第四章

第249話サラよりも年上なんだがな

 天気は晴天雲ひとつもない青空が広がっている。


「スゲー観客の数だな」

「そそそ、それはそうですよ!」

「この学園都市の最大の行事である学生トーナメント【武闘大会】の第一回戦がこれから始まりますので……っ」

「観客の中には大貴族や王宮貴族もいるくらい大きな大会ですのよ?それ程のエンターテインメントであるという事ですの」


 そしてクロの目の前に広がる景色は広大な地面に石で出来た壁に囲まれた円形の闘技場と凄まじい観客の数である。


 そう、今日はレニア達が今までの努力を形にする行事、武闘大会の初日でもある。


 しかもレニア達はその大会の初戦第一試合に割り当てられ今現在、緊張によりレニアは震え、エシリアはどんよりした雰囲気を撒き散らし、ユーコは自分の糸を使い無意識にあやとりを高速で編んでいく。


「両陣営……前へ!!」


 そんな中審判で有ろう軽装備の鎧を着た男性がレニア達を呼ぶ声が聞こえて来ると、レニア達の緊張は更に跳ね上がってゆくのが手に取るように分かる。


 しかしその緊張を取る上手い言葉を思い付かないクロはレニア達の頭をレニア、エシリア、ユーコの順でやや乱暴に撫でてゆく。


「何緊張してるんだよ。素直に楽しんでこい。そうじゃなきゃ損だぞ?こんな楽しい事は恐らく一生に置いて今の時期だけだ。勝っても負けても悔いが残っても残らなくても将来今日という日は大切な思い出になる。だったら何も考えず楽しんで来い」


 それは本心から出た言葉である。青春真っ只中で有ろう彼女達はどっちに転んでも今日という日は甘酸っぱい青春の一ページとして刻まれるだろう。


 だったらこの一秒一秒を純粋に楽しんでもらいたい。


「「「はいっ!!」」」


 そして彼女達は嘘のように緊張が解け闘技場中心へと勢いよく駆け出していく。


 その足取りは実に軽く、また自信に漲っていた。


「全く、クロと居るとどっちが年上か分からなくなるわね。レニア達と同年代と言うのが疑わしく思えます」

「はは……ほっとけ」


 ちなみにクロのサポーターとして今まで手伝って来たサラも関係者として闘技場内に入れたらしくクロの隣に、誰かに見せ付ける様に自身の胸を形が変わるほどクロに押し付け腕を絡めて寄りかかっている。


 そんなサラが惚れ直したとでも言いたげな表情でクロに話しかけてくる。


 まぁ実際サラよりも年上なんだがな。


 そう思うものの決して口にはせず代わりに乾いた笑いが出てしまう。





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