第257話愛おしい気持ちが膨れ上がってくるのだ


 もちろん翌日も試合があるため武術大会が終わってからというのもわかるのだがそう思わずにはいられない自分がいることにエシリアは気付いてしまう。


 そしてその感情がどこから来るものなのかを。


 今までその感情がどこから来るものなのかいまいち分らなかったのだが分ってしまえば今まで自分らしくもない感情や行動も納得がいく。


 しかし遠くからお師匠様を盗み見る度にこの愛おしい気持ちが膨れ上がってくるのだ。


 この気持ちの正体が分かってからは押し殺さなければと日々気付かないフリをしていたのだがそれももう限界に近いところまで来ている。


「だからと言って一歩踏み出す勇気も無いのですが……」


 それが出来ているのならば今更こんな事で悩んでは居ないだろう。


 それでもこれ程までに悩まなければならないほど想いを日々募らせて行っているのだから余計にタチが悪い。


「どうしたのですか?エシリア。気分でも悪いの?」

「いえ、麻疹みたいなものだと伺っていますし気分が悪いわけでも病気でもなくわたし個人の問題ですので……」


 そんな初恋による恋心を持て余していた自分を気づかいレニアが声をかけて来てくれる。


 彼女は彼女で私と同じ気持ちをお師匠様に抱いているはずなのにその優しさが嬉しくも思う。


 しかし彼女自身その気持ちに気付いているかどうかは微妙なところではあるのだが。


「単に自分の初恋という気持ちを持て余しているだけですのよ。ほっとけば気持ちも落ち着くでしょうからほっときなさいな」

「なっぁ……なっ、なっ、……っ!?」

「自分の気持ちに気付けているのがあなただけだと思っているのでしたらそれは間違いですわよ?」

「なんだ、エシリアもお師匠様に恋してたんですね!」


 前言撤回、どうやらレニアも、そしてユーコも自分の気持ちに気付けていたみたいである。そしてその気持ちとの付き合い方も。


 しかしそれはそれこれはこれである。幾ら何でもユーコの発言は酷すぎる気がする。


「しっ……知っていたっ、わかって、あぅ……あぁもうっ!気付いていたのでしたらわざわざその様な言い方をしなくてもいいじゃないですかユーコ!」


 ユーコに対して叱責しようとするのだがなぜか想像以上にテンパってしまいもうグダグダであるも言いたい内容は何とか強引に言う事は出来た。






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