第258話お師匠様の彼女になりたい


「わかりましたから。先ほどの件は謝りますから落ち着きなさいな。図星突かれてテンパるってどれほどの初心だと言うのですか……」

「うぅ……だって」


 だって初めての恋なのだからどうこの気持ちと付き合えば良いのか分からないのは仕方ないじゃないですか。


 そんな言葉を誰にも聞こえない声でつぶやく。


「逆にレニアやユーコはこの気持ちをどう制御しているのですか?」


 レニアもユーコも過去に付き合った殿方どころか好きになった殿方も居ないと言っていたので私と同じく初恋だと言うのに私だけ取り乱しているこの現状に納得出来ないのは仕方のない事であろう。



◇◆◆◇



「今日は一段と荒ぶってますわね、エシリア」


 そう呟くユーコの目線の先には単独で三人を相手に立ち回るエシリアの姿が見える。


 今は二回戦目、その相手を一人で相手にしているエシリアは味方のバフすらかけづらいほど鬼気迫るものがある。


「そりゃそうですよ。私達がお師匠様に『もしこの大会で優勝出来たら私達三人をお師匠様の彼女にしてください』とお願いして了承も得ていると知ったばかりですもん。何が何でも優勝したいはずです!」


 レニアがそう言う通り前衛として戦っているエシリアから「彼女になれる彼女になれる彼女になれる彼女に」という呟きがユーコの糸を通して二人まで伝わって来る。


「二人で喋ってないで少しは手伝いなさい!私達の未来がかかっているんですよ!分かっているのですか!?」


 私達が試合に参加しない事に気付き、エシリアの声が闘技場に響く。


 確かにそうだ。私達は相手を無視してお喋りできる程強くも偉くもない筈だ。


「そこまで!」


 しかしいざ加勢しようとした時審判により試合終了が告げられ、それと共に前衛として縛られていたエシリアを縛るものが無くなり解き放たれてしまう。


 どうやらこの試合相手に関してはお喋りできてしまう程度だったみたいである。


「なんで加勢してくれなかったのですか!?今回相手が弱かったから良かったですが、だからと言って集中力に欠けていてはいずれ足を取られ負けてしまいます!何より私達の未来がかかっているんですよ!何より私達の未来がかかっているんですよ!分かっているのですか!?」

「わ、分かってます」

「分かってますわ」


 お師匠様の彼女になりたい気持ちが凄い伝わって来る。

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