第189話帝国軍の名に泥を塗る事にもなりかねない

「ミスリルで出来たお前の剣を触れるだけで破壊できるほどの能力を持つふざけた剣を相手が持っている以上、俺が武力行使に出ても勝てる保証はないだろう。むしろそれ程の剣を扱える相手である以上、冒険者は勝とうが負けようが株を上げる事になる。逆にこちらは相手の実力がどうであれFランク相手では圧倒して勝たなければ示しが付かない。こちらの条件が悪すぎる」

「しかし………」

「それに、たとえ協力を断られても結果近い未来我々と手を組む事になるだろう。その時に我々の強さを見せつければいい」


 コンラッドが言わんとしている事は理解出来ているのだがそれでも感情の面では納得出来ないベッテンはなおもコンラッドに食らい付こうとし、それをなだめるようにコンラッドがべに語りかける。


 悔しいのはベッテンだけではなく自分も含め皆同じである。であるならば長の自分が抑えなければ更に我々帝国軍の名に泥を塗る事にもなりかねない。


「わ、……分かりました。出過ぎた真似をしてすみませんでした」

「気持ちは俺も痛い程分かるから気にするな」


 そう言うとベッテンは渋々といった感じではあるものの今回の件は諦めた様でコンラッドに自分がした無礼な行為を詫びる。



◇◆◆◇



「大佐、今回の任務はコンラッド大佐単独での任務の方が効率が良かったのではないのですか?」


 冒険者ギルドでのいざこざから2日たった今、冒険者ギルドがあった街を離れ今は山の中で今回の任務での疑問をベッテンは大佐であるコンラッドに聞く。


 今回の任務はベッテンは兎に角他連中は間違いなく足手纏いになるのは必須、最悪死んだその肉体を操られ我々に剣を向けかねない可能性もある。


 どう考えてもコンラッド大佐単独での任務遂行の方が理に適っている事ぐらい帝国のお偉い方達が分かっていない事は無いだろう。


「そうだな……俺一人で任務失敗した場合と軍を動かした場合、前者は民に言い返す言葉も言い訳も無いのに対して後者の場合「最前は尽くした」と言える。それに俺単独よりもお前達がいた方が心強い。それに道中楽をできるしな」


 そこまで言うとコンラッドは普段は無表情がちなその顔で笑顔を作る。


 これで部下の不安を少しでも和らげられるのなら安い物だろう。



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