第276話だいずぎぃいいい!!
言ってから気付く。死にたいと。
強がるにしてもあの答えは無い。
処女でない事を自慢する女は娼婦ぐらいなもんだ。娼婦以外でその事を自慢する馬鹿な女が何処にいるというのだ?
………ここに今いますけどね!!
「そ、そうか……まあでもだからと言ってあまり無茶はするなよ?」
そう言って気遣うあたりクロには全てバレているのだろう。
恥ずかし過ぎて思わず顔を隠し俯いてしまう。
「たっく、ほら……可愛い顔を見せてみなよ?」
しかしクロはそんな私の頭を優しく、それこそいつもの様な撫で方ではなく愛する人にするかの様な撫で方をすると耳元で甘い言葉を囁いて来る。
もうどうにかなってしまいそうである。
「こんな獣みたいな顔……可愛い訳がないじゃない」
この世界では勿論例外はあるものの基本的に自分の姿と似ている相手に好意を抱くことが多い。
その事を考えれば私の容姿がクロの好みとかけ離れている事ぐらい容易に想像ができるのだが心はそれを否定しており、すがる様な気持ちでクロの言葉を待つ。
ちなみに私の場合は、この獣っぽさは格差遺伝の為好意を抱く異性は基本的に獣っぽい異性ではなくクロの様ないたって普通の人間の様な外見がタイプである。
いっそのこと異性のタイプも格差遺伝して欲しかったと何度思ったことか。
「そんな事思ってたのか………これは翌日渡そうと思っていたんだがな」
私の不安を知ってか知らずか何処か軽い声音で喋ると私の頭を先程とは違う、いつもと同じ感じで私の頭を少し乱暴に撫でると何処からか小さな正方形の箱を出して来る。
その箱は素人目から観ても高価なものだというのがうかがえ、少し身構えてしまう。
「俺の世界では婚約者には婚約指輪を、そして結婚したら結婚指輪を男性が女性にペアリングを送る風習がある。 この世界の風習がどの様なものか分からない為に俺の世界の風習になってはしまうが……」
ここまで言うとクロは硬く目を瞑り一度口を紡ぐ。
それはまるで懺悔している様にも思えたが、目を開いたそこには決意と目の前の私を写していた。そこに後悔の念は伺えない。
「結婚してください」
そう言うとクロは片膝をつくと持っていた箱を開け、中に入っている指輪をキンバリーに見せる。
「………………はいぃいいいいっ!! ずりゅー!! だいずぎぃいいい!!」
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