第337話月一、二回で十分だ
「じゃあ、夕食の準備でもしようか」
クロの号令と共に皆食器を運んだりと夕食の準備を始める。
備え付けではあるものの、まさか自分がここまで大きなテーブルを使う時が来るとは夢にも思っていなかったクロは未だにこの大きな木製のテーブルに食器が並べられて行く様を見ると感慨深いものを感じると同時にこの大きなテーブルを使える日常を守って行く事を心に誓う。
「いただきます」
クロの号令の後に九名の「いただきます」という声が重なる。
若干一名言い慣れていないのかワンテンポ遅れて「いただきます……?」と言っていたのだが、この世界では食事の前に「いただきます」と言う事が無いので仕方ない事だろう。
と、いうかこの世界にはこの世界の作法があるのだからわざわざ俺に倣って真似する必要は無いと思うんだが……。
とは思うものの本人達がそれで良いならそれで良いのだろう。わざわざ指摘する事のは藪蛇の可能性もある為水をさす必要も無いだろう。
「しかし、ミイアの作った川魚の塩焼きもメアが作ったジャガイモの煮物料理もうまいな」
「愛情いっぱい込めて焼きましたので! そのまま私を食べて貰ってもいいですよ!」
「あ、ありがとう……」
普通に美味しいと思えたので素直に褒めてやると反応は違えどミイアもメアもどこか誇らしげに嬉しがっているのでそれがまた微笑ましく、そして可愛らしく思う。
小さな事でも素直に褒めて上げるというのは前の世界で得た技術なのだが異世界でもそれは通用するらしい。
『女性という生き物は言葉にしてもらわないと分からないし分かったとしても確証がもてず不安なの。 だから言葉にしてね?』
というお願いという名の教育の賜物でもあるのだが、それもまた良い思い出になる日がいつか来るのだろうか?
それはそうと、歳を取るたびに焼き魚や煮物などを美味いと思い始めているあたり若い頃の自分は思いもしなかったと少し面白くもどこか懐かしく思う。
若い頃はそれこそ味と油が濃い料理が好きで毎日食べていても問題無く、焼き魚や煮魚や煮物料理などはむしろ嫌いな部類に入っていたのだが、それが今では逆転してしまい味と油が濃い料理は月一、二回で十分だと思う。
「今思い出したのだが、ストレージに羊肉を焼いた物を入れて忘れてたみたいだ。 ついでだから一緒に食べよう」
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