第278話初めての二人でデート
煽っているとしか思えない態度で母、ハナコはヌルリとターニャの部屋から出て行く。
あの母の事である。私が服選びし始めた時から覗いていたに違いない。
プライバシーのカケラもない我が母に嫌気がさすも今更である。
全く……このコンプレックスしかないこの胸を強調するなんて考えただけでもゾッとするんだけど……。
ゾッとするのだけど確かにクロの視線は良く私の胸に行っている気がしないでもない。
そして、サラにキンバリーにアーシェにとクロの周りには胸の膨よかな女性が多いのもまた事実出ある。
でもアル・バレンタインさんもいますし………いや、もしかしたらクロさんの好みの胸は世の男性の真逆なのでは無いだろうか?
そう思うと合点がいく。
そして視界に入るはさっきまで無かった胸元が大きく空いている扇情的な衣服の数々。
間違いなく母の仕業だろうそれをターニャは手に取り姿見でチェックし始めるのであった。
◆
「ごめんなさい!! 待ちました!?」
私が住んでいる宿にクロが泊まっているのでわざわざ別の場所で待ち合わせをする必要が無いのだが、そこは私の我儘で恋人がよく待ち合わせ場所に指定する。
指定した場所はこの街の学園創設者でもあり五大英雄の一人とされるウァレンティヌスの像がある広場を指定し待ち合わせをすることにしていた。
ここで恋人同士がキスをするとウァレンティヌスの加護と祝福により永遠に結ばれるという都市伝説もあり女性なら一度はここでデートをはじめ、ここでキスをして別れるという一連の流れのデートをしたいと思うものである。
しかしながらもう一生このようなデートをするとは夢にも思っていなかったのではっきり言って張り切り過ぎたと言えよう。
結果睡眠時間を削り朝から全く終わる事がなく続いていた服選びや装身具選びや妄想に浸ったりとしてしまい結果寝坊からの遅刻である。
「俺も今来た所だ」
だから気にするなとクロが私の頭をポンポンと優しく撫でてくれる。
それだけで幸せすぎてどうにかなりそうなのだがここはぐっとこらえると今来た所なわけがないクロの優しさが身に沁みてくる。
「……嘘。 最低でも30分は待ったはずです。 遅れてしまってごめんなさい」
いくら幸せすぎても謝らなければならない事は謝るべきだとターニャは思う。
「さてターニャ……今日はターニャとの初めての二人でデートだよな?」
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