第282話ああ、 確かに重いな
キスしている間中ターニャはクロに、時に愛の言葉を囁き、時に妄想を披露していたのだからクロが起きていたという事実はまさにターニャにとって死刑宣告に近い破壊力をもたらすだろう。
「そうか………とりあえずこれからどうする?」
「それなんですが…………一つ……一つだけ我儘を言っても良いですか?」
「ああ。 なんだ?」
そこでターニャは深呼吸。
その目には不安と期待と惚れた男性を見つめ潤んだ瞳がクロを見つめ、その顔は真っ赤に染まり体温も若干上がっている。
「その……あの……ここで、その……私を貰ってください……」
最後の方になると消え入りそうな声で言い切ったその言葉はしかし、ターニャにとってとても大きい内容を含んでいる。
心臓は先程から壊れた様に大きく跳ね上がっており、心音はクロまで届いているだろう。
赤く染まった顔も、より一層赤く染まり耳の先まで真っ赤である。
「………………ここで?」
「………はい」
「………そうか」
たったこれだけの会話でクロは全て理解してくれたのか何やら魔術をこの部屋に施していく。
大好きな本に囲まれて大好きという言葉では足りないほど好きなクロと……そう思ってしまうのは乙女であるが故であろう。
ずっと夢にまで見た、でももう夢のままで終わるのだと思っていた。
やはり女性は幾つになっても夢見る少女なのだろう。
やがてクロが準備を整えたのか戻ってくるのでガチガチになった身体に鞭を打ちクロの側まで出向く。
「ど、どの様な魔術をこの部屋に施して…きゃ!?」
「部屋に誰も入れない様にしただけですよ、 お姫様」
何か喋らないとどうにかなりそうだったターニャは緊張を紛らわす為とクロが施していた魔術が気になっていたため何とか話しかけるのだが、しかしいきなりクロにより横抱きに抱えられたため驚きにより遮られてしまう。
「…………………お、重くないですか?」
「ああ、 確かに重いな」
「え………?」
「俺の、 ターニャを想う気持ちはターニャが思っている以上に重いと思うぞ?」
クロに重いと言われて「やっぱり!!」という気持ちと「最近食べ過ぎてた自分を張り倒したい!!」という気持ちでもう消えてしまいそうになったのだが、クロの顔を見るとイタズラが成功した子供の様な笑顔をし、愛をつむいでくる。
「………もっ、もう!! バカ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます