第246話正に化け物

「ば、化け物め……」


 何もかも規格外、此方の常識なんかまるで通用しない。


「そんな奴をあと一つの所まで追い詰めた唯一の存在であるアーシェ・ヘルミオネも奴と同じ化け物だというのか……」


 魔族と人間の違いは体内の魔力の在り方だけではないのか?


 これではまるで人間よりも魔族と言う人種の方が優れていると言っているみたいではないか。


 そんな事は絶対にあってはならないと思うもののそれを否定する明確な答えが出てこない。


「そんなの分かりきっていたことじゃろ……今更いちいち喚くな鬱陶しいババアめ」

「はぁはぁ……貴様は実際に覗いていなかったからそんな呑気な事を言えるんだよ糞ジジイ」


 こいつは昔からそうだった。


 頭が悪い癖に良く喚く野良犬以下の野郎だ。


 もういつ死んでもおかしくない年齢だろうにいまだしぶとく生きながらえていやがる。


「所でお前……額の刺青はいつ入れたのじゃ……?」

「何を言ってんだい。額に刺青なんか入れた覚えはない………まさかっ!?先程の攻撃が術者の私まで…いや、そんな馬鹿な事が……」


 ある訳がないと言おうとするも言葉が止まる。


 何故なら自身の足元に紫色に光る見たこともない魔法陣が現れたからである。


 そして次の瞬間には今までいた場所ではない別の場所に飛ばされていた。


 目の前には土の腕に掴まれ束縛されたロイ・ドモールと一人の魔族。


「あるんだよ、そんな馬鹿な事が」

「あ、ありえない…そんな……」


 正に化け物。


 最早彼は人間どころか生物の頂天に立っているのではないかと思えてしまう。


 たとえクロ・フリートがあのエンシェントドラゴンを倒したと言われても信じてしまうだろう。


「最初の魔術で貴様が操っている死体に攻撃を当て術者の場所を把握しマーキング、そして魔術で此方側に飛ばす魔術を発動したまでだ」


 そして目の前の化物はどうやって私を引き寄せたのかまるで自慢の魔法を自慢するように話し出すと静かに私の方へ歩き出し、私はクロ・フリートが今から何をしようとしているのか直感的にわかってしまう。


「や、やめろ!私はまだ死にたくない!!」

「さぁ、仕上げだ。いつまでこの世界にしがみついている。貴様がいる世界はここではないだろ?【解除】」

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