攻撃で成仏しないアンデットモンスターなど存在していい筈が無く、ましてや破壊されてなお生にしがみつこうと蘇る様は神に唾を吐く行為にしか見えないとコーネリアは思う。
「闇の召喚魔術段位一【深淵に住むネズミ】」
「光の召喚魔術段位三【権天使ハミエル】どうやら貴様の召喚魔術は所詮ハッタリだったみたいだな。ネズミなんか召喚して実に惨めなものだ」
コーネリアはクロが召喚したモンスターがただのネズミだと知ると先程まで『例え天使を召喚しても勝てないのでは』という考えが無くなり不安や恐怖などといった感情から解放されて急に饒舌になる。
「ネズミだからとバカにする奴がいるとは実に滑稽だな」
「事実そうではないか。たかがネズミに何が出来る」
「分かって無いみたいだがこの世界において命は種や姿形関係なく総じて平等である。そう、ネズミだろうと骸骨だろうと天使だろうとそこに命あれば等しく平等とされる」
コーネリアはクロが何を言っているのか分からなかった。
天使と骸骨やネズミの命が平等である筈がないし、あってはならない。
それはこの世界に生きる者の常識なのでは無いのか?
では何を持ってクロは平等と答えたのか。
それがいったい何を指しているのか何となく想像できた時、たった一匹しかし召喚してない筈のネズミがいつの間にか六匹に増えているのに気付く。
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