第298話何処までも腑抜けた野郎
砦の内側にある広場の中心にフレイムの声が響き渡る。
その声に何処からか決闘の情報を聞き入れた野次馬のボルテージは上がり、ただでさえ娯楽の少ない場所で行われる数少ない娯楽に兵士も冒険者も興奮を抑え切れない様である。
その周囲の中にクロの婚約者や主人を馬鹿にされ怒りを露わにした奴隷達の中に一際怒り心頭といった感じのサラが見え、クロは溜息をつくとこうなった事の顛末を思い出す。
まさか討伐せずにグリフォンをテイムし終え帰って来たかと思うと何故かボロボロのサラの隣にいる、同じくボロボロになっているフレイムがクロに開口一番決闘を申し込んで来たのである。
「はあ………で、ハンデはどうする?」
先ほどのグリフォンとの闘いを見てフレイムは炎属性を封じられると何も出来なくなるだろうとクロは踏んでいる。
属性一つ封じる手段など幾らでも思い付く為はっきり言って今のままでは話にならない。
その為クロはフレイムにハンデの提案をしてみるも何故かフレイムの怒りが増している事に激しく逆立ち始めたフレイムの美しく輝く赤髪が教えてくれる。
「は、ハンデだと!? 何処までも腑抜けた野郎だ! 男性が女性にハンデを乞う行為を恥ずかしく思わなのか貴様は!? そしてその答えだが、私がお前にハンデをやる訳がなかろうが!!」
「いやそうじゃなくてだな………もう良い。 勝手だがハンデを付けさせてもらう。 俺はこの試合にスキルも魔術も使わない」
隊長でもあるフレイムの為にも完封され恥をかかせない為にハンデを提案したのだが当のフレイムは勘違いし激昂している為に話にならず、仕方なくではあるもののフレイムの許可を取らず自分に課すハンデを決める。
しかしその事が更にフレイムを怒らせ、狂犬でも大人しいのでは?と思える程吠えていたフレイムが静かになり、その表情からは怒りの質が変わり憤怒から明確な殺意に変わったのが嫌が応にも解らさせられる。
「言いたい事はそれだけか?」
「そうですね。 あとはこの試合を消化してこの理不尽なイベントも終わりです」
そう言うとクロは装備一式をストレージから選び装備すると挑発的な目線をフレイムに向ける。
ちなみに今回の装備はいつもの魔王ルックス装備では無く侍職用装備である。
侍職用装備といっても見た目は侍ぽさは残しているもののどちらかと言えば騎士と言った方がしっくりくる出で立ちである。
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