第250話一回戦

◇◆◆◇



「一回戦がお前達で安心したよ。いくら講師が才能有ろうとも生徒に才能が無きゃ意味ないのにな」


 そう言い蔑んだ視線をレニア達に向けてくる対戦相手なのだが不思議と腹立たしく思えてこない。


 そもそも彼が言っていることは正しく、未だにレニア達を師匠であるクロに手取り足取り諸説丁寧に、まるで十にも満たない子供に教えるかの如く解りやすく説明してもらい教えてもらい環境を整えて貰っているにも関わらず未だにその域を脱することが出来ないのである。


 確かに習って半年しか経っていないと言う見方も出来るのだが其れでも不甲斐なさを感じずには居られない。


 そして何よりも対戦相手はクロの実力を認めているという事実がレニア達を逆に喜ばさせていたのだが、試合前の舌戦で優位性を取ろうとした対戦相手は気付けづにいた。


「お師匠様の事を褒めていただきありがとうございます!!」

「グッ……減らず口を!!」


 対戦相手は初めにレニア達の師匠の悪口を言いレニア達を怒らせ正気にさせないように戦いが始まる前に精神面を攻撃したのだが、舌戦による前哨戦はレニアによる一言が決め手となり本人が知らぬ間に勝利を収めてしまう。


「ではこれより武闘大会第一試合を始めます!!お互いに礼!………始め!」


 そして審判の掛け声と共にレニア達の試合が始まる。


 まず先に動いたのはレニアである。


 その馬の下半身を活かし相手陣営へと一気に駆けて行く。


 その後ろでエシリアが付いて行き、ユーコは動かずその場で止まり何やら指先を細かく動かしている。


「お師匠様に教えられた事その一、個々の役割分担を決め開幕どの様な動きをするか事前に決めておく……何とか成功ですわね」


 そして後衛に回っているユーコは静かにそんな事を言うとレニアがランスを握る手を三回力を込めた事を開幕と同時にレニア達に張り巡らした極細の糸を伝いユーコに教えてくれ自分の与えられた役割を果たすため思考を試合へと集中させる。


「流石ユーコです!!練習以上の反応です!!えいや!!」

「やはり馬の下半身だけあって速い……なっ!?グフッ!!」


 そしてユーコが自分の出したサインにタイムラグも殆ど感じることなく応えてくれその恩恵がユーコの糸を伝わり自身の身体に齎されたレニアは元々速い自身のスピードを更に一段階上がる。

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