第190話楽できるに越したことはない
今回派遣された軍は、軍と言うに総数十名といささか少人数過ぎる気もするのだが今回集めたメンバーはベッテン含め皆選りすぐりの精鋭達である。
この事からも帝国が手を抜いていない事が伺える上に、先程述べた様にコンラッドとしても心強く感じる。
その理由として一番大きいのは、コンラッドはストレージを持っておらず個人での任務と今回の様にストレージ持ちが要る任務とでは道中の辛さは雲泥の差であると言えよう。
もちろんコンラッド自身プロとして、また自分の立場的にも個人の任務とはいえ討伐相手との遭遇時に疲労し本来のパフォーマンスが出来ない様な事は無いのだが、それはそれこれはこれである。
やはり楽できるに越したことはない。
「今回の任務、討伐相手が低級のドラゴン程度ならば俺一人でも何の問題も無いだろうが今回の討伐相手はな………すまないがお前達部下の事まで気にかけて戦えないと思ってくれ。また先程ベッテンが述べた様にこの中の誰かが死して操れた場合、屍体を残してやる余裕も無いだろう。すまない」
そう言うとコンラッドは今までの会話を派遣メンバーも聞いていた事を利用し、この場を借りて先に起こるであろう長としての役割破棄とも取れる行動をする事になるだろう事を謝罪する。
そしてあたりに緊張感を含んだ静寂が訪れるのだが皆その目には強い意志を宿しコンラッドへと目線を集める。
そしてその目線全てにコンラッドを非難する意思は少しも含まれていなかった。
「今回の任務に選ばれ此処に集いし時より我々は捨て石であると覚悟を決めております。ですのでコンラッド大佐は我々の事は路傍の石程と思って討伐に挑んで下さい。路傍の石と考えて下されば使いようはございましょう」
コンラッドに視線を向ける者の中から今回集められたメンバーの中でも最年長でありベッテンとも遜色ない、むしろベッテン以上の強さを持っていたロン・フルムが皆の気持ちを代弁しコンラッドへ伝え、周りの者はその言葉が自分達の本心であると自らの目に宿す。
因みロンの強さを過去形で表した理由に、彼は今年で四十六という年齢と六年前息子を馬車との衝突から庇った際に失ってしまった事で片脚が義足である事が関係している。
それでも尚並みの騎士や冒険者には遅れを取らない強さを保持しているのだから侮れない。
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