第302話この国らしい終わり方

「長い。 一行で纏めろ。 あと私は身も心もクロ・フリート様の物だ。 覚えておけ」


 そして今日も懲りずに隣領主のバカ息子ジェーン・ドゥ・ボーガンはクロ・フリートの家臣に恐る事なく声をかけ、その結果いつもの様に彼の鳩尾に強烈な一撃がめり込む。


 その光景も日常の一コマになりつつあるのだが、この様に日常と言える日々を過ごせている場所はここノクタスぐらいだろう。


 というのもこのグルドニア王国の国王、ドミニク・エドワーズ国王の一人娘であられるスフィア・エドワーズ姫が謀反を起こし、この国の国力の象徴とも言えるグルドニア城をテイムしたであろう黒竜で落とし、さらに実の父親の背に傷を負わせたのである。


 更にこの状況を隣国スーワラ聖教国が見逃す訳がなくあの事件から一ヶ月後に進軍を始めて来ると侵略をしながらグルドニア王都を包囲。


 しかし王都にはクロ・フリートの配下セバスチャンが滞在しており、彼が王都全体に魔術により障壁を展開しスーワラ聖教国軍の侵略を阻止、更に単騎で敵陣に乗り込み制圧させて見せたのである。


 更にこの事が決定打となりグルドニア王国は名前や領土こそ変わらないもののセバスチャンが仮の国王となり事実上クロ・フリートによる侵略を許した事になる。


 既に王国は国を維持するだけの力は無く、更にセバスチャンの圧倒的な武力を前に為すすべも無かった上にバックにはあのアーシェ・ヘルミオネ倒したクロ・フリートがいるとなれば侵略されるしか道は無かったといえよう。


 今まで力こそ全てという考えのもと力で他国を飲み込んで大国となったこの国がさらなる力に屈するという、この国らしい終わり方であろう。


 そしてセバスチャンが実施した様々な国営方法や黒い金及びそれを啜る蛆虫の排除をした結果市民の、特に搾取される側の市民の好感度は鰻登りで留まることを未だ知らない。


 その余波がここノクタスを首都とするという形で直撃する。


「あいつも懲りないわね。 雇った護衛冒険者傭兵ならず者全て嗾しかけイルミナさんを襲わせ拉致しようとして全滅させられたばかりじゃない」

「ここまで来るといっそ清々しいね」


 そしてこのノクタスは首都になるとは言え田舎故の立地条件の悪さがある為移住者や商人がいきなり集まるわけでも無く、以前の様な日常を取り戻しつつある。

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