第382話理解する

「…………間違いない様だな」


 コーネリアは開口一番人を殺せそうな視線をクロに向け、この見たこともない状況の説明をクロ問いかける。


 そしてクロの説明を聞いたコーネリアは敵に情報を惜しみなく教えるクロを見下しながら無詠唱で火の魔術段位一【火の粉】を発動し、先程まで使えなくなっていた魔術が使える事を確認するとクロが言っている事は間違っていないと判断する。


 そして魔術が使用できると知ったコーネリアは次にゆっくりと辺りを見渡して行く。


 それにより現在コーネリアは一辺の長さが百メートル程の正方形の石畳の中央の上に立っており、その外にクロ・フリートのメイド達が、そして更にその奥、まるで観客席の様になっている場所には自ら選りすぐったスーワラ聖教国の騎士達がコーネリアのいる場所に行こうと躍起になっている姿が見える。


 しかし彼らは決してこの場所に来る事は出来ず 、更に彼等が放つ魔術までも遮断されているのがここからでも伺える事ができる。


 そして理解する。


 この場所はクロ・フリートが言っていた様に、まさに一騎打ちする為の魔術なのだと。


 それと同時に怒りも湧いてくる。


 コーネリアを敵陣のど真ん中に転移させた上に魔術をロックした圧倒的優位な立場を捨て、対等の状況にわざわざ変えたのである。


 これ程の侮辱はコーネリアの記憶では今回が初めてである。


「お師匠様ー!!」

「頑張ってくださいっ!!」

「今回も勉強させて頂きますわっ!?」


 そんな、ある意味で緊迫した空気の中、突如クロを応援する声が聞こえて来る。


 そしてその声がした方向にクロが目線を向けると声の主であるレニア、エリシア、ユーコの他にサラやセラ達だけではなく今現在館にいた者達全員がこの場に来ているみたいである。


 どうやら闘技場を発動した時相手の兵士や騎士だけでなくこちら側の人間も椿は呼び寄せてくれたらしい。


 そして相手陣営と違いクロ側の陣営は、負けると思っていない者、勝ってほしい、負けてほしい者、スーワラ正教国の王と相打ちしてほしい者などこちらに視線を向けるその表情は様々である。


「観客席に敵国の陣営だけでは少々寂しいのでこちらの陣営も呼ばせて頂きました」


 レニア達に軽く手を振りながらクロ側の観客席にいる者達を観察していると椿が「余計な事をしましたでしょうか?」と言った表情で聞いて来る。


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