第383話新婚夫婦の様な甘い空気

「ありがとう。彼女達の為にも勝たないとな」


 別段だからと言ってクロが負ける確率が高まる訳でもなく、婚約者や弟子達の為にも目の前で無様に負けれないとより一層気合いが入るというものだ。


 その為心配気な表情をしている椿の頭を少し乱暴に撫でてあげながら感謝の言葉を言う。


 乱暴に頭を撫でられ髪が乱れてしまう椿なのだがその顔は何処か嬉しそうである。


「さて、そろそろ始めようか?」

「呑気に下女と会話している間に殺してやろうと思ったのだが、成る程……闘技場とは良く言ったものだ。『相手の準備が整っておりません』と警告が出て来て貴様を攻撃する事が出来ないとは忌々しい限りだ」

「すみませんね、準備が遅れて」


 闘技場中央でお互い笑顔で会話をするその様は戦争中の敵国の長同士だとは到底思えないであろう。


 まるで新婚夫婦の様な甘い空気すら漂って来そうなほどの空気である。


 そんな二人の空気など関係ないとばかりに戦闘開始のホログラミングとアナウンスによるカウントダウンが開始され、試合開始のアラームが闘技場全体に鳴り響く。


「闇の召喚魔術段位一【彷徨う骸骨】」

「火の魔術段位一 【火球】」

「闇魔力コストを一消費し彷徨う骸骨を再生」


 先に魔術を発動させたのはクロで闘技場にカタカタと音を鳴らしながら骸骨が一体現れる。


 そしてその骸骨対しコーネリアは火球を放ち破壊するも骸骨は即座に再生されて行く。


「闇の召喚魔術段位一【彷徨う骸骨】代替えコストとして闇魔力コスト一消費」


 そしてその隙にクロは更に彷徨う骸骨を唱えもう一体の骸骨が闘技場に現れる。


 違うのは先程の骸骨と違い錆びた剣と盾を装備しているという事である。


「そんな雑魚モンスーの代表格であるスケルトンを召喚して何になる?しかも雑魚モンスーにボロボロの装備持たせた所で雑魚は所詮雑魚だろう。火の魔術段位三【双火球】」

「低コストで召喚でき再生能力があり、更に代替えコストまで付いているから余裕がある時は強化して召喚できる時点でそこそこ強いと思うんだがな……闇の魔力コスト一消費で彷徨う骸骨を再生、更に闇の魔術段位三【骨の壁】を召喚」


 コーネリアは先程放った魔術である火球と同じ威力の火球を二つ同時に放てる事が出来る魔術、双火球を放ち彷徨う骸骨に放つのだが、武器を装備した方の彷徨う骸骨は焼き倒す事が出来なかった上に先程同様に焼き倒せた彷徨う骸骨はクロにより即座に再生される。

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