第208話いい加減眠りなさい

 普通のボス程度ならばオーバーキルレベルのコンビネーションであろう事は先程の魔術【神の裁き】を知らないコンラッドですら容易に理解出来る程の威力だと分かるのだが、マンティコアは威力、段位関係無く魔術が効かない。


 これはこの世界の常識である。


「本来マンティコアには段位や威力関係なく魔術は無効化されるはず……何故あの魔術はマンティコアに無効化されていないんだ」

「この光魔術段位五【神の裁き】は相手のオートスキルの効果を打ち消し、それによって打ち消したオートスキルの数掛ける2の数、本来のダメージの威力をあげる効果を持っています。そしてあのマンティコアはオートスキルを三つ持っておりまして、【魔術で受けるダメージを無効化】【物理攻撃で受けるダメージを軽減】【自然回復】を持っておりました。よって私が放った【神の裁き】のダメージは六倍に修正され相手に与えられます」


 どうやら思っていた事が無意識に口から出ていたらしく、俺の疑問をセラという女性が説明してくれる。


 そして今なお光の剣により動きを封じられているマンティコアを見る。


 彼女の話だけ聞くと信じられないのだが目の前で起きている奇跡を目の当たりにしてはその内容が真実と思わざるを得ない。


 それでもマンティコアは未だ倒れずその巨躯に刺さった無数の光の剣を無理矢理引き抜こうとする。


 俺たちは今までとんでもない化け物を相手にしていたんだと改めて思い知らされるとともにその光景を見ても未だ余裕めいているセラを含む三人の女性と自分との力量の差を見せ付けられる。


 そして目の前の光景に打ちひしがれてかけている自分の横をウィンディーネという女性が涼やかに、そして軽やかにマンティコアの方へ向かっていく。


「いい加減眠りなさい。スキル【氷龍の一振り】」


ウィンディーネは空気中の水分を集め、それを凍らせて氷の刀を作ると一閃、目視出来ない彼女の一振りの後マンティコアですら小さく見える程の巨大な氷の龍が現れマンティコアの真上から氷龍が頭から勢い良く突っ込みマンティコア共々砕け散って行く。


「未だこの程度の小さき氷龍すら受けきれないない程度のボスなら次の最終ボスもたかが知れていますね。何だか拍子抜けです」

「ですが難易度が上がれば彼女達を連れて来れなくなりますからこの程度で良いでしょう」


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