第180話パーティー解散の要因の一つ

「それは無いです。元パーティーメンバーどころか戦闘によって負傷した者は魔族人族関係なく大魔王クロ・フリート様の家臣たちの手により全て治癒を施されており死傷者は奇跡的に魔族人族双方合わせて50名程度にとどまり、その中に私の元パーティーの方はいません」

「………ではどうしてパーティーを解散したんですか?」


 そう問いながら受付嬢は違和感を感じる。


 先ほどミセルは大魔王の事を何と呼んだ?


 しかし受付嬢は気付けない。


ミセルが目指す強者が誰なのかを。


 だからこそミセルがクロ・フリートにー、ー魔族に『様』を付け呼ぶ事に気付けないでいた。


 彼女もまた魔族を排他すべきと考える一人であるのだから。


 そしてその価値観のズレがパーティー解散の要因の一つであり最大の要因であると。


「今の私達では到底届かない頂きを見てしまってはパーティーの存続は出来るものではなかったのです。七人いた元パーティーメンバーのうち三名はノクタスのギルド職員に、そして残りは私の様に新たなパーティーに所属したり、別の職に就いたり、故郷に戻ったりされたようです」

「し、しかし……」


 確かに彼女の言わんとしている事は理解出来る。だがしかし、果たしてグリフォンの翼程のパーティーがたったそれだけの事で解散までしてしまうのだろうか?


 あと少しでパーティーランクがSになろうとするパーティーの解散。


 冒険者、パーティー共にSランクにまで登る事を夢見て皆血と汗を流し努力をしているのだ。


 だからこそミセルの言葉に納得しかねてしまう。


 だがしかしその理由もまたあの場所にいた様々なパーティーが解散した要因の一つである事に間違いはない。


「私とパーティーを組んで下さった方はランクこそFランクなのですが、私なんかより遥かに強いです。その事実を目の当たりにしてしまってはランクに拘るのが馬鹿らしくなるわ」


 そう言いミセルは横にいるルシフェルを見る。


 このまだ年端もいかぬ少女が自分よりも強いと確信しているかの様に。


「だいぶ話が逸れているようですが、このブラックタイガーとやらの討伐依頼をミセルさんがお受けする事は出来ないのですか?」


 そして受付嬢がミセルに再度先ほど発した発言内容の確認とパーティー解散理由の追求をしようとした時、ミセルの背後から心を掴まれてしまうのではないかと思ってしまう程綺麗で澄んだ声が受付嬢に向け発せられる。

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