第219話期待が無かった訳ではない

 実に嬉しそうに自身のオートスキルの一つを暴露し、ポチにより負傷した箇所が治っていく所をわざわざルシファーに見えるように話すブラッド。


 彼のオートスキルはあらゆる発生源のダメージを軽減しゼロにしてしまうというのは間違いなく、魔術やスキルその他様々なダメージはブラッドには聞かない。


 理解はしていたつもりではあったのだが彼女が召喚した召喚獣なら……という期待が無かった訳ではない。


 やはり彼には勝てる要素は無く、例えこの世界最強の生物エンシェントドラゴンである白竜様でさえ彼を殺す事は出来ないのかもしれない。


「………お前……自分のオートスキルをバラしてしまうなんて……馬鹿なの?……闇魔術段位三【闇の恩恵】エンチャント対象はポチ」

「無駄だよ何をしても。それは数百年生きてきた僕が断言するね。何をしてもどんな威力でも 僕にダメージは与えれない」

「ダメージを与えれないだけで……体力ゲージを減らす事が出来ないという意味ではない……ポチ、遊んであげて」


 強靭な肉体を有し、強大な魔力から高段位魔術を詠唱し、ダメージを軽減して受け付けない。そんな化け物を目の前にしてもルシファーは恐怖に怯えた様子は微塵もなく、ポチと呼ばれている召喚獣をブラッドへ今一度差し向ける。


そしていくらポチという召喚獣が強く、ポチの攻撃があたりブラッドの腹を切り裂こうが足の骨を折ろうが次の瞬間にはブラッドの身体は元通りに治っている。


 しかしブラッドもただやられているわけでは無くその強靭な肉体や強大な魔力を使い反撃し召喚獣であるポチと互角の戦いを繰り広げている。


 その間何度か自身の体力を召喚獣維持費として捧げたのかルシファーは戦闘が長引くにつれ息苦しそうにし始める。


 受けたダメージを軽減しゼロにするブラッドに対して維持コストに自身の体力を支払わなければならい召喚獣を使役するルシファーの戦いは、戦闘が長引けば長引く程ブラッド優勢である事がルシファーの表情から見ても明らかである。


 だというのに彼女の仲間であるはずのセラとウィンディーネは口喧嘩を終えるとルシファーの助太刀として参戦する事もなくレイチェルとミセルも加わり四人で談笑し始める。


 しかし従者であろうレイチェルとミセルはさすがに様子が気になるのか時折ルシファーの方に目線を向けている。

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