第218話これじゃ僕を倒せない

「段位三程度の召喚獣如きで!!僕を馬鹿にするなぁぁぁぁああっ!!闇・火混合魔術段位八【黒炎地獄】」

「はいはい凄い凄い」

「な、なんで効かない…?僕の一番強い魔術だぞ……ぐぅ!?」


 ルシファーの召喚獣とブラッドの攻防はまさに有り得ない展開であり、ブラッドのみならずコンラッドまで本来有利な展開に喜ぶはずがその異様な光景に恐怖すら覚えるほどである。


 召喚魔術段位三で召喚された召喚獣は基本その一段下の段位魔術程度のダメージで消滅してしまう存在である。


 だというのに目の前の召喚獣は二段どころか六段の魔術を受けても消滅せず、更に八段という恐ろしい魔術すらものともせずブラッドの右腕を食い千切る。

 まさに化物そのものであろう。


 その異様さに辺りが静まり返った時、件の召喚獣の方から何かが落ちる音が何回か聞こえ始める。


召喚獣の方を見るとその巨躯が崩れ、溶け出し、重力により地面に落ちているのが見える。


「な、なんだ……やっぱりダメージを喰らってるじゃないか」


そう安堵するブラッドとは対照的に異様な姿をしている召喚獣の巨躯が崩れ落ちる度にコンラッドの部下達は恐怖していく。


「……ダメージで崩れてるんじゃない……そもそもこのポチは如何なるダメージも受け付けない……たんに維持コストである『召喚したプレイヤーの体力の12パーセント』を支払っていないだけ……だから……私の体力の12パーセントを支払うと……元に戻る」


ルシファーがそう言うとポチと呼ばれている、肉が削げ落ち所々骨が見え始めている件の召喚獣が濃い紫色した光に包まれたかと思うと次の瞬間には召喚された当初と遜色のない身体をしたポチが姿を現した。


 あの強さなのだ何も無い訳がないとは思ってはいたがやはりデメリットはあったらしい。


「あっはははははは!!なるほど!これは凄いや!僕のオモチャなんかより全然凄いよ!……でも、これじゃ僕を倒せない、絶対にだ」


 そしてその光景を目にしてブラッドは焦るわけでも無く寧ろ勝利を確信したかのように、先程まで不機嫌だったのが嘘のように笑い出す。


 そしてコンラッドもまた、ポチという召喚獣のデメリットを聞きブラッドとは勝てないと悟る。


「僕はそのポチとやらと同じで僕に与えられるあらゆるダメージを軽減し、ゼロにするオートスキルを持っているからね!そのポチを使役し続けている限り君は勝手に体力を失っていくという事だからね!」


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