第230話君は十分に美人だと思うんだがな

 それでもやはり日本人には無い西洋の美しさが目を見張り、ブロンドの髪に青い目が更にそこを際立たせる。


「馬鹿にしているんですの?わたくしが美人だなんて……本当に美人なら目深にフードなんか被らないですわ」


 そんな彼女はクロの言葉に怒ればいいのか喜べばいいのか分からずどっちつかずの顔をしている。


 彼女がフードを取った時、店の男性陣達の反応を見ればクロの言葉がお世辞ではない事が伺えるのだろうが彼女が持つコンプレックスがそれを違う解釈のもと感じ取る。


「本当に美人ならフードを取れば酒に酔った女にだらし無いろくでなしが話し掛けて来るはずですのにわたくしの元には一向にその様な殿方は来ませんの」


 そこまで言うと「その意味がお分かりかしら?」と目線で問いかけて来る。


「分かってるんですの。わたくしは年齢の割には幼い顔をしてますし、胸もお尻もスマートですもの…ま、あなたに言ったところで何の解決にもなりませんが」


 そう言うと彼女は提供されたドリンクを一気に飲み干し、「ぷはっ」と可愛らしく息を吐く。


 その姿からは先ほどまでクロの事を警戒している様な気配は無くどこか目の光が濁って見えるのは気のせいだろう。


「例え君が言っている事が本当だとして、しかし俺から見た君は十分に美人だと思うんだがな……」

「……はえ?い、いい、今なんと仰言って……っ!?」


 とはいえクロからは見れば十二分に美しいと思える容姿無いし目元麗しい顔立ちをしているのでそう卑屈にならずにもっと自信を持って欲しいという意味を込め、それを言葉にするのだが、その言葉を聞いた目の前の女性は一気に顔を赤くするとクロに先ほど何と言ったのかもう一度問いかける。


 自分のコンプレックスを言った上で再度美人だと言ってくれた相手は彼女にとってはクロが初めてだということはもちろんクロは知る由も無いのだが、等の彼女はコンプレックスを提示し微妙な反応をされたり遠回しに肯定されるという事に最早慣れているのだが、クロの様な反応には免疫は出来ておらず初心な娘そのものの様な反応をしてしまう。


 の様な反応というか彼氏どころか初恋もまだなので初心な娘で間違いはないのだが。


「君は俺から見れば十二分に美人だと言ったんだよ。君を美人だと思う男性が現に目の前にいるんだ。もっと自分に自信を持った方が良い」

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