第326話決意が決まれば後は実行あるのみ

 だからだろうか。普段ならこんな恥ずかしい事など絶対言えないのだが、クロの胸元に顔を埋めたまま口にする。


 先程のような遠回しな告白ではなく今回はほぼ告白と言って良いだろう。


 その為クロの返事を待つだけで期待と不安と緊張で心臓が爆発するのではないか?というほど激しく鼓動を刻み、一秒一秒が物凄く遅く感じる。


「こんな所で私の親友と抱き合って何してるんですか? ああ、ナニしてるのですかクロ」

「違っ! 誤解だっ! ちょっ、やめ、引きずらなくても立って歩けるから!!」


 勇気を振り絞っていざ告白しようとしたその時、幸か不幸か親友であるサラが鬼の形相で現れクロを引きずりながら何処かへ連れ去ろうとする。


 そしてクロとサラが見えなくなった瞬間、私は腰が抜けぺたんと地面に座り込んでしまう。


「クロ・フリートの婚約者……上等じゃねーか。 自分の気持ちが疑いようが無いほど分かったんだ。私もその婚約者とやらになってやる」


 決意が決まれば後は実行あるのみである。



◇◆◆◇



「ヒュドラが出たぞ!!」


 その一声で砦と砦の内側にある街は騒然としだすも慌てて逃げようとする者はいなかった。


 ヒュドラとは九つの頭を持つ竜種であり吐くブレスは毒霧である為炎を吐く一般的な竜種よりもタチが悪い。


 強さはワイバーンやドレイクの親よりも強く、身体能力は一般的な竜種よりも低いのだが毒霧のブレスにより難易度は時と場合により一般的な竜種を超える場合もある。


 その為難易度はSS+でありもはや災害級である。


 そんなヒュドラが現れたにもかかわらず一般人ですらパニックが起きないのは、一つにそんな事で取り乱していてはキリがないため砦で商売ないし生活などやっていけないのと、もしもの時に常に逃げる準備はしている為である。


 そしてもう一つはグリフォンの親をテイムできる冒険者とこの砦の護女神フレイム・フィアンマがいるお陰でもある。


 その為この砦に配置されている兵士や冒険者達は緊張感こそ表情に出すものの慌てたりテンパってる者もおらず皆テキパキと自分がするべき事を速やかに実行する。


 その洗練された動きに感心しながらクロは隣でクロの腕に絡めてべったりとくっ付いているサラに質問する。

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