第380話パスポート
その事実に最早特攻する者も消え、それを肌で感じ取ったメイドが「戦意も戦力も無い腰抜け達め」と吐く。
その言葉にスーワラ聖教国軍の精鋭としてのプライドが怒りを生み出すのだが、それを上回る恐怖が攻撃するという選択肢を選ばせない。
最早彼らのプライドは、日々市民や下階級への傲慢な態度を取っているもの程ズタズタにされ、耐え難き屈辱を味わっているだろう。
そして目の前のメイドは不敬も不敬、聖教王であるコーネリア・ジャドソンが先程まで座っていた玉座に事もあろうに座ったのである。
「………ふん、つまらん眺めだ」
そして件のメイドは足を組み、メイド長である椿が聞けば間違いなく拳骨が一発は飛ぶであろう口調で辺りを見渡す。
そして、つい先程までそこに座っていた聖教王であるコーネリア・ジャドソンは現在眼帯メイドと入れ替わる様にクロの目の前に現れていた。
「貴女はかのスーワラ聖教国の王、コーネリア・ジャドソン聖教王であると思われますが、パスポートはお持ちですか?」
「ぱ……パスポート?」
そして転移させられたコーネリアはいきなの転移で頭が追いつかなかったのか敵国のメイドとその王であるクロがいる場所をゆっくりと見渡し、目の前に広がる景色に呆けてしまった様である。
そんなコーネリアを椿が出迎え軽くお辞儀、そしてパスポートの有無を問いかける。
しかしこの世界にパスポートなどという物は無く、それが意味する物が何なのか見当もつかないコーネリアはこの危機的状況にも関わらず緊張感のかけらもない声と表情で鸚鵡返しで聞き返してしまう。
「なるほど、パスポートはお持ちではないと。でしたら入国出来ませんので速やかに自国へと引き返して下さい………と言いたい所ですがそうもいかないのが戦争です。水と光の混合魔術段位三【魔力回路遮断】」
「……………ば、バカな………貴様この私に何をした!? 言え!! 早く言わんっ、ぐぅうっ!」
そして依然呆けているコーネリアの肩に椿が手を置き水と光の混合魔術段位三の魔術である【魔術回路遮断】を発動させる。
この魔術は発動条件に相手との接触という極めて難易度の高い発動条件がある変わりに発動すれば相手は魔術の使用及び魔力の消費を出来なくさせてしまう魔術である。
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